マスコミ様が使う「医療崩壊」とは何か。いろいろありそうだ。そしてそれを起こさないようにするには?

WIKIにも医療崩壊があり、コロナがらみでも紹介されています。

医療崩壊(いりょうほうかい)とは、医療安全に対する過度な社会的要求や医療への過度な期待、医療費抑制政策などを背景とした、医師の士気の低下、防衛医療の増加、病院経営の悪化などにより、安定的・継続的な医療提供体制が成り立たなくなる、という論法で展開される俗語である[1][2]。2020年、新型コロナウイルスの感染が急速に拡大した国々では、医療従事者や医療器具が不足、重症者の治療に手が回らなくなった。このような状態を医療崩壊と表現するようになった[3]。”

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8C%BB%E7%99%82%E5%B4%A9%E5%A3%8A

上記をもとにすれば

・医療安全に対する過度な社会的要求・医療への過度な期待

・医療費抑制政策

により、

・医師の士気の低下 ・・・立ち去り型サボタージュ、医師のバーンアウト・過労死

バーンアウト・睡眠不足な医師は注意障害が多い。


・防衛医療の増加 = いわゆる過剰医療

・病院経営の悪化:例)”新型コロナ患者受け入れ病院の8割超が赤字”、”急性期病院で、とりわけ経営状況が逼迫

がおこり、その結果、

・安定的・継続的な医療提供体制が成り立たなくなる = 医療崩壊

という現象のようです。

「安定的・継続的な医療提供体制が成り立たなくなる」とは、具体的に言えば、医師など医療者が立ち去るなどにより必要な医療にアクセスできない、外来受診や必要な手術を受けるまでに何か月も待ち時間がある、建物や医療機器が老朽化しても必要なメンテナンス・アップデートができない(建物の崩壊など物理的な崩壊もありうる)、必要な医療物資(マスク、ガウンなど含める)を購入できない、などでしょうか。


上記で言及されていないパターンの医療崩壊も以下に言及します。

医療財政の破綻

以下の記事の中に棒グラフがありますが、

日本の国としての医療保険(健康保険)は社会保険であるとされますが、財政を見ると、すでに医療費の3-4割は税金(一般会計)で穴埋めされているわけで、財政という面からは、コロナ以前に既に社会保険ではない、つまり社会保険としての医療制度は破たんしていると言えると思います(が反論あればぜひお願いします)。

このような一般会計からの穴埋めは、国レベルの保険財政だけではなく、地方の公立病院経営でも同じです。つまり、病院会計という特別会計は億単位の赤字となり、それを補填する形で、地方自治体の一般会計から穴埋めをし続けています。関連したことを以前に記載しました。

公立・私立とわず、病院が「赤字」というのは、何も病院経営の怠慢にすべてを起因させることはできません(*ただし、病院経営には改善の余地はありまくりとも思います)。

というのも、病院、特に救急を受けているような基幹病院は、常に一定のゆとりを持っていなければならないからです。

医療ニーズは、経時的に変動しますし、その予想はかなり難しいです。コロナ対応なんて最たる例でしょう。

特に救急を受け入れている病院は、地域の最後の砦として、受け入れることができない、という状況を作るわけにはいかないという環境なので、人も物もゆとりを持たせておく必要があります。

ゆとりを持たせるというのは、悪く言えば無駄を持っていなければならないということになります。

ですので、支出は過剰になります。

一方で収入は、日本の保険医療では、基本的にはDPCだろうが、やった分に応じて、という方式ですので、「ばっちり準備していたけど患者が来なかった」となれば大赤字となります。

これを踏まえて来年度は、その「無駄」はカット、となると、有事に対応できなくなる、病院はそんなジレンマを抱えています。

この「無駄」は、いわゆる市場メカニズムで対応することは困難ででしょうから、公でカバーする=国や地方自治体が補填する、というのは当然の結果です。

ですので、「病院の赤字を地方自治体が補填する」という総論は問題ないとは思うのですが、解決されるべき課題は、その補填の金額の大きさだとか、病院の運営の在り方(例:あきらかに職員の給与が高すぎる、物品を高く買いすぎている、不要なものを買いすぎている、医療サービスが悪すぎる、保険請求漏れが多すぎる)などではないかと思います。

