第二十三話 いざ!真剣勝負姉妹対決

「では、はじめっ!」
ルーカスの声が響いた。

「ケイト、私も姉としての矜持がある、全てを受けた上で打ち負かして見せよう」
ブレンダはケイトリンに言った。

「はい、お姉様。では、全力ですべてを出し切ってみせます」
ケイトリンはそう言い切ると、小太刀を右手に持ち正眼に構え、空いた手を顔の前で握り「せーのっ!」という些か真剣勝負には気の抜けた掛け声と共に前に突き出した。

手を突き出すと同時にブレンダの数メートル手前の土が盛り上がったかと思うと拳大の無数の石礫が勢いよくブレンダに向かって飛んでいった。

「にゃにゃ!?あのコいつの間にあんなことできるようになったの?」
ミケが驚きの声を上げた。

「あら〜あの子、詠唱なしで魔法が使えるようになってたのを隠してたのね〜」
マヤも知らなかったようだ。

「!!」
ブレンダはまっすぐ向かってきた石礫を左に避けたが、更に驚きが待っていた。

『ガキン!』
金属と金属がぶつかり合う音が響いた。
ケイトリンが避けた先に回り込んでいて小太刀で切りつけ、それをブレンダが盾で防いだ音だった。

「くっ!」
ブレンダは盾でそのまま弾き飛ばそうとしたが、もはやケイトリンは離れた位置にいた。

「……」
なにも言わず正面に構え合う二人は次の手をどう打つか、先の手を読み合っているようだ。

「ふっ!」
息を少し吐き出すのと同時にブレンダが詰め寄った。

「えい!」
ケイトリンが掛け声をかけるとともに、ブレンダの行く手を土の壁が阻んだ。

「はっ!」
ブレンダは勢いを殺さず、剣でその土壁に剣を振り、直後盾で殴った。
土壁はケイトリンの方に向かって盾によって押し倒され、土壁を飛び越えてブレンダが迫ってきた。

「え!切れた!!」
ブレンダの剣で土壁が土壁が切れたことに驚くケイトリン。
予想をいていなかった対処方法に反応が遅れた。

「ええ〜!!!」
ケイトリンは慌てたように声を上げた。

『ギン!』
ブレンダがそのまま盾でつっこんでくるのを小太刀で受け止めた。
受け止めると同時に反動を利用して後ろに飛ぶ。

「ふっ!」
左手に持った盾に衝撃を感じるとブレンダは再び息を吐き、同時に左肩で押しながら、そのまま右に回転して、左から横薙ぎに剣を振るった。

『チッ』
ブレンダの剣が、ケイトリンをギリギリにかすめ、一回転したブレンダは盾と剣をケイトリンに向けて構えた。

「ケイトは、案外余裕あるな」
ユウキはそんな感想を漏らした。

「え?そうですか?今のはギリギリでかわしてましたよ」
オリビアが聞いた。

「うーん、ギリギリで交わせるのは見えてるからだと思うんだ、ケイトは小太刀だから、ブレンダさんよりリーチが短いだろ?そうすると距離を取りすぎた場合に不利になるんだよ。
だから、ギリギリでかわして懐に入り込んで一撃カウンターを狙っているんじゃないかと思ってさ」
ユウキはそう答えた。

「そうだな、今のが盾でなく剣の攻撃が先だったらかわして一撃入れて離脱という流れだったかもしれんな」
ルーカスがユウキの考えに賛同した。

「ケイト、そんなに強くなったのね」
オリビアは感心していった。

「なぁに、リブちゃんもしっかり実力はついているさ、それに気がついていないだけだよ、ケイトちゃんのように」
ルーカスがニヤリと笑いながら言った。

ケイトリンとブレンダは向かい合って再び次の手の読み合いをしていた。

それと同時にケイトリンは、自分の力量を理解し戸惑っていた。
あまりにも思ったとおりに動ける自分に驚きと感動を感じていたのだ。

姉のあとを追い、剣術を学んだこともあるが、才能がないと実感した、オリビアに魔法の力ではかなわないことも理解し、挫折を味わっていた。

大好きな二人と並び立つことはできない、だから、私は『メイド』なのだ。

後ろにたち、オリビアのことを守る最後の盾である。身を賭して盾になる。
そう心に決めていたのだ。

それがどうしたことか、あんなに遠かった姉の背中、見えなかった剣筋が、動きが、見える、感じる、わかるのだ。

一方の姉も戸惑っていた、自分の剣の技も身のこなしも格段に上がったことを感じている、これまで以上に動けていることに、思った通りの動きができていることに感動を禁じえない。

それ以上に、自分の妹の技術の向上が素晴らしいことに感動していた。
今まで自分の後ろをついてきた妹が、今は向かい合って対峙している。
これならば、自分とオリビアとケイトリンと三人で並び立って敵と戦うことができると感じている。

剣では、自分に敵わなかった、魔法ではオリビアに敵わなかった。しかし、それぞれを組み合わせて、並び立つ力を得た。

安心してケイトリンにオリビアを任せられる。と感じていた。

「ケイト、本当に素晴らしい、誇らしいぞ。
では、次は私の番だ、これから先は戦闘というのがどういうものかを見せる。敵は私のように甘くないのだ」

ブレンダは、そう言うと盾を捨てて、剣を両手に握り正眼に構えた。

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