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型破りな男

「言われた事だけしか出来ない作業人間になるなよ」
「レールに乗った生き方はつまらないぞ」

世の中、型にハマりつまらない人生を送っている人だらけだ。

そんな私は、時に天邪鬼と揶揄されるが、型破りな人生が性に合っている。

「その内、起業するんだ」
が男の口癖である。

男は学生時代のバイトから型破りが始まっていた。

コンビニでは、
「こっちの方が絶対売れる」
と、陳列を勝手に変え、ガソリンスタンドでは、ユニフォームを着ずジーパンTシャツになり、さらにコールセンターでは、友達感覚が成功率か高いと独自論でタメ口にしたりと、型破りを発揮しては、首になっていた。

男は就職しても変わらなかった。そこで男は気づいた。
「俺の型破りが通じないのは、見た目かも知れない」

男は、柔道部顔負けの肥満体型だった。

ダイエットはジムに行った方が簡単に痩せる、と思った男は早速門を叩いた。

「メニューは、まず大胸筋と、、、食事は、タンパク質を、、、」
「分かりました」
トレーナーから細かくダイエットメニューを指示された。しかし男がその通り行ったのは3日間。それ以降は、
「こんなんじゃ痩せん」
と、独自メニューに変えた。

しかし、どんなに頑張っても痩せなかった。
「ちくしょー、なんで痩せないんだよ」

男は痩せない原因がさっぱり分からなかった。

体型は変わらないまま次の職についた。
警備員だ。

デパートの夜間警備は2人体制だった。パートナーはベテラン警備員で、男へ手取り足取り教えてくれる優しい先輩だった。

「移動はすべて裏のエレベーターを使うんだぞ。これは昔からの決まりだ」

念を押された男だったが、
"マニュアル通りにしていたら、いつまで経っても昇進しない"

型破りな男は、10階まであるデパートだったが毎回階段を使った。
「エレベーターを使わなければいいんだろ」

それから3ヶ月、

毎日10階までの階段を5往復。

男は、

痩せた。

が、首になった。

その後も仕事を転々とし型を破っては、首になっていた。

月日は経ち、男は相撲取りを彷彿するような体型になっていた。さすがに自力では痩せられず、ジムでダイエットメニューを作ってもらった。

早速メニューを行うと、
「こんなんじゃ痩せん」
と、独自のメニューに切り替えた。

言うまでもなく、
痩せなかった。

「その内、起業するんだ」
今日も型破りを貫く、60歳の男であった。

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