デザインの自由研究:COCOAをリデザインしながら考える課題と解のあいだ①
hello, here tsujihara.
今回は、いろんな問題でゴチャゴチャしている「新型コロナウィルス接触確認アプリCOCOA」を題材に、問題と解法のあいだを考えていきたいと思います。良質な問題は解決のしがいがあっていいですね。
さあいきましょう。
COCOAの問題とは?
スマートフォン向けに提供された接触確認アプリCOCOAでは、利用者の一部に4ヶ月ほど感染者との接触情報が通知されていないという問題が発覚。
さらにこの問題が露呈させたのは多重下請け問題で、開発費用は3億9000万円に登りながら、最終下請け業者に渡された開発費用は1700万円ほどだったという。この予算だと早期発見されたバグが改善されないのは、なんとなくうなづけるというか仕方ないというか...
いろんなことを感じる問題ではありますが、このnoteで取り扱うのは別の問題。とはいえ、3億もの予算があればもっとリッチなアプリができたはずではあるけど、そもそもCOCOAは新型コロナウイルスによって痛みを受けた社会においてどんな役割を果たそうとしていたんだろう?みたいなことを考えてみたい。
私たちに提供された解=現COCOAは、痛みを受けた社会の課題をどのように解決しようとしていたんだろう?COCOAの目的や役割を考えながらCOCOA自体をリデザインしてみたいと思う。
COCOAの役割を再考する
COCOAは20年の6月にローンチされたアプリで、タイミングとしては第一波が収束しそうなタイミングだった。
アプリの精度はいわんやしておき、少なからず計画〜リリースまで3ヶ月ほどかかっていると思う。とすればキックオフは3月末あたり、第一波の入り口の時期である。とすればCOCOAの大きな目的の一つは、封じ込めのための経路特定+無症状感染者の発見であったことが推測できる。
さて、ここからCOCOAアプリのUIをみてみよう。
アプリを起動すると、いわゆる「スプラッシュ画面」というインターフェースが表示されたあと、HOME画面へ遷移する。アプリデザインにおいてはここのHOME画面に最も重要な機能を配置するのが一般的。そこから補助的な機能として「メニュー」があり詳細の設定や説明が納められている。
HOME画面を詳しく見るとこのアプリの目的がよくわかる。
上記で推測したように「感染経路特定と無症状感染者の発見(と警告)」がこのアプリの主な目的なのは間違いなさそうだ。また、位置情報から陽性者と接触した場合は下記のような画面が表示される。(私は接触していないので都福祉保健局サイトから拝借)
接触が確認された後の機能はこのようになっている。
つまりCOCOAアプリの機能は大きく6つ、下記に整理しよう。
①感染陽性者との接触の可否を通知
②感染した場合…陽性者としての申請
③接触した場合…症状の申請+保健所への連絡(症状の有無を問わず)
④接触した場合…保健所への電話(症状の有無を問わず)
⑤接触した場合…接触した日と件数の確認
⑥アプリの拡散
このアプリは前述したとおり、第一波の時期に設計・リリースされたものであるので機能・設計不足等についての批判はすべきでないが、主だった機能の③〜⑤が本アプリが感知した接触情報に偏重していることには注意したい。これでは市中感染や家庭感染などにおいて想定されるいくつかのユースケースをカバーできていないことは明らかである。
またさらに、逼迫する医療、外出自粛による経済的な打撃、煩雑な保健所業務...コロナ禍においては様々重大な問題が噴出した。これらの問題についてもアプリを活用しできることはないだろうか?という視点を持って、どのようにリデザインしうるか考えていきたいと思う。
アジア各国の事例から考える
【韓国の事例】感染者のプライバシー問題といつ・どこ情報
引用元:http://coronamap.site/
感染者管理のために個人の行動履歴などがトラックされ、いつ・どこで感染者との接触があったかがわかる。これをfacebookやtwitterのSNS位置情報や投稿情報に接続し参照すれば個人の特定も容易だという。これ自体は有志がまとめた地図上の情報だが、元データは韓国政府が公開しているものだ。
先にみたようにCOCOAでは「いつ」情報は日付のみ、「どこで」の位置情報は開示されない。しかしこのWhen-Where情報はユーザーの行動を抑圧する力を持っている。たとえば繁華街での感染情報が多いことが地図上から理解することができれば積極的な外出を控えさせたり、危険とされている特定のアクティビティ(大人数での会食など)を自然と制限することができるだろう。
第三波での首都圏において20時以降の飲食店営業が制限されたが、この制限の正当性可否においては未だ根拠や実例検証が曖昧なままではある。たとえばこういった情報を開示することができるなら、危険な経済活動の洗い出しと制限、つまり「不要不急」の明示と規制が可能になる。
【中国の事例】健康状態の証明機能「アリペイ健康コード」が杭州から中国全土へ
このコードはアリペイアプリから「自分自身の申告」「健康データ(おそらくIoT連携)」「感染者との接触情報」から排出されるという。このコードは交通機関や建物利用の際にチェックされる。中国の地下鉄や大規模なオフィスビルには入場の際にセキュリティチェックが設けられているが、そこに追加で導入されるのは想像に難くない。中国はほか諸国をさしおいて経済活動が定常回帰した背景には、このアプリや証明書の存在があると考えてもいいかもしれない。感染者あるいは陽性懸念者という危険要因を、オフライン経済活動から一時的に隔離し経済活動保全に成功している。今後は「ワクチン接種証明書」などの導入もありそうだし、それによる中国国内への外国人渡航制限もありそうだ。
【シンガポールの事例】コロナ感染をアプリで追跡、政府開発
シンガポール政府は20日、新型コロナウイルスの感染経路を追跡するためのスマホ用のアプリを開発、無料配布を始めた。近距離無線通信「ブルートゥース」を使い、至近距離にいた人を感知、記録する。感染者と接触した人を追跡して隔離することで、感染の広がりを早期に抑える狙いだ。
Trace Togetherアプリの仕組みは2メートル以内に接近し、30分以上経過した場合IDが交換され、そのデータはスマホの端末内に3週間保存。感染が発覚した場合は感染までの行動データをサーバーへアップ。その後該当IDと接触のあったユーザーへ通知されるというのもである。中韓の取り組みが予防的であるのに対しシンガポールは日本のCOCOAと同じく対処的ソリューションのようでもあるが、シンガポールはこれ以外に早期押さえ込みのための大量検査と厳しい規制および罰金を設けるなどで押さえ込みに成功している。
これらの事例から下記のことが学べる。
①データを可視化することでユーザーの行動を規制する
When-Where情報の適切な開示によって、ユーザーは感染の危険性が高い繁華街への外出やアクティビティへの参加を自主的に制限する可能性がある。
②証明と開示により危険性を排除し経済活動を守る
接触情報や感染の危険性を開示・証明させることで、危険ユーザーを一時的にリーブさせ経済活動を守る。
③オフラインの対策活動を補佐する
フィジカルな課題をデジタルのみで解決することはできない。あくまでデジタルはフィジカルな感染拡大対策の補佐的な立ち位置。
長くなったので、ひとまずここまで。
②は来週アップできたらいいな。
thank you! I love you.
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