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ダンスが痩せるって聞いたんだけど

"痩せるダンス"
動画のタイトルに乗せられ、踊った。

蝉が鳴く真夏の中、蒸し風呂状態になった部屋で踊った私のTシャツは、びしょびしょに濡れていた。

「ふー、こりゃ痩せるわ」

10分踊り続けた私の膝は、笑っていたが、座る前に体重が減った事を確認したかったので、体重計に乗った。

「えー、こんなに汗かいたのにたったの1kg」

文子はがっかりした。膝の笑い具合いとイコールは-3kgだった。しかし文子は冷静になり考えた。

「ん、待てよ、1回で1kgって事は10回やると、、」
文子はうっすら笑みを浮かべた。

「ふぅー、今日で5回目、後5回、5回!」

毎回痩せる動画を終えると、なんだか体が軽くなったように感じた。

「よしゃーー、10回やり切ったぞー。これなら絶対痩せてるはずー」
汗だくの文子は1ヶ月振りに体重計に乗った。

文子の顔が青ざめた。
「何で1kgも減ってないのよー」

怒りが込み上げてきた文子は、動画コメント欄に苦情を書き込む事にした。

"何が痩せるダンスだよ、1mmも変わらんかったわ"
"このダンスのせいで膝痛めたわ"
"動画タイトル煽りすぎ"

文子が書こうと思っていた事が、もうすでに書かれていた。それを見た文子はほっとした。

「なーんだ、みんな同じなんだな。次からはコメント欄を参考にして選ぼうかな」

"リラックスしながら出来るからとってもいい"
"これなら続けられそう"
"毎日続けたら痩せました"

「よし、これなら私でもきっと結果がでるわ」

文子は早速「痩せるストレッチ」を開始。体が硬いなりに一生懸命インストラクターの動きを真似した。

ダンスに比べてきつくなかったので1ヶ月続ける事ができ、始めた頃に比べ柔軟性がついた。しかし目的は「痩せる」事で柔らかくなる事ではない。

「さぁ、1ヶ月毎日続けたのよ。流石に結果がついてきてるわよね」

少しでも軽くなるように息を吸いお腹を凹ませながら体重計に乗った。

「おー、まい、、、がーーー。逆に体重が増えてるんだが、どういうこと?」

怒りが収まらない文子はその日、普段食後のデザートはケーキ一個と決めていたが、五個食べた。

ある日、会社の送別会で、隣の円卓に座る入社して間もない子達の会話が聞こえきた。

「痩せるダンスって知ってる?」
「知ってる、知ってる。でもあれきついんでしょ」
「でもね、まじ痩せる」
「えー、まぢで?!あーいう煽りタイトル動画って中身があまり伴ってないというか」
「私も疑ってたんだけど、5kg痩せたの」
「えー、ほんとに?なら私もやろうかな。最近太ってきたし」

"ふんっ、ばかだな、あんなんで痩せないよ。何が5kgよ、大袈裟よ。せいぜい2kgなくせに"
文子の心の声はひねくれていた。

ある日テレビを見ていると、お腹に巻くだけで腹筋をした事になるベルトが紹介されていた。
「今から1時間限定で100個だけ、49800円が、なんと19800円!!1時間です!1時間」

文子はTV画面に映し出されたQRコードにスマホかざした。
「えーい、買っちゃえー」

1週間後。
早速届いた腹筋ベルトを締め電源ボタンを押した。

ブルブルブルー
「違和感がすごいなー。まぁ付けてるだけだからいいか」

翌日、ダンスでもストレッチでもなかった、筋肉痛になっていた。
「おぉ、これは期待できそー」

巻いてるだけで痩せたいくと信じた文子は、気持ちに余裕がで始めた。

「今日は食べ過ぎたけど家に帰ればベルトがあるから問題なし」

さすがに1ヶ月も毎日巻けば筋肉痛も起きなくなっていた。

「そろそろ、ベルトも潮時かな」

もう痩せた気でいた文子は体重計に乗った。

「えーーーなんで、なんでよ!」
体重が5kg増加していた。期待度が高かった分落胆が大きく、やけくそになった。怒りが収まらなかった文子は、家を飛び出しひたすら歩いた。

気づけば5駅先に着いていた。
「ぐぅーーー」
お腹の虫が鳴った。しかし急に飛び出しので財布もなければスマホも持っておらず、歩いて引き返すしかなかった。それに対してもさらに怒りが込み上げてきた。

家路に向かい歩く事2時間、ようやく住んでるアパートに着いた。飛び出して5時間、飲まず食わずだったが、疲れがどっと込み上げて、部屋に入るや否や倒れるように寝た。

翌朝、お腹が空いて起きた文子は異変に気づいた。

タタタタタタ、、、
「やっぱり、、、」
急いで体重計に乗ると5kg痩せていた。文子は気づいた。

いくら運動をしても、

食べたら

意味が

ない。

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