一般会計からの穴埋め、というのは基本的には、地方自治体の議会マターですので、議会で予算を通すわけですが、多くがもめることはあれどなんだかんだで可決されます。

理由は、いろいろあると思います。多くが、一般の人は良くわからないし興味もないし、特に若い人は、どうせ利用しないし忙しいから、病院の事にはかかわりたくない、関わっても無駄だろう、など悲しいかな無関心ではないでしょうか。その一端が、地方議員には若い人がいない(高齢化率が住民よりもはるかに高い)ということではないでしょうか。

ここでもシルバーデモクラシーで、地方の病院の利用者は高齢者になりがちなので、高齢者は必要と考えるので、とりあえず現状維持希望、となります。

高齢者は近くに病院があってほしい、若い人は不要、となると、多数決で前者が勝利します。一般会計からの巨額の補填は続きます。若い世代はますます無気力・無関心に。

そして、いつかその日がやってきます。

本当にもう無理、補填できません、と。

そうなったときには多くの場合、病院の中も取り返しがつかない状況になっていることが多いです。

つまり、病院スタッフも高齢化、新しい医療技術はもちろん、サービス対応も発想もできない、公務員的な前年踏襲があたりまえ、経営効率という考えはない、自分たちの給与は絶対下げない、これまでさんざん我慢して高齢者の面倒見てきたんだから退職金もしっかりもらうなどなど。

彼らは自分たちとしては当然だと思っているのでしょうけど、外から見ていると、なんと自分勝手な事か、と思われます。

一般社会では、お金を出す側が、その物やサービスに価値を認めて、対価を支払う、これが当然です。都会も田舎も同じです。

しかしこんな終わっている病院に、地域住民は価値を見出すでしょうか。

以下などでも書きましたが、それはNOでしょう。

となると、田舎の公立病院で、地元住民から見放された病院への一般会計からの赤字の穴埋めは、議会を通らない時が来るでしょう。

それが起こると、現実には、医療機関職員への給与支払いが滞るなどを通じて、大問題になり、多くは首長が辞職、それを争点にした選挙、となることでしょうけど、これまでそういうことが起こってきた地方を見ていると、それが起こってもあまり改善しませんね苦笑

理由は結構簡単で、

・首長になる人が上記のことわかっていないっぽい

・病院職員って要するに地元住民であり、その家族親族も、かなり強力な病院維持勢力なので改革できない(改革しないのが世論w)

という構図。

くわえて、地方では、病院職員って相対的な高給取りなので、地元経済のけん引役なわけです。田舎に行くと、病院のまわりに飲食店が多いのは、その分かりやすい例です。

飲食店は病院がなくなったり職員が減ったり職員の給与が減るとダメージ直撃しますので、やはり病院現状維持希望勢力。

くわえて、総務省からの交付金も、病院のサイズや職員数ベースで交付額が変わるので、地方政府としても、その打ち出の小づちとなる、病院は大きい方がいいなぁというモチベーションが生まれます。

なので、選挙で過激なこと言って当選した首長さんも、当選後、こういうことを理解されると、トーンダウンして、気づくと現状維持勢力になっているというのをこれまでも見てきました。

それを考えると、結局、例えば総務省の交付金なくなります!とかそういうレベルの過激な事でもない限りは、何も変わらないんでしょうね。

日本国の財政もゆとりがあるわけではないので、「総務省の交付金なくなります!」はいつかは来ると思います。

その時にハードクラッシュしないようにするにはどうするか。

月並みですが、持続可能な医療体制の構築だと思います。

持続可能とは、財政の面からは社会保障の財源だけで支払いができるということはもちろん、現状では法定勤務時間の2-3倍仕事をしている勤務医の労働時間が週40時間以内で、待ち時間が合理的であり(*日本の待ち時間は国際的にはかなり短い)ない、医療の質もそれなり、というような医療の姿でしょう。

これを達成するためには、タスクシフト・多職種連携・業務責任の明確化、そして事務作業はICTとの連携により医療従事者の負担減(対人サービスに注力)ではないでしょうか。

無駄に医療を使わないように、薬局などを利活用したセルフケア・セルフメディケーションも医療機関の負担減のためには必要でしょう。

しかし現状では、市民からすれば、いきなり医者に相談したほうが、早いし安いし、安心、となれば、セルフメディケーションも普及するわけないですよねー苦笑

まぁ、持続可能性がないことを除ければ、日本の今この瞬間の医療制度は、それくらいいいものなんだと思います。

しかし、繰り返しになりますが、今のやり方は続きません。

ハードクラッシュにならないように、今から、持続可能なあるべき姿に変化していかないと。変化はすぐにはできないです。

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