クリスマス三連詩とその後の2人

『イヴの朝、初恋の記録』

*****2009/12/23*****
「夜が好きなんです、特にこの時期の夜が」

夜空と地上が逆転した世界
オリオンもサンタクロースも
木々の星々に目を細める

「そうですね」と「私もです」

煌めきの前には どちらの答えも野暮だから
12月だけの銀河を映す
貴方の瞳を見つめて頷くの

私たちは今 星の間を羽ばたく比翼の鳥

*****2019/12/4*****
卒業アルバムを眺めても

十年前のクリスマス
何をあげたかも
何をもらったかも
もう覚えていないんだ

きっと何時間も迷って
ようやく選んだはずだった

きっと冬の熱に浮かれて
一生の宝物にしたかったはずだった

その答えはもう
誰の心にも書いてない

それでも

それでも

本当に、初恋だったんだよ


*****2020/12/24*****
口説き文句は三流で
昔の君にも負けてるし

今も昔も的外れのプレゼント
嬉しいことが悔しい

もう運命とでも名付けるのもありかな

光の玩具箱を開けて
大嫌いになっちゃったクリスマスソングを
君だけのために歌ってあげる

今度こそ新しい春に
笑い合えますようにって

Dear 神様じゃなくて目の前の君へ

*****2021/12/24*****
「何を読んでるんですか?」
「んー?昔の日記」
「日記……マメなんですね」
「マメじゃないよ。飛び飛びだもん」

 朝、部屋の掃除をしていたら昔の日記を見つけてつい読みふけってしまった。起きてきた君に声をかけられる。

「ちょっと見せてくださいよ」
「絶対イヤ。なんでそんなにデリカシーないの?」

 私は笑いながら返す。彼の慇懃無礼でちょっとずれたところにはもう慣れた。
 そういうちょっとしたことの積み重ねで喧嘩してサヨナラしてしまったあの頃は若かったなあと30歳になった今、しみじみ思う。

「君はリアリストですから、日記もすごく写実的な描写なんでしょうね」

 私に対しても敬語を使うのは高校生の頃から変わらない。でも、私は君に変えられたと思う。恋だとか愛だとかよく分からなかった私に制御できない感情を教えたのはまぎれもなく君だ。

 去年の12月の初め、君と偶然再会して一緒にお酒を飲んだ。馬鹿みたいに強いお酒を飲んで、今でも好きだと泣き叫んだ。
 普通の人間なら絶対ドン引きするはずなのに、どういうわけかよりを戻すことになったので、人生分からないものだと思う。

 君を振り回しているような気もするけど、私だって君に振り回されている。少なくとも、私が日記にポエムを書くようになったのは、一言多くていつも女の子を怒らせてしまうくせにロマンチストなどこかの誰かさんの影響だ。

「そうだ、言い忘れていました。今日の夜はレストランを予約しておいたので、お昼は食べ過ぎないでくださいね?あと、お酒も飲みすぎないでくれると助かります。酔いつぶれていない状態でしたいお話もあるんですよ、たまには」

 今年は忘れられないクリスマスイブになりそうだ。


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