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森の動物 第2回 モリアオガエル(アオガエル科)

「森の動物」は、自然写真家・中川雄三が、1989年頃~2005年頃まで林野庁管轄・林野弘済会発行の機関紙「森」に連載していた記事を、Web用に再編集・加筆したコーナーです。

モリアオガエル/アオガエル科(1997年夏号掲載)

1997,夏号モリアオガエル_1

モリアオガエルは、その名のとおり森に暮らすアオガエルの仲間です。

アオガエルは一般的なアマガエルの仲間とは異なり、体も手足の先の吸盤も一回り大きく、日本に住む代表的なものにはモリアオガエルをはじめカジカガエルやシュレーゲルアオガエルが知られています。

モリアオガエルは本州と佐渡島に分布しており、熱帯アジアを主な分布域としているアオガエルの仲間としては、日本の下北半島のものが分布の北限となっています。

モリアオガエルは特殊な生態を持つカエルで、その一生を樹上で暮らします。手足の指先には樹上生活に適応した特大の吸盤があり、オタマジャクシや繁殖期の一時期を除いては地上に降りることはありません。泡巣という特殊な方法で産卵まで樹上で行います。

梅雨の頃、森に隣接する池や沼、水田などで、水辺に突き出した枝先や畦などで見かける握りこぶし大の白い泡の塊がモリアオガエルの卵塊です。

1997,夏号モリアオガエル_2

▲産卵のため集まるモリアオガエルたち

このまるでメレンゲのような泡の巣は、樹上でも卵が乾燥しないようにと工夫された産室で、産卵直前のメスが作ります。

メスは体に吸収した水分と自らの粘液を後ろ足でかき混ぜながら時間をかけて巣を作り、ようやく産卵を行うのです。

やがて、まるで揺りかごのような泡巣の中で卵がふ化し、元気なオタマジャクシが次々に水辺を目指して落下していくのです。

中川雄三(なかがわ・ゆうぞう)
1956年山口県美祢市生まれ。自然写真家。1980年に日本大学農獣医学部水産学科卒業後、山梨県富士吉田市に移り住み、富士山周辺の身近なあらゆる自然をテーマに写真を撮り続ける。1987年に動物雑誌「アニマ」にてヒメネズミの組写真でアニマ賞を受賞。
人と野生動物との架け橋となるべく、観察会や講演会などで啓蒙活動を続け、自然保護運動にも力を注いでいる。

主な著書は「富士山麓の仲間たち」(ぎょうせい)、カワセミの四季(平凡社)、まちのコウモリ(ポプラ社)、たくさんのふしぎ「水辺の番人 カワウ」(福音館書店)、他。映像ではNHK「ダーウィンが来た!~高速道路に5000羽!?サギ大集結」、NHK「ワイルドライフ~東南アジア タイ 初密着! 巨大ヤモリ ヘビと闘う」など。

NPO法人「富士山クラブ」前理事、「富士山エコネット」理事や、環境省・自然公園指導員、山梨県・環境アドバイザー(現エコティーチャー)、日本野鳥の会・富士山麓支部副支部長、コウモリの会・評議員なども務める。
中川雄三の個人Webサイトはこちら

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