トレイルカメラは見た!第1話 「生きものでにぎわう小さな水たまり」
野生動物は人の気配にとっても敏感で、彼らを撮影するためには、さまざまな工夫が必要です。
近年では「トレイルカメラ」を使って野生動物を撮影するようになりました。トレイル(Trail)とは、痕跡、獣の跡、通り道ーーのような意味を持つ言葉です。その名の通り、動物の痕跡があるような場所にこのカメラを設置すれば、その痕跡の主を、センサーで感知して自動撮影することができます。野外に置きっ放しで24時間、雨の日でも記録・撮影することが可能なカメラです。
赤外線センサーを使用して撮影するので、夜は強い光を必要とせず、また無人撮影ということもあり生き物へかける負担が少ないのも利点です。動物たちはリラックスした状態でカメラの前に姿を現すので、自然体なしぐさを記録することができるのです。
何気なく通り過ぎていた場所にもカメラを仕掛けてみると、「えっ!こんなに生き物が来ているのか!」と驚くこともたくさんあります。
「トレイルカメラは見た!」のコーナーでは、そんな面白さを紹介していきます。
巨木にできた小さな水たまり
山の尾根沿いに、幹が二股に分かれた大きなコナラの木がありました。
木の根元にはくぼみがあり、小さな水たまりができています。大きさは手のひらくらいですが、奥のほうは窪んでいて、枝を差し込んでみると10cmほどの深さがありました。前日に雨はふっていなかったので、水が溜まりやすい場所のようです。
水はすべての生きものが必要とするもの。川から離れたこの場所なら、何か生き物が来ているのではないかと思いトレイルカメラを仕掛けることにしました。
鳥たちの憩いの場だった!
仕掛けて1週間以上、トレイルカメラの映像を確認してみると・・・。
いろんな鳥たちが訪れて水を飲んだり、水浴びをしたり。憩いの場になっていることがわかりました。
▲水浴びをするヒガラ
動画の15秒ごろ、ヒガラがすっぽりとおさまり水浴びをしています。そこへやってきたのはヤマガラ。ヒガラはすぐさま飛び去り場所を譲ります。
▲様子を見に来たヤマガラと飛び去るヒガラ
小さいスペースなので、順番待ちのようです。しかしヤマガラは水場は利用せず、どこかへ飛び去ってしまいました。
37秒から水浴びをしているのは、クロツグミのメス。夏のあいだ、南の国から日本にやってくる鳥です。
▲水浴びをするクロツグミのメス
さきほどのヒガラよりも体が大きいので、なんだか窮屈そう。水も飛び散り少ししかありません。それでも身を押し付けて、一生懸命です。クロツグミは2分以上もかけて水浴びをしていました。
この水たまりは尾根の稜線にあり、木も崖側に生えているので見晴らしがよくすぐ危険を察知できるので、鳥たちにとって安心して羽を休める場所のようです。
鳥たちの大きさ比較
トレイルカメラは同じ場所に据え置きでセットしているので、別の生きものが写ると、大きさの比較ができるのも面白さのひとつです。
▲一番上から順にヒガラ、カケス、クロツグミのメス
こうして画像を並べてみると、カケスはなかなか大きく立派な鳥ということがわかります。
昼とは一転、水たまりの夜の顔
昼間の鳥たちの臭いを嗅ぎつけてか、夜には水たまりの周りをうろつくテンが映っていました。別の日には、ネズミもうろちょろ。
▲水たまりの周りをうろつくネズミ
テンは小動物を襲って食べることがあります。水の近くにはこうした獲物となる生き物がよく通ることを知っていて、見回りに来ているのでしょう。
この他にも、鳥ではイカル、クロツグミ(オス)、アトリ、シジュウカラ、動物ではサル、タヌキ、リスなどの生きものが写っていました。
「トレイルカメラ」という新たな選択肢
野生動物を撮影するにはいくつかの方法があります。
自分の姿をオープンにしてつきあうことで、生き物たちに安全な存在であることを学んでもらう方法、もしくは、オープンにしていても逃げない、平気な個体を見つける方法、ブラインドと呼ばれるテントや小屋で、自分の姿・気配を消してしまう方法、など・・・。
どれも、長い時間がかかるうえ、それが通用しない生き物もいます。
そこに新たに登場した「トレイルカメラ」という選択肢。画質や安定性の難はあるのですが、まだまだ謎だらけの生きものたちの暮らしぶりを知るうえで、今では欠かすことのできない存在です。(文・しげゆか/撮影・つばめプロ)
※トレイルカメラを設置するときは、土地所有者の許可を必ずとりましょう。野生動物だけでなく、人への配慮も必要です。
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