ツバメ物語⑩/珈琲係・石井
ところで、お店づくりの工事は遅々として進んでいなかった。暇なのは夕子だけという日もあり、そうなると、建築士がいない一人ぼっちの現場で出来る事は掃除しかなかった。
オープンは当初の目標時よりすでに3か月遅れていた。私は、掃除するか、珈琲を焙煎するか、色々なお店に珈琲を飲みに行くか、という生活を送っていた。
内心はこのままオープンするのがまだまだ先になり、挙句の果てにはやっぱりオープンしない、という選択肢もまだ残っているのではないかという一抹の不安もあった。
そんなある日「