AI が AISAS を半自動化する未来。「AISAS × AI」 から考えるマーケティングへの進化
AI が普及することで、生活者の買いもの体験はどう変わるのでしょうか?
AI への期待は高まっていますが、一方でリスクや限界も無視できません。
今回は、AI がもたらすこれからの購買や消費行動、そしてマーケティングのあり方を探求します。
AI が及ぼす購買行動の変化
購買行動モデル AISAS
マーケティングには、AISAS (アイサス) というフレームがあります。
プロセスを5つの英語の頭文字からとった購買行動モデルです (AIDMA が心理のフローで AISAS は 「検索」 以降は行動フローです) 。
Attention 認知
Interest 興味
Search 検索
Action 購入
Share 共有
まとめると、商品のことを新しく知り、興味を持てばさらに検索して調べ、購入し、商品の体験が良ければ SNS などで共有するというプロセスです。
AISAS は AI でどう変わるか?
今回、掘り下げていきたい論点は 「AI が普及することで消費者の購買行動はどのように変わるのか」 です。
このテーマについて、AISAS を使って考察していきます。
結論めいたことから先にお伝えすると、従来のマーケティングで言われた AISAS において、AISAS がなくなるというよりも、これからは 「AISAS の5つのすべてにおいて AI が入り込んでくる未来」 を想像します。
AI による AISAS の半自動化
AI の技術が進化し、導入が進む中で、AISAS モデルは 「AISAS × AI」 という形に変わるでしょう。AISAS の5つの要素のすべてにおいて AI が影響力を発揮するわけです。
具体的には、AI によって商品やサービスへの Attention 、すなわち注目が自然に起こり、その商品やサービスに対する認知が高まります。さらに、AI により Interest という商品への興味や欲求が掻き立てられ、AI との対話を通じて商品の情報検索が進められるのです。
もう少しイメージを膨らませると、たとえば過去の購買履歴や閲覧履歴をもとに、AI がその人に最適な商品をおすすめすることはもちろん、さらには自分が注文したもの以外にも、AI の判断でおすすめ商品が送られてくるというような世界です。消費者は自分が欲しいものや必要なものだけを手元に残し、不要なものは送り返すという新しい購買体験です。
これが意味するのは、広告やマーケティングで言われてきた AISAS において、Attention や Interest 、さらには購買という Action までが AI により半自動的に進むということです。AI が判断したおすすめの商品が送られてきて初めてその存在を知り、興味を持ち、使ってみたり、AI によりサービス登録も済んでいるという AISAS の各段階が一気に展開するのです。
こうなると従来のマーケティングや広告の概念、その役割は根底から覆されるでしょう。
AI 時代のマーケティング
では、AI により生活者の購買行動が変わる中で、マーケティングはどのように進化し、お客さんの変化に適応すべきなのでしょうか?
マーケティングの進化
AI によって、お客さんとのコミュニケーションの接点と方法が多様化します。たとえば、AI を利用したチャットボットを導入することで、24時間365日、お客さんからの問い合わせにリアルタイムで対応することができます。
AI のデータ解析能力を活かし、お客さんの行動パターンや好みを深く理解することで、レコメンデーションも精度が向上します。AI はお客さんの過去の行動や嗜好をもとに、人間ではできないような早さで的確な商品やサービスを提案することができるでしょう。
AI の力を取り入れることで、パーソナライゼーションやカスタマイゼーションが洗練されます。お客さん1人ひとりに合わせた商品やサービスを提供することで、お客さんの満足度を高めることにつながります。
さらに、カスタマーリレーションも変わるでしょう。AI を活用することでお客さんとの関係をより深められ、AI は長期的な関係性の構築に寄与します。
AI のリスク
AI の多くの利点と進化が言われる一方で、AI のリスクや限界にも目を向ける必要があります。
AI は入力データから学習し、判断を下しますが、データが偏っていたり質が低ければ、AI の判断も誤ったものとなりかねません。たとえば AI からのお客さんへのレコメンデーションや分析結果が正確でなくなってしまいます。
セキュリティの問題もあります。顧客データの保護と扱いへの対策が十分でないと、データ漏洩や不正利用の可能性が高まり、万が一起こってしまうとお客さんや社会からの信頼を失います。
未来を切り開くマーケティング
AI の進化に合わせてマーケティングの役割やアプローチも変わっていきますが、一方でマーケティングの中心にある 「お客さんとの関係構築」 は変わりません。
AI はあくまでツールです。AI 技術を活用し効率的なマーケティング活動を行いながら、お客さんとの人と人との関係性を大切にし、AI がアウトプットした情報だけで判断せず、直接お客さんに会い、振る舞いを見たり声に耳を傾けることが重要です。
AI は確かに私たちの意思決定をサポートしてくれる強力なツールですが、その情報や提案だけをもとに判断するのは適切ではないでしょう。人としての感性や直感を大切にし、考えを巡らせ、様々な仮説とストーリーを考えシミュレーションを繰り返すことで、より良い結論にたどり着くことができます。
AI だけでなく、人間のマーケターの知識や情熱を持ち合わせて、両方を最大限に活用することが大事です。AI と人間の知と想いを結集させることで、未来のマーケティング活動に新たな価値をもたらすことができます。これからの時代においても、マーケティングの力で未来を切り開いていけるのです。
まとめ
今回は、AI が生活者の購買行動をどのように変え、それに合わせてマーケティングはいかに進化するかテーマで考察しました。
最後にポイントをまとめておきます。
AI の導入で AISAS モデルは 「AISAS × AI」 に進化する。商品への認知・注目や興味、さらには購入までも AI によって半自動的に進む買いもの体験がもたらされる
AI を活用することで、リアルタイムの顧客対応、パーソナライゼーションやカスタマイズが洗練されたレコメンデーション、お客さんとの深い関係構築が可能となる。ただし、データの偏りやセキュリティ問題など AI のリスクや限界も考慮する必要がある
お客さんとの人と人との人間関係を中心に置き、マーケターの感性や直感を活かしながら、AI と人間の知識と想いを結合することで、これからのマーケティング活動に新たな価値をつくれる
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