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インタビュー調査<小坂洋右氏>

 北海道札幌市で1961年に生まれた小坂洋右氏は、1979年に北海道大学の文学部に入学し、言語学を専攻した。卒業後、下町風俗資料館に就職、三年後にアイヌ民族博物館に移る。
 小坂氏が世界に眼を開かれたきっかけは、大学時代にアラスカに行ったこと、小さい頃に長崎の原爆資料館を見たこと、ペレストロイカの時に東欧・ソ連を回ったこと。アラスカでは原始時代をほうふつとさせる生活を送っている内に、「先住民族とか、もっと拡げて人類そのものの歴史に物凄く関心が出てきた」。原爆資料館では、なぜ戦争はなくならないのかについて深く考えた。また1986年に西欧から東欧へ実際に足を運ぶことで、「社会というものは体制や国によってこんなに違うものなのか」と体感し、冷戦時代の取材を始めたという。
 1989年に北海道新聞社に就職した後、北見支社報道部に赴任。警察周りなど新人記者としての仕事とともに、アイヌの中でも最も歴史的記述の少ない、北千島アイヌについて研究・取材し、1992年『流亡—日露に追われた北千島アイヌ』を出版した。1992年からは本社の社会部に配属となり、北海道庁の公費乱用問題の取材を行った。この時の記事をまとめた『追及!道庁不正―公費乱用 一連の報道』は、新聞協会賞、日本ジャーナリスト会議奨励賞を受賞した。
 また、1995年前後に米ソ情報戦について取材し、戦後50年の節目に連載した内容を『潜行―米ソ情報戦と道産子農学者』と『日本人狩りー米ソ情報戦がスパイにした男たち』にまとめて上梓した。
 2003年にはオックスフォード大学のロイター・ジャーナリストプログラムで、「人間の遺伝子改良は可能なのか、可能だとすればそれは許されるのだろうか」について学び、科学の発展がもたらす利便性と危険性について研究するとともに、原爆の開発者ジョージ・プライス博士についても調べた。
 1996年にヒグマに襲われて亡くなった星野道夫氏を巡る現場状況について、テレビ局発表への違和感から取材し、2006年には『星野道夫 永遠のまなざし』を共著で出版。また、2023年『アイヌの時空を旅する』まで、長年に渡ってアイヌ民族に関して取材し、著書を五冊出版した。『アイヌの時空—』は2023年度の第36回和辻哲郎文化賞を受賞。小坂氏は2019年のアイヌ施策推進法について、「最新の法律の方が後退しているんじゃないかという気もする」と語った。

主担当:亀谷