英語が話せるようになったターニングポイント

TOEIC600点、多少読めるが書けないし話せない状態で英語公用語の Autify という会社に飛び込んでもうすぐ5年が経つ。なんだかんだで英語で話すのにも慣れてきて、いきなりスピーチを求められても何とか話せる程度にはなってきた。

喋れるようになったのは端的に会話量によるものなのだが、少し振り返ってみると自分の中でグッとコツを掴んだタイミングがいくつかあったように思う。備忘代わりにざっとまとめてみる。

友達が出来た

入社してしばらくはまだ日本人しかいなかったので、実際におれが初めて会社で英語を使ったのは、たまたま面接に来ていたインドネシア人のAdamに話しかけたときだ。彼が入社するなら、遅かれ早かれ喋ることになるのだから、早いうちに話しかけた方が良いだろう、みたいなことを思った気がする。
結果としては、"Hello, my name is Takuya…" と言った後、15秒ぐらい沈黙が続いてしまった。体感では正直2分ぐらいあったと思う。その後、 "I just joined this company 2 months ago" と続けたら、ほとんど同期だね!ということで、仲良くなった。
彼とはとにかく色んなところにランチに行って、いわゆる Language exchange みたいなことをしていた。おれが日本語を、彼が英語を教えるみたいなやつだ。トンカツ屋のメニューに「毎週月曜は定休日ですので、ご了承ください」と書いてあるのを訳すのにえらく苦労した思い出がある。

Adam と仲良くなったのに気を良くして、色んな人が入社する度に声をかけていった。"What's up?" と返してくれたのが聞き取れなくて "…Sorry?" と返したら "元気ですか?" と流暢な日本語で返されてびっくりした思い出がある。

みんな日本に住んでいて、日本語を学んでいるところだというのは、同じく第二言語として英語を学んでいる最中だったおれにとっては幸運だった。もしこれが、ネイティブスピーカーの輪に放り込まれたカタカナ英語の使い手だったら、きっとものすごく孤立した思いをする羽目になったんじゃないかと思う。みんな第二言語を習得する大変さを知っているという事実は、下手な英語でも頑張って話してみようという気にさせてくれる土壌を作っていた。

知っている言葉で話すトレーニングをした

その後、会社が英語学習プログラムを提供してくれることになった。このプログラムはコーチングを主にしたもので、コーチと一緒に学習計画を立てて、週1回30分のセッションで質問に答えてもらったり、計画の見直しをしたり、課題を出してもらったりといったものだった。

このとき、おれは「日本語で言いたいことが、英語でうまく表現できない」という状態だった。言いたいことを言うために必要なボキャブラリーが足りていない感じがしていた。なので、単語帳をやったりしていたのだが、単語がスラスラ出てくるようなところまでは至らなかった。

ある時、英会話セッション中にいつものように英単語が出てこなかったことがあって、おれはコーチに「言葉が分からないから話せない」と正直に伝えた。するとコーチは "Try it" と続けた。言葉が分からないのに無理じゃないか?と思ったが、知ってる言葉で頑張ってみるように言われた。しばらく頑張った結果、言いたいことをかなりシンプルな言葉に置き換えて伝えることが出来た。

英英辞典みたいに、単語の意味を別の言葉で説明するような感じだった。「あの単語をど忘れしちゃった、ネズミみたいな動物で、たくさん針がついてて……」と言ったら、相手が "Hedgehog?" と推測してくれる。ハリネズミを英語で何と呼ぶか知らなくても、ハリネズミの話は出来るのだ。そして、たいていこうやって実生活で使った語彙の方が良く記憶に残るし、使いこなせるようになる。

コーチがやったのは、ただ "Try it" と繰り返すだけだったけど、この体験は自分にとってとてもエポックメイキングだった。

アクセントを気にしなくなった

そんなこんなで日々仕事と勉強をしていたら、ある時 OnlineTestConf というイベントで登壇させてもらえることになった。それも英語で。

英語の登壇というだけでもはじめてだったのだけど、45分という枠も当時の自分にとってはかなり長丁場だったので、めちゃくちゃ準備したし、めちゃくちゃ練習した。それでも、発音はどうしても完全には直せず、LとRが逆のまま当日を迎えた。

発表の直前に、イベントのホストであるJoelから「もうすぐ時間だけど、大丈夫?」とDMが来た。おれはホストに「大丈夫だけど、アクセントがあるから伝わるか心配だ」と返事をした。するとホストは「みんなアクセントがある。今話しているアジア人もシンガポール風のアクセントがあるけど、みんなちゃんと理解出来ている。大丈夫だよ」と続けた。

その瞬間、少し肩の荷が降りたというか、おれが喋ってるのはただ日本なまりの英語というだけなんだなと気づいた。それこそ、シンガポールやインドの人たちがそれぞれのアクセントを持っているのと同じで、カタカナ英語もその一つなのだ。

日本人はアクセントを気にしてパブリックな場で英語を喋りたがらなかったり、英語らしい発音をすると、気取ってるみたいに見られることがあったりする。でも、別にアクセントはアクセントで、他の国の人もみんなあるものだし、恥ずかしいものではない。気にする人は気にする程度のものだ。

おわりに

そんなわけで、いくつかのターニングポイントを経て、たくさん会話する機会を得て、今に至るのであった。英語力そのものは会話量を積み上げることでしか身につかないと思うのだけど、それと同時にグローバルコミュニケーションのコツみたいなのを身に着けておくとレバレッジが効いて学習効果が高いんじゃないかと思う。

追記

これは「英語力が壊滅的なやつのIELTSスピーキングテスト」(IELTSはTOEICみたいなやつだけどスピーキングやライティングも評価する)というネタ動画で、英語学習中の人にとっては若干ハラハラしてしまう内容なのだが、"Can't communicate man" というタイトルとは裏腹にちゃんとコミュニケーション取れてるし、別にこれでいいじゃんと思った。伝えようと努力する限りコミュニケーションは成立するのだ。真の Can't communicate man は、何も喋らない人だよ。


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