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ワイスケドリッパーの欠点について

ワイスケドリッパーの欠点と思われうることは何か?について語ろうと思う。
それは、サーバーに載せたときの安定度についてのことだ。
円錐型ドリッパーの元祖としてのコーノの「名門フィルター」と比較してみる。

1973 年(昭和 48 年)コーノ(珈琲サイフォン株式会社)は、ペーパーを使用してネルドリップの味わいを再現する抽出器具として、「名門フィルター」と名付けた円錐型ドリッパーを開発し、発売している。(写真右)

既存の樹脂製、陶器製のほぼすべてのドリッパーには、サーバーの上に置かれたときの安定性を与える(ずれて倒れてしまわない)ために口径の内側に出っ張った小さな口径を持っている。これがあることで、左右へのずれを抑制し、ロック機能を果たしている。

おしりが違う
ドリッパーの口径の外側と内側とのあいだでサーバーの口径がロックされることで、
ずれによる落下を防いでいる

ワイスケドリッパーには、それがないので(悪くいえば)ただ載せるだけとなってしまう。
それは、すぐにずれて落ちることを意味しないが、落ちてしまうかもしれないと不安にさせてしまう可能性があることが欠点のひとつだと自覚している。

ただ載っている、とも言えるが、サーバーの口径を気にすることなく、載せることができる

ただちょっとずれしまったとしても、落下することはまずありえないので安心してほしい。
とはいえ、欠点は欠点である。

上にずれいてるがずれ落ちることはない(が、落ちるかもと不安になりうる)

あらかじめ自らが語ることを大切にしたいし、その欠点をしのぐ魅力もまたあると思うので、ぜひお手元に置いて使ってみてほしい。




と書いていたら、銅メッキのワイスケドリッパーをご購入いただいた菅井悟郎先生より、以下のような意見をいただいたのでここに共有したい。

(ここに書かれている欠点はそのとおりだが)逆に言えば、抽出時に下に置くサーバーやビーカーやカップのサイズを気にしなくてもい良いというのは利点に感じている。コーノだと小さめのカップには、下部の出っ張りがサイズ的に入らないから、わたしは快適に使えている。

太字は引用者による

さらに彼はこうつづける。

手が当たるとズレるかどうかというよりも、珈琲抽出を行うという茶道的なしずかな時間において、激しくぶつかるような所作があるとすれば、なぜ、自分がそうであるかについて考えるべきで、固定されていても、乗っているだけでも、うつくしい所作に、不安定など存在しないだろう

太字は引用者による

これは菅井悟郎先生の意識の高さがなせる技と言い捨てることができるようなことでもなく、たしかに欠点ではあるものの、ドリッパーとサーバーが半ば固定されて、失敗を少なくするのではなく、淹れるひとがドリッパーとサーバーを組み合わせる自由を獲得する、と捉えることができるということの発見でもあった。

あらためて考えてみると、そもそもコーノの「名門フィルター」と名付けられた円錐型ドリッパーこそ、かつての台形一つ穴のメリタや台形三つ穴のカリタとは違って、円錐型の大きな一つ穴という形状と淹れるひとのお湯の注ぎ方によって、ぶれることをその特徴としていたように思う。

つまり、ぶれることは初心者向けではなく、つくりたい味を明確に持つプロ向けとされていたし、ぶれることは失敗しやすくなるとともに、つくりたい味を表現できる自由を獲得することを意味していた。

これを敷衍すると、一般的に言われる「初心者向けドリッパー」とは、コーヒー初心者から、いかにぶれてしまう自由を奪って、失敗しにくくさせることができるか?を突き詰めてつくられている、ということができるのではないか。

なんだかワイスケドリッパーの欠点について伝えようとしていたら、それは案外欠点でもなく、またべつの可能性なのではないか、という着想がやってきて、なんだか不思議な気分でもある。
まぁ、そもそも使うひとの感性や姿勢を抜きにして、よいわるいを語ることの限界と言うこともできそうだ。

なにはともあれ、ここまで読んできたみなさんがどう捉えるかはまさにみなさんの自由なので(笑)それぞれの判断のなかで気に入った方はぜひ使ってみてほしいです!!


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