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超低金利がなぜ不動産バブルを誘発するのか

世界各地で同時多発的に発生した2010年代に発生した不動産バブルは少なくともアメリカにおいては2000年代の不動産バブルを上回る規模であった。なぜこんなことが起こったのだろう。

世界的な経済危機からの回復のために多くの国で超低金利政策が実施されたことがおそらく答えにはなる。超低金利。借りる側には魅力的だが貸す側には地獄だ。金融機関の利益幅を少なくとも不当に圧縮することにはなった。では金融機関は何で利益を出そうとしたのか。その答えが不動産融資だ。低金利だと不動産ローンを借りたい人が増加するし、担保があるから安心。それで不動産価格が高騰すれば多くの人が更にローンを組むので更に銀行は儲かり、不動産価格は高騰する。そういうことだ。だがそんなことはない。それは90年代の日本を見れば明白だ。資産価格の下落でオーバーローン状態になり銀行の不良債権を増大させた。結局不動産価格が過去最大に上昇したとしても過去最大の収入の増加が見られたわけではなかったのだ。つまりいつかこれは限界が来る。あるいは大小関係なくほぼ全ての金融機関が不動産ローンに走れば、競争が過剰になり、本来貸すべきではない人までローンを借りる、ということが発生してしまう可能性はある。実際スルガ銀行はそれで批判され、法的問題にも直面した。しかし、ほぼすべて銀行でこの手の問題が僕は発生していると思う。少なくとも危険な高利回りの有価証券に手を出すかの二択を迫られたのは間違いない。あるいはローンを悪用した詐欺もちょこちょこ報道されていたことも不動産マーケットが歪んでいた証拠だ。つまり不動産は投機対象になったのだ。

ではこの不動産バブルはいかにして崩壊するのだろうか?これは一番大きな問題が何かを考えれば理解できる。すなわち、多くのローンが変動金利型で頭金がゼロか極めて少ない額で組まれたということだ。つまりローンの利率が1%上昇しただけ、あるいは少し失業率が上昇しただけでもローンの返済率低下を招く可能性がある。実際韓国は不動産バブルが崩壊し始めたが、それは70%近いローンが変動金利・頭金なしのローンであったことも関係しているだろう。そして日本のローンも70%が変動金利で頭金も決して多くはない状態で設計されている。また、新しく組まれたローンはかなりムリをした想定をして組まれた可能性もある。例えば夫婦2人がフルタイムで勤務、給与は右肩上がり、ボーナスは減額なしのような想定で組まれたローンは何かの拍子に返済不能になる可能性が高いだろう。

このまま物価が高止まりすれば(おそらくそれはほぼ確定しているのだが)利上げは避けられないが、そうなれば日本の不動産市場は崩壊へ向かうことになるだろう。多くの国の中央銀行がこの問題に直面し利上げをしている以上、いつか不動産市場は手痛い一撃を被ることになるし、それは金融市場の流動性を破壊してしまい、実体経済にも大きな爪痕を残す可能性もあることを頭の片隅には入れておくべきだろう。

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