鶏肉

今日は成人の日。新成人の皆さん、おめでとうございます。

これはある程度影響力のある人がインスタグラムやFaceBookで言う言葉であって、誰に対して発信しているわけでもないこのnoteで言うことではない。しかし誰にも見られていないとしても毎日書いている日記の中で成人の日について触れないというのはそれこそ大人として野暮なんじゃないかという、大人になっても延々と拗らせ続けているある種の過剰な自意識によって出た「おめでとう」の気持ちである。何はともあれ新成人の皆さんおめでとうとは思っている。

そんな新成人たちが人生の新たな門出を迎えている中、俺はいつもスーパーで買っている安い鶏もも肉の値段が爆上がりしていることに腹を立てていた。その鶏もも肉はブラジル産で、100gで68円というまさに一人暮らし男の一番の味方だった。元々そのスーパーには100円の九州産の鶏肉しかなかったが、その鶏を見た時ブラジル産というだけでこうも安いのかと衝撃を受けた。その鶏肉に一目惚れした。何度か買って食べてみたが味も普通に美味しい。俺は気づいたらその鶏肉に恋をしていた。スーパーに行くと毎回そのブラジルの鶏肉を買った。要するにお付き合いが始まった。まさかブラジルから来た鶏とそういう関係になるとは思っていなかった。しばらく良好な関係が続いていたが、今日久しぶりにスーパーに行くとそのブラジル産の鶏肉が100円になっていた。めちゃくちゃショックだった。裏切られた気分になった。あまりの値上がりに俺はその鶏に愛想をつかし同じ値段の九州産の鶏肉に乗り換えた。家に帰り九州産の鶏肉で親子丼を作って食べていたが、冷静になると裏切られたのは俺ではなくてブラジルの鶏の方じゃないかと思った。俺は結局ブラジルの鶏と付き合っている時もその鶏の経済力しか見ていなかった。自分の納得する経済力がなくなった途端に俺はブラジルの鶏に別れを告げたのだ。最低だ。100円という値段を見た瞬間に今まで孤独な食卓を盛り上げてくれた愛情や恩というのを一切感じることなく簡単に九州の鶏に乗り換えてしまった。本当に最低で情けない。一度九州の鶏と寝てしまった俺はもうブラジルの元鶏には許されない。大事な鶏を失ってしまったことに大きすぎる後悔の念を抱いた。
成人の日の夜の孤独な食卓で、俺はまだまだ子どもだという事に気付かされた。

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