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『蝶々と灰色のやらかい悪魔』

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デリヘルで働きながら、自分の夢を叶えようと奮闘しながら、恋愛を交えた一人の少女の日常を描いた作品です。この作品はぼくにとって、初の長編小説で、デリヘルで働くとある女性に実際に取材…
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2020年11月の記事一覧

『蝶々と灰色のやらかい悪魔』 5

 サワコの食べ終えたプレートを片付け、とり込んだ洗濯物を綺麗に畳んでから、週に一、二回しか更新しない(店長からは、「もっと更新しなさいよぉ」と口酸っぱく言われている)写メ日記を珍しく更新していたのだが、わたしの些細な操作ミスで、そのせっかく書いた長文が、一瞬で消えてしまった。その腹いせというわけではないが、本当は朝食用にと帰りのコンビニで買った牛焼肉マヨネーズ巻(五巻)を、キッチンでやけ食いした。ついでにそのとき一緒に買ったスミノフも飲んじまった。所謂、暴飲暴食というやつです

『蝶々と灰色のやらかい悪魔』 4

 彼と初めて逢ったのは、半年前の冬だった。出勤してすぐの客で、とくに指名ではなく、フリーで入った新規の客だったこともあり、初めての客に緊張しながらホテルのエレベーターを上がったのを、今でも覚えている。指定された部屋の前に立つと、一呼吸置いて、ドアをノックした。しばらくなんの反応もなく、「あれ? もしかして部屋を間違えたのか?」と、何度も部屋番号を確認していると、とつぜん扉が開き、 「あ、ごめん、ごめん! ちょっと電話してて……」と、携帯を片手に持った彼が申し訳なさそうに現れ