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ぬい撮り専用のぬいぐるみ 「ぴたっとふれんず」 。新しいニーズに刺さる商品のつくり方と売り方
今回は、新しいニーズに刺さる商品開発とマーケティングについてです。
おもしろいと思ったぬいぐるみを取り上げ、開発プロセスと販売手法から、商品開発やマーケティングに学べることを解説しています。よかったら最後までぜひ読んでみてください。
ぬい撮り専用のぬいぐるみ 「ぴたっとふれんず」
ご紹介したいのは、サンリオのぬいぐるみ 「ぴたっとふれんず」 です。
![](https://assets.st-note.com/img/1639952200854-dMQew7sqES.jpg?width=1200)
以下は、日経新聞からの引用です。
サンリオは2022年1月、自立型のぬいぐるみ 「ぴたっとふれんず」 の第3弾を発売する。
好きなぬいぐるみと旅行やカフェに出かけて写真を撮る 「ぬい撮り」 需要に特化した商品で、第1弾は即完売。インスタグラムから着想を得た "ありそうでなかった" 商品だ。
![](https://assets.st-note.com/img/1639952172476-xgL95o4qu8.jpg?width=1200)
開発ストーリー
開発の背景を見てみましょう。
新型コロナウイルス禍で外出自粛が広がった20年4月ごろ、商品企画部の伊藤志乃さんは、インスタグラム上にぬいぐるみとカフェや散歩に出かける写真を投稿するサンリオファンを見つけた。「ぬい撮り」 と呼ばれ、若い女性を中心に多くの投稿がある。だが柔らかいぬいぐるみを撮影のため固定するのは難しい。
「写真映えするように、自立するぬいぐるみがあれば喜ばれるのでは」 。早速、月に1度の会議で提案してみた。
ハローキティなど人気キャラクターの足に磁石を埋め込み、付属の台座にくっつくシンプルな仕組み。「ぬい撮り需要は本当に広がっているのか」 「新鮮味を打ち出しにくい」 などの意見も出たが、「必ずニーズはあります」 と力説した。
結局、1万個限定の試験販売が決まり、商品化に向けた試行錯誤が始まった。
研究を重ねてヒット商品に
今の引用の最後のほうで 「足に磁石を埋め込み、付属の台座にくっつくシンプルな仕組み」 とあったので、簡単にできそうなイメージを持つかもしれません。
しかし、商品化までには試行錯誤がありました。
「ぬい撮り」 はかわいく写ることが何より大事。キャラクターの表情が映える角度を求め、インスタグラムの写真や、「ぬい撮り」 好き社員の声をもとに研究を重ねた。
合わせてぬいぐるみに洋服を着させたり、スプーンやフォークを持たせるなど小物を複数用意。自分の世界観で写真を撮れる楽しみを味わってもらうことをコンセプトに商品ラインアップを決めた。
21年4月に第1弾の限定発売を公式ウェブサイトで告知すると、店舗に行列ができるほどの人気に。1つ2530円の商品は EC (電子商取引) サイトでも完売するなど、「想像以上の反響があった」 (伊藤さん) 。インスタグラム上には、「ぴたっとふれんず」 を使った写真の投稿が相次いだ。
すぐに第2弾として約3万個の発売が決まった。「今回の商品でぬい撮りに初挑戦した人もいたことがうれしい」 と伊藤さんは語る。
![](https://assets.st-note.com/img/1639952140830-WZ8RLWcdRF.jpg?width=1200)
絞った利用シーンに合わせた商品化
では 「ぴたっとふれんず」 について、本質を商品開発やマーケティングの観点から掘り下げてみましょう。
一言で表現すれば、ぴたっとふれんずは 「絞った新しい利用シーンを狙った商品化」です。
新しい利用シーンとは、一部のサンリオファンがやっていたカフェや散歩にぬいぐるみと出かけ、写真をインスタに投稿する 「ぬい撮り」 です。これは、メーカー側のサンリオは当初は想定していなかった 「新しいぬいぐるみの使われ方」 でした。
ぬい撮りの 「不」 の解決
ぬいぐるみを写真に映える構図のために立たせたりポーズを作るのは、サンリオには想定外の用途でした。
作り手が想定していないので、従来のぬいぐるみではうまく立たせられないなど、ぬい撮りをしたい利用者には不 (不便, 不都合, 不満) があったわけです。
そこでサンリオは、ぬい撮りに特化した 「ぬい撮り専用のぬいぐるみ」 を開発し、商品化したのです。
マーケティングの視点で言えば、ターゲット顧客を設定しただけではなく、「ターゲット利用シーン」 まで絞って明確にしました。これが 「ありそうでなかった商品」 につながなり、ここに 「ぴたっとふれんず」 のヒット理由があります。
学べること
では最後に、「ぴたっとふれんず」 から学べることを整理をしてみましょう。
ぴたっとふれんずの商品化と人気になった要因から学べるのは、まとめると次の3つです。
✓ ぴたっとふれんずからの学び
想定外の新しい利用シーンの発見 (邪道として排除せずビジネス機会とした)
ターゲット利用シーンまで絞っての商品化 ( 「~ をする時」 のための商品)
スモールスタートでの PMF 検証
3つ目の学びポイントについては、次で補足しますね。
スモールスタートでの PMF 検証
サンリオは、スモールスタートという 「販売を小さく始める」 というアプローチで、ぬい撮り専用のぬいぐるみが消費者に受け入れられるかを検証しました。
PMF とはプロダクト開発の専門用語ですが、Product Market Fit の略です。意味は、プロダクト (商品やサービス) が市場にフィットすること、つまり見込み客に受け入れられ、お金を払ってでも欲しいと思ってもらえる状態が PMF です。
ぴたっとふれんずの最初の販売は1万個限定で、公式ウェブサイトで告知をした程度でした。即完売という人気に手応えをつかみ、第2弾で3万個、次に第3弾と進めています。
少しずつ販売規模や情報発信量を増やしていき、リスクヘッジをしたわけです。
ぬい撮りという利用用途を絞っているからこそ、ニッチすぎないか、自社のビジネスが成立する規模感なのかを小さく始めてテストをしました。
ぴたっとふれんずからは、新商品の販売プロセスにも学びがあります。
まとめ
今回はサンリオのぬい撮り専用のぬいぐるみ 「ぴたっとふれんず」 を取り上げ、ヒット理由と学べることを見てきました。
最後にまとめです。
ぴたっとふれんず
ぬい撮り専用で、写真映えするように自立するぬいぐるみ
絞った新しい利用シーンを狙った商品化
ターゲット顧客だけではなく、「ターゲットを利用シーン」 まで絞った
ぴたっとふれんずからの学び
想定外の新しい利用シーンの発見。邪道として排除せずビジネス機会とした
ターゲット利用シーンまで絞っての商品化。「~ をする時」 のための商品
スモールスタートでの PMF 検証。個数や露出を限定する販売から小さく始め、新しいニーズに応える商品が市場に受け入れられるかをテストした
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