見出し画像

Rettyの資本政策(マザーズ上場)

別でやっているブログの方では、既に投稿していましたが、飲食店・グルメ情報のSNSを展開するRettyが2020年10月30日にマザーズに上場します。
Rettyは2010年11月に港区六本木にて「株式会社TopNotch」という社名で創業されました。
その後、現在のRetty株式会社に商号変更し、「港区」⇒「渋谷区」⇒「品川区」⇒「港区」と本店移転をしていたので、その分の閉鎖謄本を取得しての資本政策分析となりました。
RettyのIの部はこちらです。
私は司法書士であるため、財務・資本政策に関しては本職の方のようにはいきませんが、私なりに分析してみました。
Rettyのユーザーでもありますし(投稿はしていませんが)、ずっと以前から追っていた会社で、ある種の思い入れがあり、時間をかけて分析しました。
ちなみにIPO達成企業の資本政策分析記事を弊社ホームページにも載せていますので、よろしければそちらも見てください。

こちらの記事が気に入っていただけましたら、Twitterやその他SNSでシェアしていただけると大変幸いです!

Rettyの時価総額推移

画像5

画像4

各シリーズの投資家は以下です。
シード:CAV、林正栄氏
シリーズA:グリーベンチャーズ、NTTインベストメント・パートナーズ、三菱UFJキャピタル
シリーズB:伊藤忠テクノロジーベンチャーズ、みずほキャピタル(プラス既存投資家)
シリーズC:Eight Roads Ventures Japan、グリーベンチャーズ、みずほキャピタル
シリーズD:Eight Roads Ventures Japan、WiL、ABC ドリームベンチャーズ

エクイティでの総調達額は約25億円でした。

Rettyの決算公告を見ると、2019年9月の決算ですでに黒字化しています。
シリーズDの2016年7月を最後に、外部資本は入れていませんので、内部留保分で運営ができていたと思われます。

種類株式の回収に伴う、株数増加

上場時、ほとんどの場合、全ての種類株式を回収し、普通株式と交換されます。
その時の交換比率は原則、1対1ですが、ダウンラウンド等があった場合は、調整式により、株数の調整が行われ、より多くの普通株式と交換されることになります。
Rettyの場合、2020年3月16日に、種類株式と普通株式の交換が行われましたが、交換比率は1対1ではありませんでした。

種類株式回収前の全体の株数が 9,343,384株。
回収後の全体の株数が 9,812,504株。

種類株式の回収前後で、+469,120株増えていました。

Rettyはダウンラウンドは行っていないため、この増加した株数は一体何処からきたのか、と思い謄本を見ていたら、C種とD種の「6.取得価額等の調整」に上場時の調整として以下の記載がありました。

画像1

IRRが想定(25%)以下だった場合、株数の調整が行われる取り決めです。こちらの条項に基づき、C種とD種の株数を1.25倍してみたところ、

<種類株式回収前>
  C種の株数:1,062,632株
  D種の株数:813,848株

<種類株式回収後(1.25倍後)>
  C種の株数:1,328,290株(+265,658株)
  D種の株数:1,017,310株(+203,462株)

増加した株数が+469,120株で、回収前後で増加した株数とピッタリ同じでしたので、こちらの上場時の調整が効いたものと思われます。
※この記事は2020年8月時点で執筆していたため、上記の記載は、その時点の予想ですが、Iの部p.117に、C種・D種を1.25倍したと記載がされていま※

ストックオプションについて

発行されたストックオプションは17回もありました。

画像5

オレンジ色のセルは有償SOです。「発行時点の割合」は潜在株数は考慮していません。

画像3

IPO時点での潜在株式数は14.1%(一の部)でした。

上場前に謄本上に変更があった点(小ネタ)

公告方法を電子公告に変更
上場直前までは官報公告にしている会社が多く、Rettyも同様でした。
なぜ、上場前は電子公告より官報公告の方が良いのか書くと結構長くなってしまうので、一言でいうと、電子公告を選択した場合、HPに貸借対照表の全文を5年間継続掲載する義務があり、これを避けるためです。

単元株式数の設定
東証より、上場会社は単元株を100株とする要請があるので、100株に変更されています。

発行可能株式総数の変更
上場会社=公開会社になります。
会社法第113条第3項により、公開会社は発行可能株式総数を【発行済み株式総数×4】した株数以下にする必要があるため、発行可能株式総数を1億株→4000万株にしています。※発行済み株式総数は1061万2504株です※

資本金の額の減少
2020.8.24に資本金を1億円→5969万1350円に減少させています。
減資の額が、あまり見ない珍しい金額と思いましたが、これには理由があるようです。
同日付で新株予約権の行使があり5969万1350円→9500万円に資本金が増えています。
新株予約権の行使を見越して、外形標準課税の適用会社にならないために、こちらを含んだ減資をしておいた模様です。
ちなみに行使があった新株予約権は第5回新株予約権100個です。
株式分割があったので、100個行使で普通株式が80万株分増えています。

種類株式の廃止
種類株式が記載されている区が廃止されました。
ちなみに、優先株の普通株への転換は2020.3.16にされていました。
上場時、優先株の普通株への転換と種類株式の廃止は同時にされることが多いのですが、コロナの影響か、上場タイミングを計っていたものと考えます。

株式の譲渡制限に関する規定の廃止
上場すると譲渡制限株式ではなくなるため、上場直前のタイミングで譲渡制限を外しています。

事業目的の「及び」を「および」に変更(笑)
事業目的の「及び」部分を平仮名に変更していました。
「及び」は平仮名に変更していますが、

10 イベントの企画および運営、並びにそれらのコンサルティング業務

の「並びに」はそのままです。

定款目的ナビという上場企業の事業目的だけを掲載・検索できるサイトを運営しているので(元システムエンジニアなので自作です)、他社の事業目的を検索してみたところ、

ぐるなび
1 インターネットおよびコンピューターを利用した情報処理サービス業務ならびに情報提供サービス業務
アスクル
17 マーケティングリサーチならびに経営情報の調査、収集および提供
イオン
1 衣料品、食料品、家庭用品、日用品雑貨、電気製品、家具製品、化粧品、装飾品雑貨その他の百貨の小売ならびにこれに関連する物品の製造、加工、卸売および輸出入

という風に、<及び・並びに>系は平仮名なら平仮名統一なのかな思っていましたが、Rettyのように混在パターンもあるんですね。
混在にした理由を是非お聞きしてみたいです。

まとめ

雑感としては以下です。
・シードで21%の放出(他社同様、アーリーステージでの株の放出比率が高くなりがち)
・ストックオプションの発行数もシード期に多め
・代表取締役の武田氏のIPO時点の株の保有率は29.4%でした。
・元々は優先株→普通株への転換が2020年3月になされていたので、もっと早くIPOをする予定だったものと思われます。
・Iの部より、ユーザー数がコロナ前の水準に戻ってきているようです!
・前々から追っていた企業なので、「遂にIPOか」と気持ちが若干高ぶっています。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?