リスくんのマーケティング物語 #17 商売をみんなでやるしくみをつくるには?
[前回のあらすじ]
リスくんはドングリだけで作ったクッキーの「ドングリッキー」を売りはじめてから、実はほとんど一日も休むことなく、いそがしい日々をすごしていました。
むちゅうになり、自分でも気づかない間につかれがたまってしまい、むりがたたり、ついに気を失ってたおれてしまったのです…。リスくんはどうなるのでしょうか?
第十七回は「商売をみんなでやるしくみをつくるには?」です。
商売をみんなでやるしくみをつくるには?
リスくんはおいしゃさんにみてもらい、しばらく休むようにと言われました。
![](https://assets.st-note.com/img/1716855532581-5NtvvzSPnG.jpg?width=800)
すぐにリスくんがたおれてしまったことは話が広がりました。
ときどきドジをするリスくんですが、さすがに今回ばかりは、森の動物のみんなは心ぱいになり、お見まいにやってきました。
* * *
ある日、ねずみのネズくんはリスくんを助けたいと思い、リスくんとドングリッキーをいっしょに売っているモモンガのモモンちゃん、ほかにはねずみのネミちゃん、ハリネズミのハリネちゃん、たぬきのタキくんに「リスくんのために何かできないか」と声をかけ、リスくんのところに集まっていました。
そして、伝説のマーケターとよばれ、いつもリスくんを見まもり、リスくんにマーケティングのことを教えてきたシマリスのシマ先生にも来てもらいました。
みんなは、リスくんの商売を手伝ったほうがいいとは思うものの、どうするかはなかなか意見がまとまりません。
そのようすをリスくんは横になりながら、心ぱいそうにながめています。リスくんもみんなが心ぱいしてくれることにありがたいと思っていますが、何か言える立場にはないとも感じていました。
![](https://assets.st-note.com/img/1716855551911-aG8pSnYKIN.jpg?width=800)
ずっとだまって見ていたシマ先生が口を開いて言いました。「少し立ち止まって、これまでリスくんがやってきた商売のことをせいりしてみようか」
シマ先生のよびかけに、ネズくんたちはシマ先生のほうを見ました。
みんなを見てシマ先生はつづけます。「リスくんはさいしょ、森の中でひろったどんぐりをそのまま売ろうとしていたんだったね。しかしなかまのリスさんたちには『自分たちはすでに どんぐりをもっているので、買いたいとは思わない』と言われた。ほかの動物さんたちもどんぐりにお金をはら払おうという気もちにはならなかった。そこでリスくんはネズくんに話をきき、どんぐりをクッキーにして、それもネズくんが食べやすいように小さくしたことで、はじめてリスくんはネズくんというお客さんができたんだね」
シマ先生が話をひとつくぎったので、みんなはネズくんのほうを見ました。ネズくんは少しはずかしくなり、てれわらいをしました。
シマ先生は話をつづけます。
「その後、リスくんはクッキーを “ドングリッキー” という名前にして、ふつうのドングリッキーだけでなく、”赤ちゃんドングリッキー” と “お年よりドングリッキー” という三つの商品を作り、赤ちゃんとお年寄りに食べやすいようにした。赤ちゃんドングリッキーは、リスくんがハリネちゃんの家に行ったときに、ハリネちゃんと赤ちゃんのことを見ての気づきから生まれたんだったね」
「さいきんはレアな形のクッキーが入ったドングリッキーが高いねだんでも人気とのことだったね。このようにクッキーは変わって、少しずつよくなっていったんだ」
![](https://assets.st-note.com/img/1716855617795-j0f6IjdSYE.jpg?width=800)
シマ先生はひとつこきゅうをおいて、つづけて言います。
「また、クッキーの意味合いもリスくんはつくっていった。さいしょは食べものとしてやお菓子としてのクッキーだったが、”ドングリッキー” という名前にラッキーの意味をこめ、ロゴマークやふくろのパッケージデザインも名前に合うように新しくした。さらに、お菓子や食べものとしてだけでなく、しあわせをよぶおまもりのような存在という意味をみいだした」
「しあわせなエピソードを紹介する “しあわせしんぶん” をドングリッキーにつけることにした。ほかには、葉っぱにメッセージを入れてとおくの森の動物さんたちにも手紙のようにくばるという “しあわせ葉っぱメッセージ” でたくさんの動物さんたちにドングリッキーを知らせたわけだね」
ここまでの話をシマ先生から聞いたことで、リスくんは自分のやってきたことをふりかえることができました。また、ネズくんやハリネちゃんたちは、自分たちが知らなかったドングリッキーのことがわかってうれしそうでした。
シマ先生は、みんなが話についてきていることをかくにんして、また話をはじめます。
「ここまではドングリッキーという商品の話だったが、リスくんはお客さんといっしょに価値 (かち) をつくろうとした。”クッキー作りたいけん” でお客さんとリスくんがいっしょになってクッキーを作る楽しさをわかち合った。あつまりはいつしか “どんぐりクラブ” とよばれるようになり、赤ちゃんからお年よりまでさまざまな動物さんたちが集まって、ドングリッキーを楽しむというコミュニティになった」
