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インドネシアのリサイクル事情 -ごみ銀行(Bank Sampah)-

インドネシアでは分別の概念がないという話を前回しましたが
今回はインドネシアでのリサイクル制度の話。


インドネシアではごみ銀行(Bank Sampah)と呼ばれる
リサイクルを担う制度がある。

日本では分別し捨てれば、それは自動的にリサイクルに回るのが普通だが
インドネシアでは分別し、ごみ銀行に持っていけば
その種類や重量に応じた金額で買い取ってくれる、という制度。

銀行の預金通帳の様な特別な通帳が存在し、
ごみを持っていくとこの通帳に記載してもらえて
好きなタイミングで現金化出来る。

通帳はこんな感じ。ごみの種類と重量に応じた金額が記載されていく。



このようなごみ銀行が日本でいう町内会で1つ存在し、
市民はそこにごみを持っていく。
この町内会で一つあるごみ銀行は市民の有志で運営されており、
運営費用は直接的にはどこからも支払われない。
そして特別な場所が提供される訳ではなく、
町内の一番やる気のある人の家がその施設となることが多い。
そしてこれは義務ではなく、参加したい人がするというシステム。
誰が参加しても、途中でやめてもいい。

町内会にあるごみ銀行の様子。ちなみに奥は彼らの住居。ごみに囲まれて生活をすることになってしまう。



それらのごみ銀行はごみがまとまったら
市が運営するセンター機能を持つごみ銀行へ連絡し、
回収をしてもらう。
その後市はリサイクル業者へまた売却をする。
実はここではそれぞれで売却益が出る様になっているので
それぞれはごみが回収出来れば出来るほど儲かる仕組み。

市が運営するセンター機能を持つごみ銀行。毎日ここに分別されたごみが集められる。



ただやはり金額は安い。
市民が持って行って買い取ってもらえる金額は
ペットボトル1㎏で日本円で20円くらい、
それを売って町内会のごみ銀行が得られる利益は10円くらい。
日本と物価そのものが異なるが、それでも安い。1本のペットボトルの水も変えない。
ただ、捨てればただのごみだけど、
集めて分別すれば少ないかもしれないがお金になる。


分別・リサイクルを促す為のモチベーションをどこに置くか。
日本では現在では倫理観しかない気がする。
家庭では分別しないと回収されないという罰則。
既にその行為が当然で、当たり前になった世界では
その発想は不要なのかもしれない。

その発想が全くない途上国において、
そのモチベーションをどこに置くのか、結構大きな問題だと思う。
当然だからやろうって言っても、環境問題解決の為にやろうって言っても
その場はやるかもしれないが、おそらく続かない。
そこにお金を用いること、個人的には素晴らしいと思う。
しっかりとそれをシステム化して回るように出来れば
ちゃんと根付く可能性が高い。
ここマカッサルでも年間1,000トン回収し、2,000万円で売却している。

ここ3年間で多少の前後はあれど上記くらいの数字はしっかり出している。
発生しているごみの量を考えればおそらく大した数字ではないのだけれど
(そのような正確なデータはないみたい)
月~土曜日の毎日約2-3トン回収してるって考えると結構すごい。


ただ、二つの問題もある。
一つは町内会のごみ銀行数が増えないこと。
これ、全ての町内会にあるわけではないの。
その町内にそれを運営するやる気のある人がいて、
町内がしっかりそれに協力して初めて成り立つもの。
だから年間で新しく始めるところもあれば、動かなくなるところもある。
始める理由も動かなくなる理由も色々あると思うんだけど、
それはまだ良く分かってない。
(この辺の普及活動は市というよりはNPOが動いて普及活動をしている。)


もう一つはイメージの悪さの問題。
ごみ銀行のシステムは確かにすごくいいシステムなんだけど、
モチベーションをお金としてしまったがために
お金に余裕がある人の多くはこの制度を利用していないそう。
ごみを分別してわざわざそれを持っていき、お金に換えるという作業がめんどくさいのと、
ごみを集めるという行為がウエストピッカーを彷彿とさせて
イメージが悪いんだそう。

このごみ拾いをする人=貧乏な人とか、
環境のことを考える人があまりいいとされないとか、
そういうイメージがあることがすごく問題だと思う。


エコバックとかマイボトル持つのとかかっこいいじゃん、とか
ごみ拾いしている人クールじゃん、とか
少なくともそういう行為をしている人を笑わないような世の中にならないと
この国の環境問題はいつまでたっても解決しない気がする。
特に20-30代くらいの若い世代。
なんとなく感覚的に若い世代の方が環境への意識が高い人の割合が多い気がする。
そのくらいの人達の環境への取り組みのイメージを変えていければ
将来少しずつこの街もきれいになっていくんじゃないかな。


そんなこともここで取り組みたいことの一つ。
どうすればそれが出来るのか、全くイメージ湧かないけど。

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