ノイズキャンセリング

今年の元日は、去年の分のクリスマスパーティーをした。
本来は12月に行う予定であったがみんなの予定が合わなかったのだから仕方ない。クリスマスを翌年に持ち越すという初めての行為で最初はみんな戸惑いもあったが、無事元日のクリスマスパーティーは大成功に終わった。

地元の幼馴染6〜7人で行われるこのクリスマスパーティーは4年前から恒例になっていて、メインイベントはプレゼント交換である。各々が自由にプレゼントを持ち寄り、ランダムでプレゼントの交換先を決める。このプレゼント交換の醍醐味は用意するプレゼントの内容に一切ルールが設けられていない点である。ジャンルも値段も数も自由。極端な話、チロルチョコ1つでも良いし、ルイヴィトンのバッグでも良い。一年目からこのルールで始まり、今まで数々の不条理な交換が行われてきた。スターバックスカード5000円分用意した人が全く同じカード2000円分を受け取ったこともあったし、おしゃれで高品質なスピーカーを用意した人が大きさ以外に何の取り柄もないゴリラのぬいぐるみを受け取ったこともあった。そんな破茶滅茶なルールにも関わらず改正しようという声も一切上がらず、むしろ全員がそれを醍醐味として飲み込んで毎年楽しめているところに幼馴染という関係性の美しさが詰まっていると感じる。

今年のプレゼント交換で俺はAir Pods Proを手に入れた。
価格だけで言うと他のプレゼントと比べて圧倒的に高い。
あまりにも豪華なプレゼントに俺は歓喜と驚きの声を上げた。
Air Pods Proを用意した友達は毎年価格で勝負するタイプとして有名な男だ。
ルール上、下手したらチロルチョコを受け取るリスクを背負っても、Air Podsを用意するのだから漢と言った方が正しいかもしれない。

そして俺が上げた驚きの声の意味に含まれているのは単純にAirPods Proというプレゼントのクオリティに対してのものだけではない。なんと俺は2年前のプレゼント交換でも同じ友達からAirPodsを受け取っていたのだ。今回のはProなので2年前もらったものより性能が良く高価なモデルである。2年前もらったAirPodsは毎日使い続けていたのでそろそろ新しくProが欲しいとちょうど思っていたのだ。まさか同じ友達からAirPodsを2台もらう人生になると思っていなかった。俺は不思議な縁に驚きを隠せずにいたが、その友達は何と自分が2年前にAir Podsを用意したことを本気で忘れていたらしく、今回アップルウォッチを用意するか迷った挙句AiPods Proにしたらしい。そうなればもう男でも漢でもなくただの気前の良いApple関係者なのではないかと疑ってしまうほどだ。何はともあれ個人的には新年1日目から良い夜になった。ちなみにその友達は、気にせず大声を出すことができるマイク型遮音グッズをもらっていた。

新しくもらっAirPods Proにはノイズキャンセリング機能が付いている。
初めて使ってみたが本当に周りの音を感じさせず集中して音楽が聴ける。今も騒がしいファストフード店でこの文章を書いているが、AirPods Proのノイズキャンセリングを使うと世界に自分しかいないのかと錯覚するくらい集中できる。

俺は昨年末2023年の抱負を決めた。「一切周りの声に流されず自分のやるべきことに集中する。」このnoteを毎日書き続けるのも自分の中でそのやるべきことの一つである。
そして元日にこの新しいノイズキャンセリング機能が付いたAIrPods Proが俺に回ってきたのは、周りの声という日常に転がるノイズに流されず頑張れよというその友達からの力強くも優しいメッセージなのではないかと感じた。そう思うと何だか勝手に熱い気持ちになり「頑張る」と心の中で呟いてみたが、その友達が2年前にAirPodsを用意したこと自体忘れていたと言っていたのを急に思い出し、今回のプレゼントにも価格以上の意味は無いなと感じ、急激に冷めてしまった。
ホットコーヒーを一口飲んで俺は今から別のやるべきことをやる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?