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人口統計の話をしてみたいと思います。

公共系シンクタンクさんからのお仕事を頂戴しましたので、
少々懐かしいこんな話を書いてみたいと思います。


一口に「人口統計」と言っても何種類かあることはご存じでしょうか。
お勤めの時代もいろんな方から聞かれましたので、公務系の方でも区別のつきにくい話なのかな、と思っています。
なかなか区別のつかないこの統計を、今回はざっくりとご説明します。


1 国勢調査人口

5年に一度、10月1日を基準に実施される「国勢調査」による人口で、統計法という法律に基づいています。
2015年調査からオンラインでも回答できるようになり、答える側、調査側、審査側、いずれも随分楽になりました。
国勢調査の対象は、日本に3か月以上滞在している人(予定を含む、∴長期ビザで入国したばかりの外国籍の方も含む)。
その時住んでいる場所で人口を計上するもので、GDP/GNPの計算、公的な国/自治体の人口として扱われ、地方交付税などの算定基準にもなっています。
総務省統計局の公式データサイト、「e-stat」から数値データが取れるだけでなく、調査区ごとの表示といったGIS的な公表もされており、民間利用もされています。

2 住民基本台帳人口

多くの自治体が毎月集計を発表している人口で、こちらは住民基本台帳法に基づく登録者の数を集計しているというものになります。
数えられる側の回答が必要な国勢調査(調査統計)と違い、住民票や戸籍関係の届に基づいて自治体が集計する業務統計の一つです。
こちらも全国のものがe-statから見られるほか、最新のものは市町村、また都道府県ベースの一覧的なものは都道府県の統計担当部署などが公表しています。

3 推計人口

ある意味国勢調査人口と住民基本台帳人口のハイブリッドともいえる人口です。
国勢調査の人口をベースとし、毎月の住民基本台帳の異動、すなわち転入(+)、出生(+)、転出(-)、死亡(-)を計上していく加工統計です。
こちらもe-statで公開されるほか、都道府県での取りまとめ、または一部市町村で公表されています。

4 3つの人口の違い

もし、住民基本台帳の異動手続きが正確に行われている場合、かつ国勢調査がきちんと実施されている場合、その二つはイコールになるでしょう。しかし、そうはならないのが現実です。
国勢調査は、定められた区域内を調査員がくまなく回り、「人が住んでいそう」な場所には調査票を配布していきます。倉庫や工場の片隅、長期入院者の居られる病院、大型工事の飯場、ホテルや旅館等、「家」以外も対象になります。

ご住所の定まっていない方は、その日居られる場所で計上となります。
基本的に「住んでいる」の目安は3か月と言われますが、最近の例えで言いますと、アドレスホッパーの方が1か月程度で移動を繰り返しておられる場合なども、その時点で逗留しておられる場所でご回答いただくことになります。
また、恒常的に2拠点以上でお住まいの方などですと、最近の滞在割合の多い方で、というご案内になったはずと思います。

要は、住民票を自宅に置いたまま長く入院したり、単身赴任や就学で一人住まいをしていたり、あるいはたとえ住民票を逸失してしまったりしていても、国勢調査委おいては体のある場所の人口として計上される、ということになります。

よって、調査拒否ということがなければ、という前提ではありますが、慢性期病院や介護施設、大学などの多い都会の方が、住民基本台帳人口よりも国勢調査人口の方が多くなるという傾向があります。
同様に、地方の、特にまだ世帯人員が多いエリアでは、ご自宅に住民票を置いたまま出て行かれる方が多くなり、国勢調査人口の方が住民台帳人口よりも少なくなる傾向があります。
(限界集落的な地域になりますと、単身の方が自宅に住所を置かれたままご入院されたりした場合保険証の更新等にも影響が出たりなどしますので、病院や施設等にご住所を移されるケースが増えてきます。動かさず…というのは、お家に留守を預かってくれる人がいる、それなりに世帯員数のある状況がベースです)
そうした状況から、特に人口流出に悩む地方都市などでは、住民基本台帳人口の方を人口だと言いがちですが(そちらの方が数%多いので)、諸々公的に取り扱われる人口とは国勢調査人口だと言う点を、特に公務員の方はお忘れなきよう、と思う次第です。

人口は何に使われているの、はまた別の記事で。

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