「じつはここには、リスくんやモモンちゃんがいつも大切にしている “答えはお客さんの中にある” という考えかたを一つずつやってきたからこそできたことなんだ」
![](https://assets.st-note.com/img/1716855845993-NMME5s2rtS.jpg?width=800)
「答えはお客さんの中にある」。ネズくんはシマ先生の言葉をくりかえしました。
「そうなんだ、ネズくん。リスくんがどんぐりをクッキーにしようときめたのも、ドングリッキーという名前をつけたのも、しあわせをよぶものと意味合いをつけたり、クッキー作りたいけんやどんぐりクラブも、すべてお客さんの中にあった答えからできたものだったんだ」
ここまでの話をシマ先生から聞いたことで、ネズくんたちは自分たちが何をやればいいのかが、少しずつ光がさしてきてわかってきたような気がしました。
ネズくんが言います。「じゃあ、みんなが何をやるかを決めていっしょにきょうりょくし合おうよ!」
「うん、そうだね。自分たちがとくいなことをやるといいかも」とタキくん。
ハリネちゃんは「じゃあ、わたしは何がいいかな」と考えはじめます。
![](https://assets.st-note.com/img/1716855659219-YR6mqvx01B.jpg?width=800)
リスくんのアドバイスも聞いて、みんなのやくわりがこんなふうに決まりました。
どんぐりひろいはハリネちゃん。
クッキー作りはタキくん。
「しあわせしんぶん」や「しあわせ葉っぱメッセージ」を書くのはネミちゃんです。
「クッキー作りたいけん」と「どんぐりクラブ」のリーダーはネズくんになりました。
モモンちゃんはひきつづきドングリッキーをお客さんに売りに行くやくめです。
ドングリッキーを売ったお金のかんりは、リスくんが休みながらもできるので、リスくんができるはんいでやることになりました。そしてシマ先生は全体を見るかんとくのやくめです。
* * *
つぎの日から、さっそくみんなはリスくんの商売をやりはじめました。
はじめはぎこちなかったり、うまくクッキーを作れなかったりと失敗も多くありましたが、おかだいにきょうりょくし合い、少しずつみんなはうまくできるようになりました。ドングリッキーをほしいという動物さんたちが買えるように元にもどっていったのです。
![](https://assets.st-note.com/img/1716855693419-Q1xhXhPQeR.jpg?width=800)
その後、リスくんはみんなのおかげでゆっくり休め、しばらくたってすっかり元気になりました。
そのころにはネズくんたちはやくわりをはたし、見ちがえるように商売をやってくれていました。リスくん一人でやっていた時よりも、もっとたくさんのドングリッキーを作り、多くの動物さんたちにドングリッキーを売ることができるようになっていたのです。
* * *
ある日の夕方、手伝っていたみんなが集まっていた時に、その日に来ていたシマ先生が話をはじめました。
「みんな、ずいぶんたくましくなったね」
「はい!先生」。みんなが声をあわせてこたえました。
「リスくんが一人ですべてをこなせなくなって、それでも無理をしてつづけたことで、リスくんはたおれてしまい、しばらく休むことになってしまった。おそかれ早かれ、リスくんはつかれてたおれてしまうような商売になっていたんだね」
リスくんやほかの動物たちも、しんけんな目でシマ先生の話を聞きはじめました。シマ先生はみんなの顔を見たあとに話をつづけます。
「リスくん、元気になってよかったね。リスくんがはたらけなくなったことで、みんなが力を合わせて商売をするしくみができたんだ」
![](https://assets.st-note.com/img/1716855937723-7YeYM1A2vv.jpg?width=800)
「商売のしくみ、ですか?」。リスくんは言いました。
「そうだ、リスくん。商売とは、お客さんは誰かを決め、お客さんの困りごとやほんとうの気もちを知り、お客さんに価値をもたらし、お金をいただくことでなり立つものだ」
「商売は一人ではなく、なかまといっしょにやることで、もっと大きくなり、たくさんのお客さんによろこんでもらえる。『ありがとう』とお客さんに言ってもらえ、世の中に価値を多く生み出せるということなんだ」
シマ先生はつづけます。「君たちひとりひとりがやったことはすごいことだし、とてもりっぱなことだ。みんながきょうりょくして、商売を長く、楽しくつづけられるしくみ (ビジネスモデル) をつくったということなんだね」
シマ先生からの言葉を聞き、リスくんやほかの動物たちは心がひとつになった気がしました。
(つづく)
シマ先生のかくにんテスト
今回の学びのテストです。( ) の中にふさわしい言葉を入れてください。
商売とは、お客さんは誰かを決め、お客さんの困りごとやほんとうの気もちを知り、お客さんに ( ) をもたらし、お金をいただくことで成り立つ
商売は一人ではなく、なかまといっしょにやることで、もっと大きくなり、たくさんのお客さんによろこんでもらえる。( ) とお客さんに言ってもらえ、世の中に価値を多く生み出せる
みんなが ( ) することで、商売を長く、楽しくつづけられるしくみ (ビジネスモデル) になる
答え
価値
ありがとう
きょうりょく
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?