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扇子のパッケージつくってみた 日本パッケージデザイン学生賞 「扇子(せんこ)ちゃん」

こんにちは!!ツジカワのカタヨセです!
先日、日本パッケージデザイン学生賞2023の大賞作品「ボーッと入浴剤」のモック作製過程について取り上げました!

文章長いよ!という方は製作工程と完成品を13秒の動画(短いよ!)に詰め込んだのでこちらを御覧ください。


そして!今回はツジカワ賞を受賞した扇子パッケージ「扇子(せんこ)ちゃん」の作成過程をご紹介します!

その前に・・・学生賞とは?ツジカワ賞とは?という話なのですが、日本パッケージデザイン学生賞JPDA(公益社団法人日本パッケージデザイン協会)が主催し、学生を対象にパッケージデザインを募集して選考するコンペティションです。
協賛企業の一部は企業賞を贈呈することができます。
ツジカワ賞は最終選考に残った作品からツジカワが独自の視点で選定・贈賞したものです。ツジカワは企業賞の副賞(リワード)として作品の具現化を掲げていました。

そして昨年に引き続き、2024年もツジカワは協賛企業として学生賞を応援します!!よろしくねッ!!!

日本パッケージデザイン学生賞2023 ツジカワ賞受賞:「扇子(せんこ)ちゃん」

こちらがツジカワ賞を受賞した、専門学校日本デザイナー学院 伊東未夢さん作「扇子(せんこ)ちゃん」です。

女性の浴衣部分がくり抜かれており、
扇子の絵柄が浴衣のように見える。
色々なカラーバリエーションが考えられる。
男性用扇子の展開も考えられそう!

作品コンセプト
日本の伝統芸能・文化において欠かせない「扇子」であるが、その殆どは消費者に柄をイメージ図などで確認してもらう必要がある。
そんな問題を解決するため、本体の柄を一目で認識できるパッケージデザインを考えた。そこで浴衣の持つ、扇子と一緒に使う場面が多い・柄似かよっている・夏を感じさせるという特長に着目し、浴衣の柄として本体を覗かせた。このパッケージは、扇子の魅力である柄を生かしたビジュアルで消費者の目を惹き、購買欲を高め、日本人や海外の方が日本文化をひらくことを叶える。

お土産屋さんでいちいち扇子を開いて絵柄を確認するのは、手間がかかる上に扇子も傷みますが、このパッケージであれば扇子を傷つけずに、絵柄を見ることができます。シリーズ展開もしやすく、お店に扇子ちゃんが並んでいる様子を想像するだけでワクワクしてしまいます。

伊東さんに作成過程を聞いてみる

伊東さんに作成過程を聞いてみたところ

  • 100均等で材料を揃えてモックアップを作成した。

  • 扇子ちゃんのイラストやグラデーションの部分は色鉛筆による手描き。(カラーバリエーションは画像加工で表現)

とのことでした。
絵は手描きだったのかー!しかし100均の材料でこれだけクオリティ高いものを作れるのは驚きしかない・・・!

贈賞式でコメントをする伊東さん

オリジナル扇子を作ろう!!

せっかく扇子が見えるパッケージだからこそ、扇子にもこだわりたい!
ということでオリジナル扇子をつくることにしました!

扇子作製をお願いしたのは株式会社ファンティーク様。
サイトからテンプレートをダウンロードして、絵柄を入れ込んだデータを送れば小ロットからでもオリジナル扇子をつくることができます。

こちらが伊東さんが考えてくれた扇子のデザインです!

咲き乱れる紅白のツバキ!
大正ロマンを感じさせます。
夏といえばアサガオ!
浴衣にぴったりの絵柄です。

和モダンかわいい~!!

せっかくなので扇子にも箔押ししちゃおう!!ということでツジカワで箔押ししたものを扇子に仕立ててもらうことにしました!
(ファンティーク様イレギュラー対応ありがとうございました!)

ツジカワにはサイズに合う箔ロールのストックがなかったため、同じく学生賞の協賛企業であるクルツジャパン様に箔をご提供いただきました!

これ、全部「箔」です!
クルツジャパン 田中様ありがとうございました!

キラキラ箔押し扇子をつくっちゃおう!

紙、版、箔がそろったので、扇子に箔押しをしていきます!
箔押しを担当してくれるのは、ツジカワの箔押し駆け込み寺和尚 ワタナベです!

デザインのひきだしNo.52のインタビュー記事より
マグネシウム製箔押し版
43cm✕20cmぐらいある
紙を置いて
箔を乗せて熱と圧をかける
(版は上に取り付けてあります。)
箔をはがすと、版の絵柄が転写されている
ポジフィルムを乗せて印刷とのズレがないか確認
白いツバキの花びらと輪郭を2色で箔押し
アサガオの花びらと中心部を2色で箔押し
試し押しのヤレもかわいい!!

結構な種類で箔押ししたので、どれを扇子に仕立てるか伊東さんに選定してもらいました!

扇子にするものを選ぶ伊東さん。
マスク越しではっきりわからないけど嬉しそうです。

後日とても素敵に仕立てられた扇子が届きました!

良い出来すぎて社長の辻川が
割とマジのトーンで「売ろうか。」と言ってました。

箱の設計を考える

並行して箱の作製も進めていきます。
伊東さんに箱のサイズを聞き、実際に同じサイズで箱の設計をシュミレーションしてみたところ、画像のように、扇子の骨が見えてしまうことがわかりました。
(作品提出の際は画像加工で骨を消したとのこと。)

左:伊東さん作成のモック 右:モックのシュミレーション画像
画像加工してあるためわからなかったが、
実際はこの窓の大きさだと扇子の骨が見えてしまう。

そのため、扇子ちゃんの位置を動かしたり、窓のサイズを小さくしたり、と調整を重ねました。


右が最終的な設計データ。元データよりも窓を小さく(半円状の部分を大きく)して、女性を上に配置した。

また、元々は蓋と身(製品を入れる部分)が一体となったブック式の箱だったのですが、かぶせ式貼り箱(本体の箱に蓋がかぶさるタイプ)でも良いということだったので、後工程などの関係からかぶせ式貼り箱に変更させてもらいました。

いよいよ扇子ちゃんの箔押し!

