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人口統計は何に使われているのか、という話をしてみたいと思います。

先にこんな話を書いてみましたが、しばらく人口統計のお話を書いてみようかと思います。


何故に国勢調査で人口を調べているのか、住民票集計ではダメなのか、というお話を少し書いてみようかと思います。


1 国勢調査は「実態」を調べたい

人口統計の話をしてみたいと思います。」の方で、住民票と実態にはズレがあるということを書きました。
住民票を置いたまま別のところに住んでおられる、というケースは、先に例として出した「入院や施設入居」「大学進学」「単身赴任」等のほか、「留学等での海外転出」(長期の場合は本来届が必要です)「国際結婚による転出」(こちらも長期国外滞在の場合は本来届が必要です)「アドレスホッパー」「複数拠点居住」「季節的な別荘滞在」「DV等からの保護を目途として住民票の異動を行わず転居するもの」など、要は様々な事情で、住民票は実態とはズレているよね、ということがあります。
意外と差がございまして、わたくしの元職場である自治体の場合、約1.2%ほどの誤差(住基>国調)となっておりました。

2 実態の人口が必要な理由

実態の人口が必要な理由として、私はよくご説明に「防災関係」と「インフラの整備」を挙げさせていただいています。
避難所の規模感、備蓄品の数などは、やはり実態に即していないと、余る分にはまだしも、足りなければ万一の際に影響が大きくなります。
併せて国勢調査では「昼間人口」(昼間どこに居るか、勤務先や学校の所在地で集計するもの。)も出ますので、災害が日中に起きた時のボリュームも図ることができます。
住民票の人口は「居住地」が基本となりますので、極論を言えば都心などでは昼間人口よりもはるかに少なく、周辺のベッドタウンは昼間よりもかなり多めになる理屈です)
同様に、居住する人の一日の移動が出ますので(居住地はA町、勤務地はB市など)、移動ルートの想定が可能となります。道路や橋といった交通インフラ整備にはもちろん実際の通行量調査などが付加されますが、初期想定に使用することが可能です。
その他総務省さんが活用事例を挙げておられますのでご参考に。
https://www.stat.go.jp/data/kokusei/2020/katsuyoujirei.html

3 実態の人口とお金の話

さらに、ここから先は公務系の方はもちろんご存じだと思いますが、一般の方もできれば把握なさっていていただきたいなと思うところです。
自治体での様々な業務には実態に即した支出が必要になるだろう、という観点から、国勢調査の人口は国から地方への財源配分に関わっていますよ、という話です。

まず、交付税。
地方交付税法(昭和二十五年法律第二百十一号)第12条が地方交付税の「測定単位及び単位費用」というものの定義になっておりまして、第1項の諸々の項目や第2項に「人口」と書かれています。
その人口についての定義が第3項にありまして、「人口」とは「官報で公示された最近の国勢調査の結果による当該地方団体の人口」とございます。
要は、住基登録による人口ではなく、実体ベースで地方に対し国庫からの配分を行いますよ、ということになります。

交付税の中身は多岐に渡っており、同条の第1項を見ていただくと、土木費や衛生費、消防、教育など、多くのものに実態人口が影響してくることが分かります。

次に地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)第72条の115に、「地方消費税の市町村に対する交付」が述べられています。要約すると、こちらは国勢調査人口と基幹統計である経済センサスにおける従業者数をベースに市町村に配分するよ、ということになります。
(極端な言い方をすると、調査を拒否した場合、あなたの分の人口が減り、自治体に交付されて自分たちのために使用される予算が減ります、とも言えます)
この辺が時々事件が起こる理由でもあるかもしれませんし、そうしたいお気持ちは分からなくもない(でも、例えて言うなら経費の水増し請求=詐欺ですのでね)です。
なにしろ交付税の算定基準には、〇〇×人口×係数、っていうのがたくさん出てきますので…(いや、過疎とかへき地とかでいただけるものもありますので、人口がすべてではないですが)
とはいえ、いろいろなもののベースになる「人口」とは、住民基本台帳人口ではなく、国勢調査人口なのでございます。


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