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「キマロキ編成」という除雪車

ここ100年間、鉄道は雪という災害に挑み続けてきた。

挑むしかなかった。大量輸送手段は道路が整備されるまで鉄道だけだったし、車よりは雪に強く、馬力(推進力)に余裕を持たせておけば多少の雪をかき分けて進むことが可能だからだ。

日本は、世界有数の豪雪地帯で、かつ、世界有数の距離の鉄道線路を有している。地方ローカル線が減ってだいぶ少なくなったが、それでも、冬季五輪を百回くらいはやれそうな降雪量の年もあり、そんな年は幹線を維持することすらできなくなり、一地方全体の鉄道が沈黙してしまうことがある。

その気になれば持てると思うのだが、世界最大出力の除雪車(除雪の方式は問わず)を持つのは日本ではなくカナダである。大出力のモーターや大型の装置は日本の鉄道施設や周辺環境(人家の近い場所が多数あるなど)に合わないからである。重さ(軸重=車輪左右一対あたりにかかる重量)を線路の限界ギリギリにしながら強力な除雪装置を積んだ除雪車や機関車がいくつも設計されてきた。

わたしの文章に触れる方で昭和38年の記憶がある方はあまりいらっしゃらないとは思うが、この年は「三八豪雪」(さんぱちごうせつ 昭和38年1月豪雪)という日本史上有数の雪害があり、長野~東北の鉄道が軒並み大被害を受けた。この時は、鉄道にはまだ多数の人員がいたし、各地域の消防団にも若い人が多かったので、幹線では運行不能期間を二週間ほどに抑えていた。今なら二週間は長いが、当時の状況では驚異的な成果である。

この頃の鉄道に「キマロキ編成」という用語がある。

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