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クモ

電車がトンネルに入る。
電波が届かない。
ブラウザが読込みをためらう。

ブラウザが読込みをためらっている。

ブラウザが、読込みを、ためらっている。

顔を上げる。
目の前を、白く透き通った小さなクモが垂れている。
網棚から70cm。

脚をばたばたと漕ぐ。
網棚に戻ろうと、脚をばたばたと漕いでいる。

網棚から70cm。
自分の意志で降りたのか、本意なく落ちたのか。
目の前を、白く透き通った小さなクモが垂れている。

ひとまず窓枠に着地させよう。

網棚と白く透き通った小さなクモを結ぶ一本の細い糸を掴む。
私の手につながる一本の細い糸を
白く透き通った小さなクモが慌ててよじ登る。
慌てるな、もうすぐ窓枠だ、暴れるな。
暴れるな、暴れるな、あっ。

クモが落ちた。
窓枠に下ろす前に糸が切れてしまった。
白く透き通った小さなクモは、どこかへ消えてしまった。

地獄に落ちるのだろうか。
私は、死んだら地獄に落ちるのだろうか。

電車がトンネルを抜けていた。
ブラウザが読込みを終えていた。

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あとがき

芥川龍之介の『蜘蛛の糸』を最近読みまして、
それを思い出しながら実際に起こったできごとを基に書きました。

パソコンにデフォルトでスパイダーソリティアって入ってますね、
ルールよくわからんけどたまにクリアできるやつ。
あれの楽しみ方をご存知の方、ぜひ教えてください。

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