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映画「ヘルタースケルター」の感想文

がっつりR18ではありませんが、多少そのような描写が含まれる映画ですのでお気をつけください。

成り上がりものはよく目にすることがありますが、この映画は逆で「成り下がり」と言った方が正しいかもしれません。
主人公は女性でモデルをしていますが、違法な整形手術をしており、それを定期的にしないと体にあざ(?)のようなものが出来ていきます。
体の1割にも満たないような箇所しか原型を留めておらず、9割以上は違法な移植や調節によって成り立っています。
主人公は、僕から見ればちやほやされなくなったら、自分は終わるんだという強い妄想から強迫観念にかられて整形手術を受けているように見えました。
いわゆる「心から自分を愛してくれる人なんていない」状態ですね。なんとも悲しい話です。
家族は機能しておらず、主人公が「ママ」と呼ぶ女性を、主人公の妹は「社長さん」と呼びます。また、主人公の妹は整形などしておらず、いわゆる芋でした。逆に芋メイクが出来るところに痺れましたね。

整形をしていない女性が現れるあたりで、主人公はメディア出演を根こそぎ奪われ、多忙だった友達0人の主人公はマネージャーや専属メイクさんに甘えますが、家庭が機能していないどころか学校に通っていたかの描写さえない主人公ですから、当然甘え方がちぐはぐです。
甘えたり、突き放したり、指図したり、難しいですね。

体のあざも出現度が高くなり、とうとう幻覚が見えるようになります。
最初の幻覚は黒い蝶でした。少し青みがかった黒い蝶、キレイですが、鏡には写っているのに自分で見ようとしても消える。動揺した主人公はもう一度同じことを繰り返しますが、やはり鏡にはうつるのに、現実には見えません。ここらへんは、幻聴幻視の体験がある(現在進行形)僕自身には少し違和感はありました。一瞬見えて、「いやいやおかしいだろ、」と思って振り返ったら「まだおるやんけ」となることはほぼありませんからね。大体2度目には見えず、そこでようやく「あぁ、また幻視か」と気付きますね。

メディアのあちこちで活躍していた主人公はその席を奪われ、体もおかしくなり、とても分かりやすい精神崩壊を起こします。

怪しい登場人物もいますが、あんま仕事してません。めっちゃボソボソ言うから音量調節が必要でした。なかなか手こずりましたね。

結局表舞台から姿を消し、世間では「行方不明」と噂される主人公。
ラストでは別の仕事についていますが、ここで終わってしまいます。

精神崩壊を起こすところまでは良かったのですが、最終的に記者会見中に自傷をするほどに崩壊していた精神を、いったい誰が持ち直したのか、というか持ち直してくれる人っぽいのいるならもうちょい早く仕事してほしかったですね。女王様が転落していく物語で、主人公は最後も「女王様スマイル」をぶちかますのは、これは精神医学的に治療が成功したのかなんなのか。

LGBTQものが好きな人、微R18が大丈夫な人は面白いかもしれません。
映像技術とかそういったものにも興味がある僕はその点ではあまり楽しめませんでした。

精神を持ち直したのは、主人公のプライドなのか、支え続けた「とある登場人物」なのか、真相は闇の中です。愛着形成が出来たのであれば女王様で居続ける必要、ありませんからね。

一気見出来る作品でした。
ありがとうございました。

義樹

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