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ジョウカツ⑬

【13】花の送り主。

僕の机に花を供えてくれた人物を見つけるため、教室で待機していた僕らの前に現れたのは、僕を遊びに誘おうとしてくれた森嶋だった。

「真治さん、この方は?」

「この子は森嶋くんです。僕が死ぬ前に遊びに誘ってくれた子で。」

「お友達なんですか?」

「あ、いえ。そこまで親しくは…」

鼻歌交じりに花瓶の水を替えて、強すぎる日差しが入らないように、カーテンを軽く広げてくれてた。

「めちゃくちゃ丁寧…この子できる…!」

「森嶋くんはクラスでは目立とうとしないけど、存在感がある子なんですよ。」

「気遣いできますし、将来有望ですね〜」

「うしっ。これで良し。」

すると今度は  先生が様子を見に来た。

「お〜森嶋。今日もありがとな〜。」

「あっ先生おはようございます!」

「いや〜いつも森嶋がやってくれるおかげで助かってるよ〜」

「なるべくこの花は長持ちさせたくて。買ったのは俺じゃないし。」

「そうかそうか〜。佐藤も喜んでると思うよ〜。そんじゃ部活頑張れよ〜。」

「はい!ありがとうございます!」

二人が教室を出て行って疑問が増えた。

「この花は森嶋くんが買ってはない?なら誰なんだ?」

「先ほど先生は、『今日もありがとう』とおっしゃってましたから、森嶋さんが必然的に水をあげる係をやっているってことですよね?」

「ということは、森嶋くんに近しい人?でも尚更僕との接点が薄いんじゃ…?」

「こうなったら、これを使うしかない!」

そう言うと、おもむろにバインダーを掲げた。

「あの世の技術が詰まったこれは、通称 i仏(アイブッツ)。
この i仏の機能を使います!その名も!残留思念計測器!」

「・・・・」

「あれ?真治さん?どうかしました?」

「色々ツッコミたいですが…まぁ良いでしょう。それで、残留思念計測器って?」

「残留思念は、その人の想いが純粋であればあるほど強く残ります。この残留思念を追っていけば、花を買った人物までたどり着くはずです。」

「なるほど?…ちなみに、そのi仏を作ったのは?」

「スティーブ・J…」

「天才はあの世でも天才だったか。」

「それじゃ、早速!」

浅間さんは i仏のカメラを起動させた。

「…どうですか?」

「そう…ですね。弱々しくはありますが、まだ残留思念が残っていますね。真治さんどうしますか?」

「……もちろん、辿りましょう!」

僕らは浅間さんのナビゲートのもと、この花の購入者を追うことにした。森嶋くんのおかげで、あの花もしばらく持ちそうだ。
学校を出発したのは朝9時頃。日差しはそこまで強くはないが、汗を拭うサラリーマン達を見ると、今日は暑くなりそうだ。

「浅間さん、残留思念は一般的にどれくらい残るものなんですか?」

「その人の想いによりますが、多くは四十九日を過ぎたあたりから、弱まっていく事が多いです。それを機に、皆さんも気持ちの切り替えが済みやすいんでしょうね。」

「なるほど。…あれ?ここは…」

残留思念を追っていくうちに、僕らは僕の事故現場に着いた。

「真治さん、これ見てください。」

そこには二つの献花と僕の好きなジュースが置いてあった。

「この二つは母さんと日和ですかね?」

「いえ、片方の献花はお二人からのものですが、もう片方は教室にあった思念と同一人物ですね。一度ここにも来たのでしょう。反応が強まっているので、近くにいるかもしれません。」

しばらくして、僕たちは浅間さんの誘導のもと、その思念の人物と思われる家を見つけた。
表札には『相沢』と書かれ、これといって特徴のない一軒家だった。

「ここが花をくれた…」

「お邪魔しまーす。」

「ちょっと浅間さん!遠慮なさすぎじゃ…」

「きっと我々のことなんて認識できないですよ。なにより、真治さんはタイムリミットがあるんですから。」

「…そう、ですね。」

僕たちは玄関をすり抜け、相沢家にお邪魔した。


ーつづくー

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