インティマシー2024〜カタストロフィとインティマシー〜
今年もまた「燕三条 工場の祭典」にあわせて哲学者の鞍田崇さんが来てくださいます。2024年は能登半島地震からはじまり、まずはそこから語りたいとのこと。
震災と復興を考えると、レベッカ・ソルニットの「災害ユートピア」を思い出しますが、災害のあとにインティマシーが立ち上がる気配について思いを馳せています。逆に復興期においてインティマシーが継続することのむずかしさについてもまた考えます。
対話をつづけてきて思うことは、鞍田さんは、災害や不遇をポジティブに捉え返す哲学を実践しているということです。
あらためて整理します。
さいきん赤木明登さんとの対話を重ねる(そして赤木さんと鞍田さんの対話を拝聴する)なかで民藝を捉える2つの側面が見えてきました。
鞍田さんは親密性を大切にしながら、相互依存的な関係性をベースにした「ケアの倫理」の実践者であり、赤木さんは(分業制のなかで自身が「輪島」における一部になる、という側面はあるにせよ)理性を突き詰めた先に(神と呼ばれうる)外部を見いだし、そことやりとりすることで、今いる自分に影響を与えていくような存在のあり方に普遍性を見るこ「正義の倫理」の実践者と言える気がします。
つまり、この二つの立ち位置は対立することなく、ともに成り立ち、民藝における別の側面を照らし出している、という理解に至りました。
「ケアの倫理」そのものは、アメリカの倫理学者・発達心理学者のキャロル・ギリガンの著書『もうひとつの声で──心理学の理論とケアの倫理』(1982)に由来する言葉ですが、近年小川公代さんが『ケアの倫理とエンパワメント』をはじめとする、文学からケアを抽出する(あたらしい解釈をあたえる)仕事をされています。鞍田さんが民藝に向かい合う姿勢とすこし重なっているように思いますし、民藝を現代的に解釈する鞍田崇という哲学者としての立ち位置についてもあらためて聞いてみたいと思っています。
日時:2024年10月4日(金)19:00-21:00
ゲスト:鞍田崇(哲学者)
定員:20名
料金:大人/2,200円・学生/1,100円(いずれもコーヒー付)
会場:ツバメコーヒー(新潟県燕市吉田2760−1)
申込:tsuabmecoffee@gmail.comまで件名「インティマシー2024」としてお名前、連絡先を添えて
鞍田崇(くらた・たかし)
哲学者。1970年兵庫県生まれ。京都大学大学院人間・環境学研究科修了。現在、明治大学理工学部准教授。近年は、ローカルスタンダードとインティマシーという視点から、現代社会の思想状況を問う。著作に『民藝のインティマシー「いとおしさ」をデザインする』(明治大学出版会、2015年)、『からむしを績む』(共著、渡し舟、2021年)など。民藝「案内人」としてNHK–Eテレ「趣味どきっ!私の好きな民藝」に出演(2018年放送)。