『異端の鳥』 原題には「痛み」をともなう宿命があった
待望の『異端の鳥』がついに公開されました。
強烈に訴えかけてくるこのチラシの場面。
醸し出されるシズル感。
何かある。
観たい、いや、観なくちゃいけない!などと、ひとり心の中でいろんな想いが駆け巡っていました。
一方で、鑑賞前からこのテンションだったので、期待外れだったらどうしようなんて考えもちょっとだけ頭をよぎりましたが、余計な取り越し苦労でした。
舞台は第二次世界大戦中の東欧のどこか。両親と離れて疎開した主人公の少年は身を寄せた先で老女と暮らしているが生活は楽ではない。ある時、その老女が突然死する。少年がそれを発見した際にあやまって蝋燭を落としてしまい、その火が原因で家が焼け落ちてしまう。そして、両親が住む「家に帰る」ことを心に誓う。人間という存在を悟る過酷な旅路がはじまる。
事前にこの映画についてほとんど知らない状態で鑑賞しました。いま思うとそのことが本当によかったなと思います。
この映画のもつ世界観と隅々に隠された言葉とシーンのレトリックに、存分にどっぷりと浸ることができます。
恐らく、さまざまなシーンで気持ちが押しつぶされそうになるかも知れません。
正直に言いますと、私もぺちゃんこになりました。
だけど、それは実際に私たちが住む世界とも重なっていることに、潜在意識で気付いているからではないかと思うのです。
他を受け入れない、人間の欲望と残忍さ。
すべてが誇張されて演出してあるだけで、根っこの部分はいまも変わらない。
むしろ、さらに陰湿化しているとさえ感じます。
いや〜、誰かと意見を交わしたい。
みなさんがどんな感想をもつのか、とっても気になってしまいます。
ちなみに原題はThe Painted Bird。
そこにはすでにpain(痛み)が暗示されていました。
人生の「痛み」を潜り抜けた末に、主人公の少年が見る世界とは?
最後にもう一言だけ。パンフレットを眺めながら映画の余韻を味わっていると、あることに気付いて「エーッ」と、本気で声が出てしまいました。ほんとに家でよかった。
からだの内側からいろんな感情が吹き出してくるような作品。みなさんもぜひ!
#映画 #シネマ #cinema #エッセイ #レビュー #異端の鳥
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