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いつか別れる君たちへ

ひとりぼっちの夜

 ミュージカル「ひとりぼっちの夜」の本番がいよいよ今週末となりました。
大学生生活も同じく年末の追い込みよろしく、課題やテストや卒論にもみくちゃになりながら本番を迎える学生たちは色んなことにうんざりしている時期でしょう。
稽古というのは嫌になる程繰り返すことで、体に覚え込ませることなので、きっとこの作品をやることも日常になり、時々「もういいよ…」と思うことだってあるはずです。
それなのに「ひと夜終わらないでほしい」だとか「今日の空はビロォドがいい仕事してる!」だとか、この作品を好きでいてくれる学生たち。
稽古期間、みんなをまとめるのに正直いっぱい頭も悩ませたけどwそんなことどうでも良くなってしまうほどにみんなのことが愛しいひらたです。

マイク代わりのペットボトルでご挨拶シュミレーションのひらた

 先に宣伝しますけど、本番は12/24・25、東村山です!!!カンフェティでのご予約は本日・21日まで!当日券も出そうなので、気になる方はギリギリでもひらたまでご連絡ください。

↓カンフェティでのご予約はこちらからーー!
12/24・25 東村山中央公民館にて

↓配信もございます!!!
1/28〜2/11までご覧になれる後日配信です。マジで見てくれ〜〜〜!!

 はい。宣伝でした。本当に我ながら良い作品だし、学生たちの輝きがとんでもないので見てくださいね。ひと夜ってやつは、なんぼ見たって良いですからね。


いつか別れる君たちへ

 作家は自分の中にあることしか書けない、とはよく言ったもんですが(真偽は不明)この作品の稽古をすると、確かに私は主人公・ヨシュカをさかさまの世界へ導く「迷い子の道標」であり、全ての生命をデザインしている「生命のデザイナー」なのだな、と思うことがあります。

迷い子の道標・ひま

 コロナ禍時代の中で高校・大学生活を送る学生たちはとても個人で生きる時間が長かったんだと、稽古をしていると思わされます。そうでなくとも、いよいよ日本でも差別意識やこころの問題が取り沙汰され始めたこの時代。人はみんな違うんだ、人は傷つくんだ、誰しもセンシティブな部分を持ち合わせているかもしれないんだ、という意識は大人よりも学生たちの方が敏感なように思います。

 人を傷付けてしまうのも、人を傷付けてしまったその時の自分と向き合うのも怖い。

 心の奥底でそう感じている学生たちを感じます。そうしなくて良いならそりゃあ傷付けないに越したことはないけれど、人を傷付けない、なんてどだい無理な話なのです。
褒めあって、慰めあって、励ましあっているだけではどうしたって前に進めない…。どうしてなんでしょうね。わからないけど、今回本当にそれを実感しました。

雲の子・あかね

 ミュージカルは団体芸です。特にダンスや歌は、動きを合わせ、声を合わせてお互いが切磋琢磨することで相乗効果をうむ。芝居も、その場の空気を作るためには視野を広く持って主観と客観を持ち合わせることが重要だったりします。
強固なコミュニケーションが必要で、私たちはそのコミュニケーションを育てるためにこの「ミュージカル」という芸術がとても役に立つんじゃないかと思っています。

ヨシュカ・りる  命の引き取り人・なーみ

 コミュニケーション、読み取る力、聞く力、実行する力。恐れずトライする勇気。
受験勉強などとは違い、一人が頑張ってもうまくいかない。一人が上手くてもうまくいかない。それらをみんなで一緒に持たないといけないのです。
 先輩たちが後輩たちの行動に頭を悩ませたり、後輩たちがジレンマを抱えていたり、そのお互いの想いをお互いにぶつけ合ったり…我々作り手の想いが届かなかったり。自分だけが抱えるセンシティブな事情に頭を悩ませたり、誰かのセンシティブな部分が測りきれず悩んだり。そんな全てを、私は、私たちは見てきました。

振付・落合佑介 作演出・ひらたあや 作曲・樹原孝之介 監修・星潤

 そして日々稽古の内容やかける言葉を吟味して、すぐに個人の殻に引きこもりそうになる学生たちの袖をなるべく優しく…時に強めに引っ張りながら、本番までの道のりを一緒に歩んできました。「私たちは嫌われたっていいさ」と笑いながら。

 誰かが明るい役になり、誰かが叱る役になり、誰かが見守る役になり。
それはヨシュカに対して自分の役割とともに色んな顔を見せてくれる、作中の登場人物たちの有り様と同じなのかもしれません。

「空の色が勝手にできてると思ってるんだろ!」
「君が寂しくないよう、星と星を繋ぎ導いて」
「月はどこからでも見えるだろう?こっちだってあんたが見えてるのさ」
ってね。

さかさまの町の住人たち

 そして稽古場での最終稽古を終えて、ほとんどの仕事を終えた私。
芝居なんてやったことなかったみんなに1から芝居をつけ、人によっては3ヶ月、人によっては今年の春から。徐々に徐々に成長したみんなを見て、
「お前たち全てが私の自信作だ!全てビューティフル!」…と、生命のデザイナーの台詞を心で噛み締め、みんなを舞台へ送り出すのです。

生命のデザイナー・まいまい

 そしてこの舞台を終えて、いつか私のそばから離れてゆく学生たちに。この作品や稽古の日々が思い出としてそばにあることで、私はいつだって見守っていることが伝われば良いなと思って、本番を前にしてすでにじんわりと寂しさを覚えているのでした。早いっ。

どんなに どんなに 遠くからも
あなたを 僕らが 見守ってるから
どんなに どんなに 離れていても
僕らが ほら そばで微笑んでる
「ひとりぼっちの夜」作曲・樹原孝之介 作詞・ひらたあや

 テーマソングのサビの歌詞を書いた時は、あくまでお客さんへ、劇場を出てゆく皆様へというつもりで書いたのですが…こうして自分に帰って来るとは思いませんでした。

やっぱり私は寂しがり屋で、ひとりぼっちなヨシュカなのかもしれません。

ヨシュカの母 フランツカ・みころん

 いっぱい作品を引用しちゃったので、なんのこっちゃな人はこの文章を解読するためにもいつか「ひと夜」を見てください。笑

いつか別れる君たちへ、未練がましく芝居を書くから、心の隅にいさせてね。

 さあ、クリスマスの実感が全くないクリスマスに、劇場へと向かいます。
最高の自作と、可愛い教え子たちと、大好きな仲間たちとともに。
なんかエモまりすぎて恥ずかしくなってきたので終わり。…今更???

毎年のことながら、冬の寒さに負けそうなひらたでした。みんな良いお年をね。

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