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合理主義<非合理主義

私はこの年になってやっとわかったことがある。

合理的にやせるには、「たべない」が1番だ。しかし、しかしだ、それが難しい。空腹時に炊き立ての白米、たっぷりのソースがかかったトンカツを目の前にして、私は、我慢なんてできない。

話は変わるが、私は非合理な行動をするやつが嫌いだ。同期入署に非合理代表みたいなやつがいて、
「刑事ってのはなぁ、足だよ、毎日パソコンと睨めっこしても犯人は捕まえられねぇぜ」
と言い出す始末だ。

”事件は現場で起きてるんだ” などのドラマを見過ぎたせいだろう。

そんな非合理な彼は、計算機を目の前にしても、そろばんをはじいてることに、今だに気づいていない。

「合田、おまえのパソコンで、この犯人を洗い出してみろよ」
芦田は命令口調は、相変わらずだ。
「今回の犯人を絞り込んだよ。この中のだれかだよ」
絞り込んだ容疑者一覧を印刷し、芦田に差し出した。
「おい、もっと絞りこめねーのかよ」
「10万人から100人まで絞り込んだだから、あとは君の"あし"とやらで探し出してくれよ」
「外の人数が足りねぇから、お前も手伝えよ」
「私は合理的に動きたいから、もっと犯人を絞ってからにするよ」
チッ、と舌打ちをした芦田は、合田を睨めつけ、署内をでた。

芦田は高校時代、柔道日本一になるほど腕っぷしは強く、警察官になるべくしてなった男だ。脳みそも筋肉流流なのか、ローマ字タイピングすらできない。教えてやるといっても完全拒否だ。

捜査は進展し、犯人が3人まで絞り込まれた。上からの命令で合田は、芦田の班に、合流する事になった。

黒いパーカーをつけ、深々と野球帽子を被った痩せ方の男を、芦田が指差した。
「あいつだ、お前はあいつから絶対目を離すな、気づかれるなよ、じゃあ頼んだぞ」
そう言うと、芦田はすぐにどこかへ行った。
"こんな非合理な事を今だにやってるのか。監視社会になれば街にカメラが設置され"こんなこと"やらなくてすむのに。

と思いながら、合田は容疑者の尾行をつづけた。

張り付いて3日目、容疑者は始めて電車に乗った。
"ん?足がかりになりそうだ"
合田はすぐに、芦田に連絡した。
「そうか、引き続き追ってくれ。今回の山、共犯がいる可能性がでてきた。進展があったらまた連絡くれ」
「おい、そろそろ交代させてくれよ」
「もう少しで終わる。宜しくたのむ」
一方的に電話を切られた。

それから10日が経過した。
合田の張り込みのお陰で、容疑者、さらに共犯者まで逮捕することができた。なぜか手柄は全て芦田となっていた。

合田は、非合理極まりない組織にうんざりしていた。
「もう、2度と張り込みなんかやんねーからな」
「そういうなよ。今回のお礼だ」
芦田は、縦横50cm、厚み10cm程の四角い箱を合田の机の上に置き、その場を去った。
「え、なんだ、これ」

合田は、どうせたいしたもん入ってないだろ、と思いながらも、重みのある箱を開けた。
「ちっ、体重計かよ、ちょっとでも期待した自分が馬鹿みたいだ。俺が入署してきたより10kg太ったからって、、、皮肉かよ」

半年前に健康診断で測った体重は75kg。合田は体重計を床に置いた。
「せっかくだから、測ってみるか」

70kg

「え、まじっ?」
合田は、すぐにピンときた。張り込みの10日間が痩せた要因だと。

「10日で5kg。20日で10kg。30日で、、なんて、ごうり、てきだ」

翌日から合田は、率先して張り込みを願い出た。

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