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歌舞伎座「吉例顔見世大歌舞伎」(2021年11月)で十世坂東三津五郎を偲ぶ

2021年11月は「芸術の秋」ということで、歌舞伎座は第1部から第3部のすべての舞台を観ました。(歌舞伎座のほか、TBS赤坂ACTシアターで行われていた「赤坂大歌舞伎」も観ました。)
個人的には、「吉例顔見世大歌舞伎」第2部だけは絶対に観に行きたかったし、内容も、役者さんの顔ぶれも一番良かったと思っています。

寿曽我対面

十世坂東三津五郎七回忌追悼狂言として上演された『寿曽我対面 ことぶきそがのたいめん』。曽我五郎時致を、息子の坂東巳之助が勤めます。

個人的に、坂東巳之助は注目している若手役者さんの一人です。
今回の曽我五郎時致は、むきみの隈取も似合っていました。化粧をした顔が、亡くなった父親(=十世坂東三津五郎)に似てきました。坂東巳之助は踊りが上手いので、姿勢や形もきれいでした。セリフもはっきりしていて、良かったと思います。

まわりを固めるのが、菊五郎劇団を中心とした役者さんたち。
工藤左衛門祐経の尾上菊五郎は、座頭役らしい大きさにどことなく色気がありました。
中村時蔵の曽我十郎祐成は、やわらかさと色気がありました。
今回、坂東巳之助が初役の曽我五郎時致を教わったという尾上松緑は、小林朝比奈を勤めます。時々、化粧とか、セリフとか、見た感じとか、「あれっ?」という小さな違和感のようなものを感じることがあるのですが、今回は、どことなくひょうきんな感じや、やわらかさもあって、良かったと思います。
大磯の虎の中村雀右衛門は立女形としてとしての大きさ、化粧坂少将の中村梅枝は若女形としての華やかさがありました。
いつもよりも出演人数が少なかったのですが、故人をしのぶ、良い舞台でした。


連獅子

今月、注目していた演目のもう一つが『連獅子』。狂言師右近後に親獅子の精を勤めるのが片岡仁左衛門。孫の片岡千之助が狂言師左近後に仔獅子の精を勤めます。

最初にこの演目が発表された時、
「片岡仁左衛門が『連獅子』?77歳で大丈夫??」
と思いました。でも、インタビューを読むと、
「この歳になったらやりたいと思っていたのが『連獅子』だった」
と語っています。
内心、「この組み合わせで見られるのは、最後かも?」などと思いながら舞台を観ました。

特に、後半の親獅子の精になってからの気振りのところは、ハラハラしました。でも、仔獅子の精の片岡千之助が、元気いっぱいで踊っているのは良いけれど、毛振りでは勢いのあまり(?)下半身がぐらついたりしているのに対して、親獅子の精の片岡仁左衛門はゆったりとして貫禄があり、毛振りも形がきれいでした。さすがでした。


十世坂東三津五郎を偲ぶ

「十世坂東三津五郎七回忌」ということで、今月の歌舞伎座の1階ロビーには遺影と花が飾られていました。「59歳で亡くなって、もう7回忌になるのか……。」と年月が経つことの早さを感じるとともに、早すぎる死が残念に思います。

十世坂東三津五郎の舞台で好きだった演目はいろいろありますが、個人的に印象に残っているのは、常磐津で踊った『娘道成寺』。そして、おかめ・お大尽・ひょっとこの三つの面をつけ替えて踊る場面が素晴らしかった『奴道成寺』でしょうか?

今更ながら、新しい歌舞伎座で、十世坂東三津五郎と十八世中村勘三郎の舞台が観たかったと思っています。


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