無限地獄
目が覚める。
壊れそうに肩が痛い、腰が痛い、首が痛い、喉が痛い。
痛みに耐え、何とか立ち上がる。
頭はフラフラ。
ふらつく足で階段をおり、リビングのソファに座る。
今日も地獄の始まりである。
急須に入った茶葉にお湯を注ぎ、出涸らしの緑茶を飲む。まず、朝はこれを飲まなければ事が始まらない。
昨日の夜、タイマーを仕掛けておいたので、ご飯は炊けている。
茶碗によそい、こちらも昨日の夜に出しておいた納豆のパックから納豆を取り出し、ご飯にかける。
納豆のタレの味しかしない。
お椀にインスタント味噌汁の素を入れ、お湯を注いで飲む。
やはり味噌の味しかしない。
冷蔵庫からスーパーの惣菜パックに入ったコロッケを出し、ソースをたっぷりかけて食べる。
ソースの味しかしない。
調味料味の泥を一通り胃袋に収め、空腹感が収まった所で、シャワーを浴びる。
面倒だが、社会人として最低限、身なりは整えなければいけない。
風呂から出て、寝間着から着替える。
洒落っ気など微塵もないパーカーにジーンズ。
重い腰を上げ、弁当箱に余ったご飯と冷凍食品を詰め、保冷ポットによく冷えた麦茶を入れる。
そろそろ出なければいけない。
今日で何日経っただろう。
いつになったら抜け出せるのだろう。
この無限地獄はもがけばもがくほど引きずり込まれる。
どうしてこんな辛い思いをしながら生きているのだろうか。
高給取りかもしれないが、パワハラ、セクハラ、モラハラで心も体もボロボロ。
何をしても楽しくもない。
休日も休まることは無い。
「仕事が辛い」と言うと、枕詞のように「辞めればいい」と帰ってくるが、現実はそんな簡単ではない。
このコロナ禍の中、片田舎で次の仕事も無く、日々の生活は保証等で何とかなったとしても、保険や公共料金の支払い、車の維持費、ローンの返済等、生きているだけでもお金は取られる。
家を引き払っても行くところはない。
1キロ四方に何も無い片田舎で、車は手放せない。
辞めても当面の生活が出来るだけの貯蓄をしながら、コロナが落ち着くのを待ち……
条件が整うのが先か、心が体が壊れて働けなくなるのが先か。
このどちらかしかこの地獄から抜け出す手段はない。
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