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食事記録:アッサンブラージュ ハナレ

京都の間に絶対に行きたい店を消化しようと思って世界的ショコラティエ垣本シェフの料理が食べられるアッサンブラージュ ハナレにボケナス共と衝動的に予約して行ってきた記録。

落ち着いた光

まず3人して感動してたのは空間。光の色合いとかが完璧で、写真も綺麗に撮れる(これが今回レビューを書き記すモチベの1つになった気がする)。照明が面発光なのか、影が出ない。こういう特別な体験に空間設計は凄い大事だと思った。お皿を乗せる白い台がまた良い。邪魔にならずに上手に皿と料理を引き立てるステージになっている。

一 サロマ湖カキ バター乳 国産レモン

シュトーレンを作るときに使った残りの乳清を使った?みたいなことを言っていた。《海のミルク》と牛乳とレモンという自然な発想。ただバター乳を使ってるから牛乳臭さが必要以上に無くあっさりしているので、上質なカキの旨味をじっくり楽しめた。

ドリンクはしばらくあっさりが続くのでグラスで白をオーダー。

二 あわじ産 カワハギ

肝と醤油で食べてとのこと。カワハギの肝初めて食べたかも、というかこれから人生で何回食べるんだろ。ここまで2品凄いシンプルで、会席料理にでも来たかな。これジャンル何なんだろうみたいな話をしていたら垣本シェフが答えてくれてジャンルは「なし」とのこと。フレンチのキュイジニエと紹介されることもあるが料理は独学らしい。素材とかも日本の海鮮が多い。垣本シェフが海鮮が好きで、タイミングによっては自分で釣ったりもするとのこと。

三 甘えび マスカルポーネ 根セロリ パプリカ

四 エクレア フォアグラ リンゴ プラリネ

2品同時に来た。このお皿かわいい。
このあたりから少しずつ組み合わせが複雑になってくる。マスカルポーネにセロリとパプリカのハーブ感が上手に合わさってまとまりが良いソースになる。3のメニュー名にタルトは書いて無くて6に明示してあるのはやっぱり位置づけに違いがあるのかなあとか、10でもう一回カレーという形で甘えび出してくるの自信すごいな、どう納得させてくれるんだろうとか思いながらワクワク感を増していた。

4品目のエクレアはよくハナレのレビューで見るエクレアを料理にしたもの。フォアグラ・バラ科・キャラメリゼの発想は近年ではメジャーになりつつあるように思うが(もしかしてわたしの視野が変化しただけで昔からある?)、これはフォアグラが下品に主張しすぎず、でもそれ以外が表に出て過度に甘くスイーツ感が溢れすぎない素晴らしいバランスだった。何でなんだろ。でもやっぱりキャラメリゼの具合がプロフェッショナルというのが少なくとも1つの重大ポイントではありそう。

五 ウニ のり 米 白バルサミコ

面白くなってきた。なんだこれは。ウニ・のりという磯臭さが特徴の具材をさわやかなエスプーマと白バルサミコで上品にまとめている。清濁併せ呑む大人の一品って感じ。白バルサミコ、寿司とフレンチの接点ですね。こういうブリッジの使い方が垣本シェフめちゃくちゃ上手い。あと手で持って食べるというスタイルの変化や、手巻き寿司の再解釈と捉えることが出来て、のりがパリパリに仕上げられてるところやエスプーマの食感の変化が5品目に良いアクセント。

六 白子フリット キノコ タルト シルクスイート

さて例のタルト。まあメインは白子フリットだろうが、キノコとシルクスイートのタルトが優しさを出している。フォアグラといい、人間の欲望って感じのダイレクトに使うと下品になりがちな食材を抑制的に使うのが本当に上手。キノコが凄い薫り高いのと、シルクスイートの甘さが邪魔にならない。製菓材料の出自があるのにその甘さが柔らかな視線の伴奏者になっている。

