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スパルタロボット

「意志が弱い人間は誘惑にすぐ負けてしまい、1年の目標を書き初めするも達成した試しがない。そんなあなたにピッタリなロボットを開発しました」

心理学者ミズノ氏は長い月日をかけて、誘惑に負けない為のトレーナーロボットを作った。

手始めに、ダイエットをしてる方100人を治験者にすることにした。ダイエッターは幾度となく襲ってくる誘惑に勝たなくてはならない。だから今回のロボットはお互いウィンウィンである。

早速治験者はロボットを家へ持って帰った。ロボットと言っても見た目は小犬、犬型ロボットなのだ。しかし、見た目とは違い1日のカロリーがオーバーすると噛み付くのだ。

早速1日目が始まった。
「いてーーーーっ」
治験者の半分が1日目から噛みつかれた。ロボットの噛む力は、指がちぎれんばかりの強さで、声を出さずにはいられない。

「これぐらいの方が誘惑に負けなくていい」
「これは1週間ともたない、返却しよう」
初日の反応は半分に分かれた。

1ヶ月経つと治験者は半分以下に減っていた。食べれないストレスと、噛みつかれるという地獄のような日々にダイエットどころではなかった。それを乗り越えた30人は、なんと1ヶ月で見違えるぐらい痩せていた。しかし、治験者の体を見るとあざだらけだった。何度も誘惑が襲い、噛まれ、また誘惑がきたんだとすぐに分かる。

人間には面白い機能"慣れ"というのがある。1ヶ月も噛まれ続けると、痛いが気持ちいいに変わる者もでてきた。それではカロリーオーバーな食事にブレーキをかける事ができない。

誰がやっても成果を出して欲しいロボットにしたいミズノ氏は、悩んだ。

「こんなに早く慣れがくるとは、、少し早まったがアレをだそう」

ロボットに新機能が追加された。その名は"ゲラップ"。オーバーカロリーした日の夜中、一時間置きに爆音がなって睡眠を妨げる。これには多くの治験者が応え、カロリーオーバーする事がなくなった。

しかし、またも"慣れ"た者が出てきた。どんな爆音でも朝まで寝れるのだ。それにはミズノ氏は驚きを隠せなかった。
「人間、十分な睡眠がないとストレスがピークに達するはずなのに、、、どうしたもんか」

ミズノ氏が悩んでいると、爆音を出しすぎたロボットがバグを起こしていた。ロボットが勝手にネットで買い物をするというものだ。起きない治験者を助けようと目覚まし時計を注文していた。その注文は治験者のアカウントからされていたので怒っていた。

「もしもし、勝手に注文されるのを辞めさせてもらえませんか。これはロボットの機能ではないですよね」

ミズノ氏はひらめいた。

「いいえ、これもロボットの機能でございます。オーバーカロリーには気をつけてください」

治験者の実験が終わり、公式にスパルタロボットが発売された。機能はシンプルで、カロリーオーバーした食事をすると、自動で口座から慈善団体に寄付されるというものだ。


売れなかった。

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