リスくんのマーケティング物語 #12 新しい商品をつくるためには?

[前回のあらすじ]

ハリネズミのハリネちゃんの家で、リスくんはあることに気がつきました。
ハリミちゃんが、赤ちゃんにリスくんの「ドングリッキー」をつぶして、やわらかくしている食べさせていたのです。

リスくんはそれならばと、自分でも赤ちゃん用のドングリッキーを作ろうと思いました。
しかし、そうはかんたんにはいきません。何度も失敗をし、なかなかうまくいきませんでした。

くろうのすえ、ついに赤ちゃんドングリッキーが完成しました。

第十二回は「新しい商品をつくるためには?」です。


新しい商品をつくるためには?

さっそくつぎの日、リスくんはハリネちゃんのところに赤ちゃんドングリッキーを持って行きました。

「わあ、リスくんありがとう!」ハリネちゃんはおおよろこびです。「赤ちゃんの食べる量はそんなに多くはないけど、この子がおなかをすかせたときに、すぐにやわらかくして作ってあげられないこともあったの」

おおよろこびのハリネちゃん

もうひとつハリネちゃんがよろこんでくれた理由がありました。
自分の子どもに食べさせるためとはいえ、リスくんがせっかく作ってくれたおまもりのようなドングリッキーをこなごなにしてくだくことに、なんとなくうしろめたい気もちを感じていたことです。
「できるなら、ドングリッキーはそのままの形で食べたいと思っていたの」とハリネちゃんは言いました。
ハリネちゃんはドングリッキーと赤ちゃんドングリッキーの両方を買ってくれました。

リスくんの赤ちゃんドングリッキーは、ほかのお母さんたちにも人気になりました。
ハリネちゃんがハリネズミのママ友に話をしてくれ、そこからハリネズミだけでなくほかの動物たちにも口コミをとおして、少しずつ広がっていきました。
自分の子どもにはあんしんできるおいしいものを食べさせたいという思いは、多くの動物たちが持っていた同じ気持ちだったのです。

* * *

リスくんは、べつの新しい発見をしました。
それはたぬきのタキくんの家に行った時のこと。タキくんの家でも赤ちゃんドングリッキーを赤ちゃんに食べさせていました。
タキくんの家はまだ小さな赤ちゃんだけでなく、たぬきのおじいさんとおばあさんも赤ちゃんドングリッキーをおいしく食べてくれていたのです。

えがおで話すタキくんのおじいさんとおばあさん

リスくんがくわしく話を聞くと「ドングリッキーはおいしくて好きなんだけど、クッキーが少しかたいので、私たちにとっては、かむのが少し大変だったのよ。じつはちょっとがまんしながら食べていたのよね」
赤ちゃんドングリッキーはやわらかく、「味は今までのドングリッキーと同じなので、自分たちにはこっちのほうが食べやすいわ」とうれしそうに言ってくれました。

* * *

リスくんはシマ先生のところに、うれしいできごとを伝えに行きました。

「こんにちは、リスくん。何かいいことがあったという顔をしてるね」。シマ先生はいつものように、あたたかくリスくんをむかえてくれました。

リスくんは、これまでのいきさつをシマ先生にくわしく話しました。
「リスくん、君はまた一つ、商売で大事なことを学んだみたいだね」。
「大事なことですか?」
「そうだ、リスくん」。シマ先生はリスくんの目をまっすぐ見ながらつづけます。「リスくんはいろいろなお客さんのところに行き、お客さんと話したことでお客さんから学んだ。そこでリスくんが見つけたことは何だったかな?」

「はい、先生。ぼくは、"おいしく食べやすいものを自分の子どもに食べさせたい" というハリネちゃんのために、ハリネちゃんの赤ちゃんがそのまま食べられる赤ちゃんドングリッキーを新しく作りました。ハリネちゃんが毎回、クッキーをすりつぶしてやわらかくしなくてもすむようにと思ったからです」
「そうだね、リスくん。お客さんの立場になって、お客さんにとってよいと思うことをしたんだね」
「そうです」

「ではそのつぎに、リスくんは何を発見したんだったかな?」
「つぎは…、タキくんのおじいさんとおばあさんの話を聞いて、赤ちゃんドングリッキーのほうを食べていることを知りました」
「そうだね。それが何を意味するかわかるかな、リスくん」
「何を意味するかですか?」リスくんはすぐには答えられませんでした。
シマ先生はつづけます。「リスくんが赤ちゃんドングリッキーとして新しくつくった商品は、お年よりの動物さんたちが "やわらかくかみやすい食べものを食べたい" というのぞみもかなえるものだったということなんだ」

お客さんののぞみに気づいたリスくん

リスくんは、あらためて自分がやったことの意味合いに気づきました。
「そうか。ということはもしかして…?」
「リスくん、何かまた気づいたかな?」
「シマ先生、お年よりの動物さんたちにも食べやすいようなドングリッキーを、赤ちゃんドングリッキーとはべつに用意するのはどうでしょうか?」

シマ先生はリスくんに目でうながします。
リスくんはいきおいよく話します。「クッキーは赤ちゃんドングリッキーと同じにして、袋やメッセージはお年よりのお客さんに気に入ってもらえるようにしたいです。先生はどう思いますか?」

「リスくん、お年よりへのドングリッキーがお客さんに気に入ってもらえるかは、わたしからは答えを言うことができないよ。なぜでかわかるよね、リスくん」
「あ! 答えはお客さんの中にあるからですよね」
「そのとおりだ、リスくん。お客さんの中に答えがあるんだ」。シマ先生はうれしそうに言いました。

リスくんは、「赤ちゃんドングリッキー」と「お年よりドングリッキー」の二つに商品をわけることに決めました。これでリスくんの商品は、ふつうのドングリッキーと合わせて合計で三つです。

ドングリッキーは三つの商品に

リスくんはマーケティングで大事な、お客さんを理解し、お客さんが本当にのぞんでいることを見つけ、そののぞみをかなえる商品をつくるということを学んだのです。

 (つづく) 

シマ先生のかくにんテスト


今回の学びのテストです。(   ) の中にふさわしい言葉を入れてください。

  1. お客さんの商品の使いかたを知り、お客さんが (    ) を見つけ、そののぞみをかなえる商品をつくるということ

  2. 商品が、思っていたお客さんとはちがうお客さんが気に入ってくれることもある。たとえば、赤ちゃん用の商品をお年よりのお客さんが使ってくれるなど。なぜなら、それぞれのお客さんの根っこには同じ (    ) があるから

  3. 答えはお客さんの中にある。新しい商品をよいと思うかを決めるのは (    ) 


答え

  1. 本当にのぞんでいること

  2. のぞみ

  3. お客さん

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