ここでシャンパンを投入。

七 キンキ トマト 苺 山椒

今回一番びっくりした一品。キンキに苺ソース。実際一口目はかなり分離して感じて、この酸味と甘み要るか?ってなってたけど、「そう分離しているもの」と捉えたら凄い納得感が出てきた。付かず離れずの幼なじみみたい。むしろ、「ちゃんと生で美味しい甘くて酸っぱいトマト」は美味しいが、これもその強さが料理の扱いが難しいものであって、それをあえてちゃんと甘く酸っぱい方向へと引き離して強調するように、新しいトマトソースの構成としてトマトをフレッシュに感じる助けとして苺が作用している感じ。

垣本シェフ曰く、同じ色のは相性が良いことが多いとのこと、パプリカとかも合うらしい、実際「青臭い匂い」のような色でまとめる概念もあるし、とのこと。タイのグリーン/レッド/イエローカレーとかまさにそんな感じかも。

このメニューを思いついたのは当日3時らしい。今日のもう一組が先週も来てくれているような常連さんらしく、メニューを総入れ替えしようとして出したらしい。どうなってるんだ。

八 甘鯛 京大根

海鮮5連続。どんなコースだよ。甘鯛の鱗焼きに京大根全部ソースと金柑。京大根を全部入れると、根の甘みと葉の苦みのバランスが良いですね。その苦みを引き継ぎつつ、大根の旧態とした雰囲気に金柑が華やかさを添えている。金柑、良いよな。

九 熊本牛 梅

良質な熊本牛のステーキに30年物の梅酒の梅のソース。梅の甘さがいかにもバラ科のアロマでパティシエという感じ。凄いタマリンドソースに似ている。ここでそこそこ飲む同行者に押されてわたしも赤ワインを投入したがこれが大正解。牛-甘い梅-赤ワインのラインの接続が良すぎる。あまりにも必然的でやっぱりアルコールドリンクって料理に重要だなあになってた。だいぶ酔ってきたが。

Vintage Collection HERVÉ KERLANN 2012 Gevrey Chambertin Vieilles Vignes

というか、純粋にこの赤ワイン自体が人生これまでわたしの飲んだ赤ワインで一番わたし向きだった。酔い。わたしまだメジャーなワインあまり知らないんですけど、ジュヴレ・シャンベルタンのヴィンテージってグラスワインで出てきていいんですか…?ワイン勉強したいんだけど高いのとマニア知識が多すぎる。

十 米 甘えび カレー

大期待カレー。甘えびの殻から出汁をとったソース系のカレーにココナッツミルクのエスプーマとディルが載っていて、アロマ先行のエスニックさとのバランスが良い感じ。確かにこれは甘えびの違う部分をフィーチャーしていて二回出す意味がある。どちらかというとタルトが甘みでカレーが旨味かな。そして甘えびの火入れが最適。30秒くらいとのこと。コースとして、最初の方シンプルな美味しさだなと思っていたらどんどんビジョンの精密さと技術の必然性が増していく非常に練られた構成。

デセール 1皿目

チョコレートとオレンジ。コースの流れそのままに情報量が上がっていく。チョコレート使いは流石。チョコレートにはウイスキーかな。PORT SHARLOTTEのHEAVILY PEATEDを選択。良いですね。

デセール 2皿目

バナナアイスとメレンゲとあと何だっけ。バナナと柚子というあまり見ない組み合わせがベストマッチ。バナナの重さと柚子の軽さって合うんだ。それこそ残りの素材もクリームとメレンゲで重さと軽さがシーソーするように出来てますね、なるほどなあ。

あとこれの特筆すべきところは同行者がバナナ無理だったので桃花豆のアイスに変えてもらっていた。すると当たり前だけど総体的に全く別物のデセールになるんだけどこれもまた完璧に成立していた。コーディネート上手すぎる。

紅茶とチョコレート・クッキー

いよいよ凄い皿数のコースも終幕。バニラの紅茶がナッティでチョコレート・クッキーに合う。ウイスキーとの組み合わせも良いですね。特にピスタチオのガナッシュってこんなにアルコールに溶けるんだ。

ドリンク代込みで2.3万ほど。わたしがもしこれからキャリア上手くいって高給取りになったとしても人生で一番高いディナーの1つになるでしょう。でもそれくらいの楽しさがあったかな。おいしゅうございました。

このエリア140文字以内なんだね、実質twitterじゃん