リスくんのマーケティング物語 #13 新しいお客さんに知ってもらうためには?

[前回のあらすじ]

お客さんの「ドングリッキー (リスくんが作るどんぐりだけを使ったクッキー) 」の食べかたには、思いもよらない使われかたがありました。

リスくんは「答えはお客さんの中にある」にしたがい、赤ちゃんドングリッキーとお年より向けのドングリッキーを新たに作りました。

第十三回は「新しいお客さんに知ってもらうためには?」です。


新しいお客さんに知ってもらうためには?

赤ちゃんドングリッキーにつづき、お年よりドングリッキーもお客さんが買ってくれるようになりました。
お母さんたちは、今まではドングリッキーを赤ちゃん用にすりつぶしてやわらかくしたり、お年よりの動物も「もう少しやわらかければいいのに」と心のどこかで思っていたようです。

「ありがとう。リスくん」

「リスくん、いいものを作ってくれてありがとう」
お客さんのかくれたのぞみやちょっとした不べんさをなくしてくれた “赤ちゃんドングリッキー” や “お年よりドングリッキー” は、お客さんからよろこばれました。

* * *

リスくんはドングリをひろいに行き、クッキーを作ったり、お客さんのところに買ってもらいに行くのに大いそがしです。

そんななか、リスくんは時間をつくり、シマ先生の家に行くことにしました。シマ先生は今はしりぞいていますが、かつては “伝説のマーケター” と言われたりっぱなシマリスです。
リスくんは新しくふやした赤ちゃんドングリッキーとお年よりドングリッキーの二つともお客さんにありがたがってもらえていることをシマ先生に伝えました。

シマ先生はそれを聞き、うれしそうに言いました。
「リスくん、お客さんから “ありがとう” と言われるということは、リスくんは自分の作った商品をとおしてお客さんに価値 (かち) をもたらしたということなんだ」

「はい、先生」
「商売というのはつきつめると、お客さんによろこんでもらい、ありがとうを集めて、それに見合ったお金をお客さんからいただくものなんだ。そして、そのお金でまた商品を作ることで、商売をつづけることができるんだよ

リスくんに教えるシマ先生

リスくんはいつものように、シマ先生の言ったことをノートにとっています。
シマ先生はリスくんがノートに書き終わったところを見てつづけました。
「リスくん、リスくんはこれからどうしたいかな?」

「これからですか?」
リスくんにはシマ先生の問いかけに、自分なりの考えがないことに気づきました。
ここまでリスくんはただ、お客さんの動物さんたちにドングリッキーをおいしく食べてほしい、商品にこめた “しあわせをよぶクッキー” のように、少しでもお客さんにしあわせになってほしいと思って、けんめいに毎日つづけてきただけだからです。

「シマ先生、もっと多くの動物さんたちにドングリッキーを手にとってもらいたいです」
リスくんは思ったことを、すなおにシマ先生に伝えました。

「リスくん、そう考えるのは商売をするにあたってとても自然なことだよ」
「では、リスくん。つぎに問いかけたいのは、どうすればもっと多くの動物さんがお客さんになってくれるだろう?」

リスくんは考えましたが、わかりませんでした。
しばらく二人ともだまったままでしたが、シマ先生が先に口をひらきました。

「お客さんになってもらうためには、まずはリスくんのドングリッキーという商品のことを知ってもらうところからなんだ。どんなによい商品でも、お客さんに知られていなければ、買ってもらうことはできないからね
「はい、たしかにそうです」

「ではどうするか」。シマ先生はつづけます。「今までリスくんは森の動物さんたちに会いに行き、ドングリッキーのことを見せたり、ほかには買ってくれたねずみのネズくんやハリネズミのハリネちゃんが、いろいろな動物たちにドングリッキーのことを伝えてくれたわけだね」

ひとくぎりをつけたあとに、シマ先生は言いました。
「お客さんをふやすためには、まだリスくんのドングリッキーを知らない動物さんたちに知ってもらうことからだ。それも今までとはちがうやりかたで、リスくんが会いにいかなくくても伝えられるような手がよいかもしれないね」

「シマ先生、ありがとうございます。ぼくは考えたこともありませんでした。今日はもうこんな時間なので、帰って考えてみます」
リスくんはシマ先生にていねいにお礼を言い、家にもどりました。

リスくんはその夜、シマ先生に教わったことをノートに書きながらふりかえっていました。
「お客さんをふやしたい。そのためにはまずは知ってもらう必要がある。今までとはちがうやりかたでドングリッキーのことを伝えたい…。どうすればいいのかな?」

どうすればいいか考えているリスくん

その日はよいアイディアがなかなか思いうかばなかったので、リスくんはもう寝ることにしました。

* * *

よくあさ、リスくんはいつものようにドングリをとりに行きました。たくさんひろえたので休けいをしていると、ふと木かげに一枚の大きな葉っぱが落ちていることを見つけました。

リスくんはいいことを思いつきました。
「そうだ!この葉っぱにドングリッキーのことを書いて、森のいろいろな動物さんたちにくばりに行ってみよう」

「葉っぱには、”これを読んだらつぎの動物さんに渡してください” みたいなメッセージを入れて、この葉っぱからもしあわせが広がっていくようにしたら、よろこばれるかもしれない」
リスくんは葉っぱにドングリッキーのことを書き入れ、てがみのように動物から動物へつぎつぎにわたっていくことを考えたのです。
「これならぼくが会いに行かなくても、葉っぱがドングリッキーのことを広くみんなに知らせてくれるはず」

さっそく家にもどったリスくんは、集めてきた葉っぱを使って、てがみをつくりはじめました。

葉っぱにしあわせメッセージを書いているリスくん

こうしてできた何枚かの「しあわせ葉っぱメッセージ」は、リスくんのいる森の外にいる動物さんたちまで、少しずつドングリッキーのことを知ってもらえるようになっていくのです。

 (つづく) 

シマ先生のかくにんテスト


今回の学びのテストです。(   ) の中にふさわしい言葉を入れてください。

  1. お客さんから “ありがとう” と言われるということは、商品をとおしてお客さんに (    ) をもたらしたということ

  2. 商売とは、お客さんによろこんでもらい、ありがとうを集めて、それに見合った (    ) をお客さんからいただくこと

  3. そして、そのお金でまた (    ) を作ることで、商売をつづけることができる

  4. 新しいお客さんをふやすには、まずは商品のことを (    ) ところから。どんなによい商品でも、お客さんに知られていなければ、買ってもらうことはない


答え

  1. 価値 (かち) 

  2. お金

  3. 商品

  4. 知ってもらう

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