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井戸を掘った人

中国では、古来から「井戸を掘った人」を最も尊敬し、感謝する。
日中国交正常化を果たした首相の愛娘に対する歓迎ぶりは、
今も記憶に新しいところであり、靖国問題で敵対していても、
井戸を掘った人々に対する感謝の気持ちは薄れることはない。
農業文明の象徴である井戸は、非常に重要な意味を持っていた。

成長を目指すベンチャー企業にとって、井戸を掘った人とは誰か?

間違いなく言えることは、最初のお客さまだろう。
差別化を意識した新製品を最初に買う意思決定は勇気のいることであり、
組織として承認を得ることは極めて難しい。
先に買った人が得た効果、および同業他社の購入実績は、
購入決裁を得る常套手段である。
独断で購入して発生する損害は、決定者の責任問題となる。
そういったリスクを背負いつつ、買ってくれたお客さまは有難い。

また、創業当初に入社した社員は、文字通り、井戸を掘っている。
いかに製品やサービスが秀逸であっても、ベンチャー企業のビジネスは
(少なくとも当初は)万人に受け入れられるものではない。
自ら顧客をリストアップし、売り方を考えながら、源泉を探ることになる。

市場がまだ無いところで、掘り進む意思を持ち続けることは
容易なことではない。
源泉の存在を信じる自分自身との闘いである。

仕事柄、最初に単独で投資をしたVCも井戸を掘った人
と言えるかも知れない。その後の資金調達が確実に楽になるし、
自分の経験に照らしても、プロの投資家が投資をすることで、
ビジネスに対する信頼も増し、新たな顧客が獲得しやすくなったり、
有能な人材が入社してきたり等々、お金以外の効果も意外と大きい。


成長を続ける会社と成長が止まる会社との違いは、
井戸を掘った人を大切に出来るかどうか、
感謝の心を忘れないでいれるかどうかにかかっている。
経営者にとって、自社の成長を自らの優秀さに
因らしめることは大きな誘惑である。
一番苦労していることも事実だが、自力では達せられなかった
ことに思いを致し、感謝の心を持ち続けることで、
周りの支援を得られ、継続的な成長が確固たるものになる。

「最初に井戸を掘った人を大切にすることを忘れた
経営者は大成しない」(岡野雅行)
ORIGINAL20070121


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