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『翠』

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純文学を基調としたストーリーに、官能シーンを織り交ぜてみました。 スーパーで正社員として働く主人公である男性(健流)と、同じ職場でパートタイマーとして勤務する冴えない女性(翠)が…
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#長編小説

『翠』 34

「はぁ!?」  思わず、そう声を漏らすと、それに反応した周囲の同僚が「なになに?」と言わ…

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『翠』 33

 つい先日会ったばかりだというのに、というより、職場では毎週のように顔を合わせているのに…

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『翠』 32

「あ、やっと来た! もう乾杯はじまってるよ〜!」  と、座敷に上がり込むなり、奥の上座に…

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『翠』 31

 忘年会当日、一〇分遅れで会場の居酒屋に到着した。  当日は雨が降っており、傘など持って…

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『翠』 29

 翌日、忘年会の件を矢代さんに伝えようと、バックヤードで品出しの準備をしている矢代さんに…

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『翠』 28

「なんで俺の言った通りにできないんだよ!」  そう叫んだ父の怒号が地鳴りのように家中にこ…

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『翠』 27

 その夜、旦那が帰るのを待って、忘年会のことを相談することにした。  ふつうであれば、なんてことない会話のはずなのに、思った以上に旦那の機嫌が悪く、とても言える雰囲気ではなかった。見るからに仕事で嫌なことがあったのは、こちらから話しかけるまでもなく、すぐにわかった。帰ってきてからというもの、何かにつけ気に入らないことがあると、頻繁に舌打ちを繰り返しており、いつにも増して機嫌が悪いのか、言動がいちいち刺々しい。  こちらに当たられてもしょうがないが、そこで何かをいうと、火に

『翠』 26

 少なくとも旦那への感謝の気持ちはある。  べつにパートと言ってもほかのパートさんみたく…

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『翠』 25

 甘い物が食べてみたいという母の意向で、原宿通りから少し歩いたところにある『サン フラン…

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『翠』 24

 ラフォーレ原宿の『マジュスティックレゴン』で、母におねだりをして冬物のコートと、膝上丈…

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『翠』 23

 右側の空間がスッポリと空いているせいで、ただでさえ大きいクィーンサイズのベッドが、いつ…

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『翠』 22

 もっと話をしていれば良かったのか。  さっき義娘に言われた一言が妙に気になり、何をして…

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『翠』 21

 母の家は道玄坂に面した渋谷の一等地にあり、通りに面したベランダからは、道路を行き交う車…

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『翠』 20

 母親が家を出て行ったのは、私が小学校二年に上がったころで、小学生に上がるタイミングでは、すでに父とは離婚の話で揉めていた。家庭に収まるタイプではなかった母親は、もとより父とは一緒になる気はなかったらしいのだが、その当時、私を妊娠してしまったこともあり、その流れでデキ婚をすることになったらしい。 「結婚したら家庭に入ってほしい」と、結婚前から何度も父は母にお願いしていたようなのだが、仕事が生きがいだった母にとって、その父の頼みは受け入れることができず、結果的に母は家を出て行