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映画『滑走路』 今年一番、鼻がツーンとした作品

鑑賞してからちょうど1ヶ月。時間が経ちましたが、観た感想をどうしても書き残したいと、想いをまとめます。

『滑走路』

2017年12月25日に初版が発売された、「歌集 滑走路」を映画化した作品。作者である萩原慎一郎さんは入稿したのち、自ら命を絶ったそうです。当時この歌集はとても話題になったとか。お恥ずかしい話ですが、私は知りませんでした。それ故に、行きつけの映画館に掲示してあったポスターにもさほど興味が湧きませんでした。むしろ「観ないかな」と思っていたくらいです。(猛省)

そんなある日、いつものように映画館へ行き、いつものA11の席に座る。すぐに予告が始まる。『滑走路』の予告。鼻のあたりがツーンとする。たった1分足らずの予告でこんなに気持ちがいっぱいになるなんて。いままでにもありました、こんな感じ。でもね、それとはまったく違うのです。今回はお目当てでなかったから。正直、その日に観た映画のことはあまり印象に残っていません。まるでその予告が心に楔を打ったようでした。

作者の方のご不幸があったとか、可哀想だからとか、そういうことではありません。はたまた、自分も同じ境遇だったということでもありません。映画のストーリーに関わることは控えますが、映画の主人公や作者の方は「許すことを頑張った」のだと思うのです。それは、自分以外のすべてのことや他人のことというよりも、自分自身を許すこと。

先日観た韓国映画『詩人の恋』の中でもこんなセリフがありました。

「悲しみを抱える人々のために代わりに泣くのが詩人なんだ」

詩人や歌人は、悲しみや辛さの代弁者。しかも自らの過去と向き合う勇気が要る。私はその挑戦にいたく感銘。作者の方はその勇気と挑戦を言葉の翼に託した。それを受け取れたことが、私はとても嬉しかったのです。

実は、この文章を書くことに多少ためらいがありました。この映画に対する感情をうまく整えて伝えることができるのか。気持ちが入りすぎると、興奮してうまく表現できない。私はよくあります。この1ヶ月で自分が伝えたいことをできるだけ端的に整理しました。手元には歌集とパンフレット、耳元には主題歌「紙飛行機」。間違いなく、今年一番、鼻がツーンとした作品です。

コロナ一色に染まった2020年。ちょっとの時間だけ、鼻をツーンとさせてみませんか。


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