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【コラム】山から感じる、人びとの思い


8月ころから、智頭町の板井原という地区の山で、

道づくり、間伐作業に入っています。


同じ智頭町内でも、地区によって、谷によって、土質が全然違うと、

話では僕も聞いていたのですが、

これまで2年半ほどは、ずっと真砂(まさ)土の山ばかりでした。

いわゆる「砂」で、サラサラとして、転圧しても固まりにくいです。

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さらさらの砂

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真砂は雨が降ると流れやすく、道が崩れやすい。
公園の砂山なイメージがいいかもしれません。


しかし、板井原は、粘度のある土に、適度に礫(小さな石)が混じり、

通ったそばから、硬く締まっていきます。

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適度に石が混ざると、硬く締まったいい道になります。


ひとえに「道づくり」と言えど、

かかる手間ひまは、現場によって全然違います。


林業の生産性を上げる、と簡単には言えど、

山の地形、土質、降水量、それによる樹の成長など、

対応すべきことが多様で、自然条件をよく観て、合わせねば、

どこかに無理がきてしまうなぁと思う今日この頃です。


もちろん、最適化した仕事は、日々の中で模索しておりますが。


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さて、本題ですが。

いまの現場は、10年前?20年前くらいかな?

そのあたりに、別の業者が道をつくり、間伐作業をした現場です。

既設の道も、間伐した跡(昔の切り株)も、山全体に残っています。


ただ、既設の道は、水の流れを把握しきれておらず、

崩壊箇所がいくつも見られます。

あるいは、道の傾斜が急で、上がったり下がったりしていて、

なかなか使いにくいものばかりです。

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黄色が道があった路肩の線。赤色が、崩れて後退したいまの路肩。
上の写真は1m弱、下の写真は1m以上、盛土が流れています。


それから、既設の道を歩いていると、

まとまって伐られた切り株も見られて、

「伐りやすいように伐ったんだなぁ」と思ったりもします。

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赤丸が昔の切り株。


ある箇所をまとまって伐るのは、

木を倒す隙間が空いていくので、伐りやすく効率がよいのですが、

光のバランスや、風の通りなどを考えると、

あまり、山のためには良くないのでは、というのが個人的な考えです。


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林業は、普段、人とは出会わない山の中での仕事。

人よりシカのほうが、よく出会います。


山に関心のある山主さんでしたら、

様子を見に、山へ上がって来られることもありますが、

仕事の成果、完成品を、一般の人々には見られることがありません。


それでも、こうやって、10年後か、30年後かに、

自分の次の世代の林業家たちが、山に入り、

その山を見て、そこに関わった人たちの思いに、

心を馳せ、そこから何かを感じ取り、そして山に手を加えていきます。


先は、よくない例を上げましたが、

逆に言えば、丁寧に枝打ちをされている山や、

木を傷つけないよう、慎重に間伐された山を見ると、

その苦労が、心と身体に染み込んできて、引き締まる思いになります。



僕の子が、いまの山を見たときに、なんと思うでしょうか。

「いい仕事してるなぁ」と思ってもらえるでしょうか。

「山を大切にしてないなぁ」と思われてしまうでしょうか。

自分の仕事の跡が、また後に山を見た人びとに、

なにか、ポジティブなものを、感じ取ってもらえるような、

そんな山にしたいなぁと、思います。

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前の現場、新見の山。間伐した後。


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つばさ

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