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しりとりラウンドテーブル

「りんご!」「ゴリラ!」「ラッパ!」「パンダ!」
2階のお部屋を撮影しながら、ふと楽しそうな声が聞こえてくる。
室内窓から1階の様子を覗くとしりとりをするご夫婦の様子が見えた。

その日伺ったご夫婦は、旦那さんが取材の依頼から当日の対応もしてくれたのだが
SNSでもとっても夫婦仲が良くて、パートナーの方を大切にされている様子が伝わるものも多かった。
お二人一緒に車で遠出することもよくあると伺っていたので、きっとしりとりもよくやるゲームなのだろう。互いにワードを出すテンポで分かる。



ポンポンと小気味よく発せられるのに加えて、それがラウンドテーブル(円卓)で対峙して行われていたため、卓球のラリーのように見えておかしくなった。
これが角張ったテーブルでなく、丸みを帯びたラウンドテーブルなのが良い。
尖ってなくて、柔らかに言葉がボールのように弾んでいく。

「あっ!それはさっき言ったよ。」こちらも思わずハッとするほどラリーの終わりは突然だった。ゲームに参加していない自分も何故か、ラリーのリズムが終わってしまうことにちょっぴり寂しさを覚えたが、そんな瞬間も束の間。
「次は3文字縛りでやろう!」と旦那さんの声が聞こえる。
自分も再び、シャッターボタンに指を乗せた。

取材、撮影となるとどうしても緊張してしまう方が多い。
写真の中に入ってもらう際は、音楽をかけたり、こちらからも話したりしながら進めるため
比較的緩やかに進む。ただ物撮りの際には、そうも行かず、どうしても普段住まいにいない人がいるというだけで気を使わせてしまっているだろう。

だからこそ、こうした自然な様子が伝わってくるシーンに出会えた時は自分自身もホッとする。
そして同時に、顕になったありのままの日常を前に、風景はもちろん音や雰囲気さえも余すことなく残したいとシャッターを切る指の力が強くなっていることに気づく。

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