リスくんのマーケティング物語 #9 ライバルに勝つためには?

[前回のあらすじ]

きつねがリスくんのクッキー「ドングリッキー」をマネし、同じようなクッキーを安いねだんで動物たちに売りはじめました。

少なくない動物たちが、リスくんではなくきつねからクッキーを買うようになり、リスくんはお客さんを取られてしまいました。

第九回は「ライバルに勝つためには?」です。


ライバルに勝つためには?

リスくんは「お客さんの中に答えがある」というシマ先生の教えを思い出しました。

さっそくリスくんは、ドングリッキーを今も買ってくれている、ねずみのネズくんやネミちゃん、ハリネズミのハリミちゃんのところに、話を聞きに行くことにしました。

さいしょにネズくんのところに行き、つぎに同じくネミちゃん。
そのあとに、ハリネズミのハリミちゃんやにもくわしく聞かせてもらいました。

ハリミちゃんの話を聞くリスくん

ほかには、前はドングリッキーを買っていたものの、今はリスくんからは買ってくれていない動物さんたちにも何人か話を聞かせてもらいました。
「話を聞かせてくれてありがとう」。リスくん時間をとってくれたぜんいんに、お礼にドングリッキーを一つプレゼントしました。

* * *

数日かけていろいろと話を聞いてわかったのは、今もリスくんのドングリッキーを買ってくれるお客さんと、もう買ってはいない動物さんたちのちがいでした。
大きくとらえるとパターン (決まり) がありました。

ネズくんやハリミちゃんたちは、ドングリッキーのことを食事やお菓子として食べるだけではなく、それ以上の "意味合い" を見いだしてくれていました。ドングリッキーのことを好きでいてくれ、おまもりのようにして大切にあつかっていたり、家においてあるだけでどこかしあわせになれるような気持ちになるとのことでした。
こうした価値 (かち) をネズくんたちはドングリッキーに感じていたのです。みんな同じように「リスくんが作るドングリッキー “が” いい」と言ってくれました。

メモを見かえして考えているリスくん

一方の前は買ってくれていた動物さんたちにとっては、ドングリッキーは食べものの一つにすぎませんでした。
べつにどのクッキーでもよく、もっといえばクッキーじゃなくても食べられればいいという感じでした。ドングリッキーじゃないとダメというとくべつな "えらぶ理由" はなかったのです。
ねだんの安いきつねのクッキーが売られはじめたので、今はそちらを買うようになっていました。

いろいろと動物さんたちに話をくわしく聞き終えた日の夜、リスくんはメモをしたノートを何度も読みかえしました。
メモには、話を聞いたときに書いたことだけではなく、あとから思いついたこともメモにくわえていたので、かなりのページ数になっています。
「どうすればいいのかなぁ」。リスくんはすぐにはよいアイデアは思いつきませんでした。

* * *

つぎの日、いつものようにリスくんはドングリをひろいに行きました。
「ふぅ、今日もたくさんドングリをとれてよかった」。リスくんは少しやすむために、木かげにあった木のえだにすわります。しばらく森の木や草をながめていましたが、しだいにリスくんはドングリッキーをこれからどうするかを考えはじめていました。

木かげで考えるリスくん

リスくんはシマ先生が言っていたことを思い出します。
「リスくんにしかできないこと、同じようなクッキーをマネしてきたライバルにはできないこと。ここにヒントがあるんだ」「そして、お客さんによろこばれることは何かを考えてみるといい」。シマ先生はこんな問いかけをリスくんにのこしていました。

ぼくがとくいなこと、ライバルにはできないこと、お客さんがよろこんでくれること…」。リスくんはなんども同じ言葉をくりかえしました。ひろったドングリを手でさわりながら、リスくんは頭のなかの考えを少しずつととのってくるような感じがしました。

「そうだよ」。リスくんは思わず声を出して言います。
答えはお客さんの中にある」「ネズくんやネミちゃん、ハリミちゃんから話を聞いてわかったように、ドングリッキーのことを食べものとしてだけでなく、もっと好きでいてくれるように、まだできることはあるはずだ」。
リスくんはあらためて思いはじめました。「ほかの動物さんにも、もっとしっかり伝えてみるのがいいのかもしれない」。

アイデアを思いついたリスくん

思えば、ドングリッキーは名前のなかに、"ラッキー" からー文字を変えて入れたことで名前を「ドングリッキー」 にしたこと、クッキーの袋に「しあわせをよぶクッキー」と書いたりもしたものの、クッキーの名前の意味をちゃんと伝えていたことはありませんでした。
袋のメッセージも動物さんたちは見ていなかったかもしれません。

「よし、ドングリッキーの袋のなかに、おてがみカードを入れてみよう」。
リスくんが森の中で見たり聞いたことなどから、しあわせエピソードをつづった小さなカードをつけてみようと思いました。

「きつねのクッキーを買うようになった動物さんたちのみんなが、すぐにお客さんとして戻ってきていることはないかもしれない」「でも、でもひとりでもドングリッキーのよさを知ってもらって、またお客さんになってくれるといいな」。
リスくんは、お客さんの数は多くなくてもいいから、一人ひとりのお客さんを大切にしようと決めました。

家にもどったリスくんは、さっそくドングリッキーにつけるおてがみカードを「しあわせしんぶん」とすることにしました。
そのままリスくんは時間がたつのをわすれ、カードに書くメッセージや言葉をまずはノートにすべて書きだしていきました。

「しあわせしんぶん」を書くリスくん

 (つづく) 

シマ先生のかくにんテスト


今回の学びのテストです。(   ) の中にふさわしい言葉を入れてください。

  1. お客さんにとって、その商品がいいという (    ) があれば、買ってもらえる。なければ、ほかの商品にいってしまう

  2. お客さんの中に答えがある。どうすればいいかわからなくなったときは、(    ) に行って話を聞いてみる

  3. 自分がとくいなこと、ライバルにはできないこと、お客さんが (    ) 。この三つが合わさったところに商品が選ばれるようになるヒントがある


答え

  1. えらぶ理由

  2. お客さんのところ

  3. よろこんでくれること

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