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物語の欠片-韓紅の夕暮れ篇-

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カリンとレンの十四篇目の物語。太陽光発電の仕組みが実用化の一歩手前となり、フエゴで検証が始まったが…… 技術と人の心というお話。
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2023年9月の記事一覧

物語の欠片 韓紅の夕暮れ篇 2

-レン-  アグィーラの官吏を運ぶのに十二名、機材を運ぶのに更に十名。戦士の他に土木師が十名。合計三十二名の、比較的大きな任務だった。  レンはクコと知り合いであることもあり、隊のリーダーを任されていたが、他にスグリも土木師長のレンギョウも居るので、重圧は分散されている。それよりも、久しぶりに正式な任務に就くことができる喜びの方が大きかった。 「もう聞き飽きたかもしれないが、無理するなよ」  族長と朝の打ち合わせを終えた後でシヴァが念を押す。  アグィーラの官吏たちとは族長

物語の欠片 韓紅の夕暮れ篇 1

-カリン-  雪景色のマカニの村が夕陽の色に染まってゆく。  普段ならば、まだ診療所を閉めるには少し早い、そんな時間だった。  大吊り橋が落ちる程の雪が降った昨年比べると少しだけ過ごしやすい冬だった。それでも十分にマカニの雪は深い。  カリンは少し早めに診療所を閉めて、吊り橋へ向かう階段を下っている。アグィーラから来る使節を迎えるためだ。アグィーラを朝に出発しているはずだが、この雪山を、それなりの人数で上がって来るには時間がかかる。到着は夕方になると事前に聞いていた。  途