マイボトルでの日本酒サブスク 「カヨイ」 。絆を深めるユーザー体験のつくり方
今回は、あるサブスクサービスを取り上げ、マーケティングに学べることを掘り下げます。
✓ この記事でわかること
江戸時代の販売方法を現代風にアレンジした日本酒サブスク
マイボトル (通い徳利) でのユーザー体験からのファン育成
マーケティングに学べること
この記事を読んでいただきたいと思うのは、マーケティングのお仕事をされている方です。
具体的には、商品やサービスの売り方、付加価値を高める方法、ブランディングを考える役割にある方を想定しています。
日本酒のサブスクサービスの事例から、ファンを育てブランド化につなげるユーザー体験のつくり方を解説していきます。よかったら最後までぜひ読んでみてください。
マイボトルでの日本酒サブスク 「カヨイ」
ご紹介したいのが、新潟県の酒蔵である吉乃川が始めた日本酒のサブスクです。サービス名は 「カヨイ」 です (公式サイトはこちら) 。
カヨイの特徴は、自分専用のマイボトルで定期的に日本酒が送られてくることです。
ボトルが空になれば、利用者は吉乃川にボトルを返送します。同じマイボトルに新しい日本酒が入れられ、送られてくる仕組みです。
江戸時代の販売方式を現代風にアレンジ
サービス名の 「カヨイ」 は、江戸時代の 「通い徳利」 からきています。
江戸時代には、お店の名前や商標が書かれた徳利にお酒を詰めてお客に渡し、徳利が空になったら代金と引換に再びお酒を注ぐという販売方式がありました。これが 「通い徳利」 で、お客は自分の徳利を手に繰り返し酒蔵や酒屋に通っていました。
カヨイは、江戸時代の 「通い徳利」 という販売方法をサブスクで再現しているのです。
マイボトルを使う意味合い
ここからはマーケティングの観点からカヨイを見ていきましょう。マイボトルを活用している意味を掘り下げます。
一言で結論を言えば、マイボトルでのユーザー体験が、お客さんとの絆を深めファンを育成します。
通常の日本酒はガラスの瓶に入れられ、空になれば資源ごみとして回収されます。一方のカヨイでは自分専用のステンレスのマイボトルが使われます。ちなみにボトルには、固有のロットナンバーが刻まれ入っています。
実際のユーザー体験は次のようになります。
こうした一連の行為によって1つ1つの積み重ねから、実感として 「自分だけのサービス」 という思い入れが強くなります。
以上のようなユーザー体験 (ロットナンバーを目にする, マイボトルから日本酒を入れて楽しむ, マイボトルの送付と返送) 、おいしい・愛着などのカヨイへの感情移入によって、カヨイというサービスは他にはない特別な存在になっていくわけです。
これがマイボトルを使った江戸時代の通い徳利の再現で、「あなただけのサービス」 を提供しファンになってもらう仕組みです。
マーケティングに学べること
では最後に、マイボトルでの日本酒サブスク 「カヨイ」 から学べることを一般化して整理してみましょう。
マーケティングの観点から学びを一言で表現すると、「あなただけの商品・サービス」 を顧客にユーザー体験から実感してもらい、商品やサービスへの愛着や絆を強める方法です。
このアプローチは、大量生産・大量販売ではないプレイヤーには有効です。大手や強者ではなく弱者だからこその大手プレイヤーとの差異化と独自化につながります。
顧客ごとのカスタマイズは、全ての企業に有益な方法というわけではありませんが (例: マスの顧客に均等に商品やサービスを提供する企業にはカスタマイズは相性が良くない) 、絆を深めるユーザー体験を提供し顧客との心理的距離を縮め、ブランド構築ができます。
まとめ
今回はマイボトルを使った日本酒サブスクの 「カヨイ」 から、マーケティングに学べることを見てきました。
最後にまとめです。
マイボトルでの日本酒サブスク 「カヨイ」
自分専用のマイボトルで定期的に日本酒が手元に届く
ボトルが空になればボトルを返送し、同じマイボトルに新しい日本酒が入れられ送られてくる
江戸時代の販売方式 (通い徳利) を現代風にサブスクで再現している
マイボトルを使う意味合い
マイボトルからのユーザー体験が、お客との絆を深めファンを育成する
自分だけというユーザー体験と愛着からカヨイは他にはない特別な存在になっていく
マーケティングに学べること
「あなただけの商品・サービス」 を顧客にユーザー体験から実感してもらい、商品やサービスへの愛着や絆を強めよう
大量生産・大量販売ではないプレイヤーには有効
絆を深めるユーザー体験を提供し、顧客との心理的距離を縮め、ブランド構築につなげる
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