小説『洋介』 エピローグ

 帰り道。
落ちている石を、おもむろに宙に浮かせる少年。
背負うランドセルより高く石は浮かびあがり、そしてクルクルと回る。

 秋、夕日がかった河原、周りに人はいない。

 土手の上から河原を見渡しながら、少年はこの一年のことを思い返す。
一年前のあの日、夕日が心に刺さったあの瞬間にすべてが始まったのだ。
あの日から世界の見え方が、感じ方が、広さが変わった。

「おーい!」
後ろから声をかけるもう一人の少年と少女。
洋ちゃんとあの子だ。
3人で土手を降りる。

いつものように夕日に向かって立つ。
少ない言葉を交わし、石を浮かせる。

大きな夕日の光が、いつまでも3人を包んでいた。


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【あとがき】
この作品は10年ぐらい前に書いたもので、
それを編集してnoteに載せて、
それをさらに編集して今回、1話ごとに載せてみました。
恥ずいけど、よかった。嬉しい。

改めて、読み直しながら、編集していきました。
そしたら全然違う作品になりました。
全然違う幸福論になりました。でも好きです。
この作品は洋ちゃんに向けて書きました。
届くといいなと思います。

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