貼り箱作製は泰清紙器製作所様にお願いしました。
箱の設計や、紙の種類等色々と相談に乗っていただき本当に助かりました。

箔押し前の印刷のみの状態
紙はオンデマンド印刷に対応しつつも
和紙の風合いを表現できる「しこくてんれい」をおすすめいただきました。
上品で手触りも良く今回のパッケージにピッタリ!

印刷にあたり、元のモックでは色鉛筆による手描きだった部分を伊東さんにパスデータに描き直してもらいました。また、下方オレンジ色の部分も、色鉛筆によるランダムなグラデーションを再現するため、
実物スキャンデータとイラストレーターのデータをかけ合わせるなどこだわりました。

結果、手描きの風合いも残しつつ、より完成度の高い印刷物に仕上がっています。こだわりが印刷に反映されており嬉しい・・・!

伊東さんに立会ってもらい、箔色の指示をしてもらいました。
箔押しはもちろんワタナベ!
帯の部分は彩光腐食版で白の顔料箔を箔押し。
白の印刷✕白箔とはシブい!
箔押しで箔が紙に漉き込まれているような風合いを表現
赤顔料箔を押すと・・・
あ!モックで見た扇子ちゃんだ!!
青もかっこいいね

色々なパターンで50枚ほどの箔押しを行いました。
その中で箱として仕立てる10枚+予備分を選定し、泰清紙器製作所様に送付しました。

はー、あとは待つのみ・・・!
と一息つきたいところですが、まだまだ課題が残っていました。

扇子を固定する中ゲスを作ろう!!

中ゲスとは製品を固定するための仕切りです。

扇子の絵柄を見せるため、扇子を開いた状態で固定する仕切りが必要

泰清紙器製作所様にて設計も可能なのですが、今回は非常に少量の作製なので、手作りで対応することにしました。

発泡スチロールやポリエチレンフォームをくり抜いて中ゲスを作成。
ボーッと入浴剤に続きデザインセンターのスズキにがんばってもらいました。
窓と箱のサイズに合わせないといけないので
結構精度がいります。
サテンの布で目隠し&高級感をプラス!

ついに完成!!!

ようやく「扇子(せんこ)ちゃん」ができあがりました!

すごい!本当に浴衣を着ているようです!
お花と耳飾りの色がおそろい。
おしゃれやわあ。
ちらりとのぞく扇子の箔押しがまた良い!
よく見ると帯に麻の葉文様が入っています。
これは手に取ってじっくり見ないとわかりません。
緑の扇子ちゃんも作ったよ!

元のモックと比べると・・・・

左:伊東さん作の扇子ちゃんモック 右:今回のモック

なんだか扇子ちゃんが大人っぽくなった印象です。
バリエーションが多岐に渡ったため、伊東さんに自分用のものを選んでもらいました。

自分用の完成品を選ぶ伊東さん
箱4個と扇子2個を選んでもらいました
お忙しい中何度も足を運んでもらってすみません!

後日伊東さんからこんなメッセージをいただきました。

お世話になっております。
先程TDC(※注)で扇子ちゃん受け取りました。
今まで長期に渡り、扇子ちゃんの具現化に向けてご尽力していただき本当にありがとうございました。
お陰様で学生生活の中で最高の経験と作品を創らせていただくことができました。
本当にありがとうございました。
 

伊東さんDMより
※注 TDCはツジカワ東京デザインセンターの略称

が・・・学生生活の中で最高・・・!!
ちょっとほろりとなる言葉をいただき、まんまとほろりとなってしまいました。
これだから年をとるといけねぇや!(鼻を人差し指でこする動作)

パッケージデザインは「選択」の連続

たくさんの方々のご協力のおかげで、「扇子(せんこ)ちゃん」は見れば見るほど魅力を感じるパッケージに仕上がりました。

今回は紙器パッケージだったので、前回具現化したスタンドパウチに比べれば多少の知識はありました。

では簡単だったのかというと、そうでもなくパーツと加工が多いためとにかく「選択」が難しかったです。

箱をブック式にするかかぶせ式にするか?
目隠し部は紙が貼り付けてあるが、同様にするべきか?
扇子に箔押しをするか?どの部分を箔押しで表現するか?どの箔を使うか?
どの紙を使うか?中ゲスの素材は何を使うか?

伊東さんと連絡を取り、時には弊社東京デザインセンターや、小石川工房に足を運んでもらいながら細部を詰めていく作業を繰り返しました。

そんなことをしながらパッケージデザインって選択の連続なんだと気づきました。
設計も紙も箔も、とてつもなく選択肢があります。
選んだ先には、また選択肢が延びていて、より良い仕上がりを求めて目指していた完成形も少しずつ変容します。
完成までに我々が通った軌跡は、真っ直ぐな一本道ではなく、何度も障壁にぶち当たったグネグネ道ではありましたが、なんとか理想の仕上がりを実現することができました。

今回得た学びは、実際にパッケージを作ってみないとわからないことばかりでした。改めて当社のお客様がされているパッケージデザインやパッケージ製造の奥深さを実感します。

今年もたぶん障壁にぶつかりまくると思いますが、必ずその年にしかない学びがあると確信しています。
というわけで、今年の学生賞も精一杯応援していきます!


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