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6月は「毎日チョウゲンボウ」6/30更新分

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※「毎日チョウゲンボウ」は1990年に平凡社より刊行された「チョウゲンボウ(Kestrel)優しき猛禽」をWeb用に再編集したものです。

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あとがき(1990年発行当時)

私が写真家を志したのは18歳の春でした。そして、いつの間にか1羽の鳥に自分の青春を賭けてみたいと思うようになりました。

その中で、運良くチョウゲンボウに出会うことができたのですが、まさか10年も彼らにのめりこんでしまうとは夢にも思いませんでした。

私にとってチョウゲンボウの魅力は、ひとえにその細やかな愛情表現と優しい温和な性格にあります。ひとたび狩りに飛び立てば比類なき狩人ぶりを発揮する彼らも、たがいの伴侶や子どもたちに示す愛情は、私たち人間のそれと少しも変わりはありませんでした。

そのことは知って以来、私は私の作品の奥底に「愛」というものを位置させてきましたが、撮影を重ねてもそれは決して揺らぐことなく、むしろいっそう鮮明に、私の作品の中に浮かび上がってきたのです。

それは、私のこの作品創りのために費やした時期が、人生のうちで最も多感な10代後半から20代であったことと決して無関係ではないと思います。私自身のこの10年間にもいくつかの波はありました。

時には高くうねり、乱れ狂ったように襲いかかる波を、危ないところで押し戻して、夢や希望や勇気にかえてくれたのは、やはり彼らの示してくれた愛情であり、生き方だったのです。ゆえに私もそれに応えようと、彼らの正面から正々堂々とぶつかっていきました。

その一方で、この写真集は私の創作した若い“2羽”の愛の叙情詩でもあります。私は彼らの姿を借りて、実は多くの生命あるものの中に存在すると信じている「愛」というものを、そっと映し出してみたかったのかもしれません。

いずれにしても、10年間もの長い間、つき合いを重ねてくれたチョウゲンボウたちには感謝の気持ちでいっぱいです。いつまでもいつまでも、彼らが大空高く舞い続けてくれることを私は願ってやみません。

この本を作るにあたり、本当に多くの方々にお世話になってきました。タイトルの「優しき猛禽」は私のデビュー作であるアニマ1982年10月号の「優しき猛禽・チョウゲンボウの求愛行動を捉えた」より用いました。

私は、アニマ編集部で刷り上がったばかりのこの作品を手渡された時の感動を、今でも忘れることができません。

私の未熟な作品に素敵なタイトルをつけて下さり、今回のこの本を心をこめて作って下さったアニマ編集長の土居秀夫氏と、デビュー以来、お世話になり続けた前編集長の沢近十九一氏、デザインの遠藤勁氏に深甚な謝意を表する次第です。

また、長年私を励まし続けて下さった嶋田忠氏、ならびに青柳茂氏、米川洋氏、友人の守田保之君、河合大輔君に心からお礼申し上げます。そして最後になりましたが、私が何とかここまでがんばってこられたのも、山梨や佐久や埼玉の仲間たち、両親と弟のおかげであったことを付記させていただきます。皆様、本当にありがとうございました。

著者紹介:平野 伸明(ひらの・のぶあき)

映像作家。1959年東京生まれ。幼い頃から自然に親しみ、やがて動物カメラマンを志す。23才で動物雑誌「アニマ」で写真家としてデビュー。その後、アフリカやロシア、東南アジアなど世界各地を巡る。38才の頃、動画の撮影を始め、自然映像制作プロダクション「つばめプロ」を主宰。テレビの自然番組や官公庁の自然関係の展示映像などを手がける。

主な著書に「小鳥のくる水場」「優しき猛禽 チョウゲンボウ」(平凡社)、「野鳥記」「手おけのふくろう」「スズメのくらし」(福音館書店)、「身近な鳥の図鑑」(ポプラ社)他。映像ではNHK「ダーウィンが来た!」「ワイルドライフ」「さわやか自然百景」や、環境省森吉山野生鳥獣センター、群馬県ぐんま昆虫の森、秋田県大潟村博物館など各館展示映像、他多数。
→これまでつばめプロが携わった作品についてはこちらをどうぞ。

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