2023/02/27 テレビの力

27時間TVのキャッチコピーですか？

よくSNSで「一人暮らしにテレビは必要ない」という意見を目にする。私の周りにいる一人暮らし中の人たちにもテレビを持っていない人はかなり多く、持っている人の中でも「あんまり見ない」という人がほとんどだ。
かく言う私も、一応テレビは持っているけど滅多に見ない。何かテレビ番組を見るとしても日曜の朝にプリキュアとワンピースを見るのと、金曜ロードショーかMステを見るくらいだ。それでもニチアサは毎週欠かさず見ているので、一人暮らしをする若者の中でもかなり「テレビっ子」の部類には入るのではないだろうか、とすら思う。テレビ需要がガタ落ちしている今、テレビっ子のハードルもかなり低くなってしまった。

iPadでアマプラを見れればそれでいい。MステとかもどうせTVerで配信されるし、ニュースはLINENEWSやYahoo!アプリを見ればいい。テレビに取って変わるさまざまなエンタメが登場し、その全てが「自分用」にカスタマイズできるものだ。最早テレビに備わったカスタマイズ機能は録画機能程度で、その不都合さはやはりサブスクなどに比べると劣る点なのかな、とも思う。

若者の、そしてこれからのテレビ需要はおそらく下がっていく一途を辿るだろう。テレビ業界がここから巻き返しのV字回復を望むのはかなり困難で、やはり現代の流れに迎合したエンタメの提供を試行錯誤するしかないんだろうな、と思う。だってアマプラって便利すぎるしYouTubeって面白すぎるもの。

だけど、今日その考えが少しだけ変わった。

春休みなので、地元に帰省している。実家では基本的にテレビが点いていて、何かしらの番組が流れている。ニュース、バラエティ、ドラマ、そのほか色々。私は普段あまりテレビを見ないので、親を経由して「はあ今のドラマってこんなのやってんだ」と知る。まるで私の方がおばさんみたいだ。

朝、起きてリビングに行くとテレビが点いていた。朝の情報番組が流れていて、安住紳一郎アナウンサーが「おはようございます！」とあいさつをする声をBGMに水を飲む。ぺこりと頭を下げるアナウンサーたちを見て、思わずこちらも反射で頭を下げてしまった。

朝起きて誰かに「おはようございます」って言われるの、すごく久々かもしれない。

「おはようございます。今朝はどんなお目覚めでしょうか」
安住アナがそう言う。以前たまたまTBSのラジオ「日曜天国」を聞いてもそう思ったが、安住アナの言葉の選び方が好きだ。わざとらしくなく着飾るわけでもなく、朝という一日の中で一番めんどい時間の頭にスッと入ってくる。
おそらく台本ではなく安住アナのアドリブの言葉なんだろうな、と思った。こういう、番組を作る際に演者に対し圧倒的な信頼を寄せて「この人ならなんとかやってくれるだろう」という考えのもとに行われるディレクションを、どうにも嫌いになれない。なんだか見ていて心地が良い。

番組はどんどん進んでいく。まずは天気の話をして、スポーツの話をして、エンタメの話をして、もっかい天気の話をして、全国各地の天気の様子を中継して、「あ〜いい日の出ですね〜」とか言って、それでようやくニュースに入る。良い。このくらいがいい。
正直、朝っぱらから政治の話とか戦争の話とか聞きたくない。なんだったら「中国に渡ったパンダはみんな元気そうです🎶」みたいなニュースだけ聞いていたい。だって朝なんだもの。

そんなナーバスさを、少しずつ軽減してくれる。定期的に「おはようございます」と言うから頭がどんどん起きてくる。今日は朝早かったのだけど、なんだかいつもよりシャッキリとした頭で家を出ることができた。

めでたい。
もちろん全部が朝の情報番組のおかげだと言うことはできない。FRAMEの「Plus 1 Good Day！」を聞きながら起きているからかもしれないけど、けどやっぱり誰かの「おはようございます」がそばにある朝って、良い。

でも一人暮らしじゃどうしても、「おはよう」なんて言ってくれる人はいないのだ。誰かのおはようが無い生活に慣れ、適応していく。モソモソ……と布団の中で朝に抵抗して、やっとの思いで布団から這い出るような日々に慣れていく。

そんな中で聞くテレビからの「おはようございます！」は、なんだか冷たい水で顔を洗った時のような気持ちよさに似たものがあった。

テレビって、やっぱり良いかも。
だってこんなのサブスクで見ても何も面白く無い。朝起きて、顔を洗ってもまだ眠い目蓋を擦って、それで浴びる朝イチの「おはようございます！」がいいのだ。
ライブ感、と言うのだろうか。それが自分の中でうまく波長が噛み合う感覚。面白い。

テレビ、やっぱり無いと寂しいな……。
次に引っ越すときはiPadを買ってテレビは無くていいや、と思っていたけれどやっぱり持って行こう。

ニチアサも日曜の朝に早起きして見るからこその良さがある。まだ頭が動かない、まだ寝ていたい日曜の朝に起きてプリキュアとルフィを応援する。それしか味わえない楽しさがある。
テレビって、ライブなのかも。