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6月は「毎日チョウゲンボウ」6/21更新分

※「毎日チョウゲンボウ」は1990年に平凡社より刊行された「チョウゲンボウ(Kestrel)優しき猛禽」をWeb用に再編集したものです。

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敗れた右上の巣穴の雌は、しばらくそこで翼をだらんと下げてじっといていたが、やがて、今にも落ちそうな弱々しい羽ばたきで自分の巣穴へ戻った。

以後、2つの巣穴の間には目に見えない確固たるなわばりが存在し、闘いに敗れた先住の雌は、決してそのなわばりを犯そうとはしなかった。

崖半分のなわばりと巣穴をひとつ確保した雌は、巣穴を整えて雄と交尾をし、4月のはじめには卵を産んでしまった。

そのあまりの行動の早さに私はしばしあっけにとられ、雌だけが持つ種の保存に対する執着のようなものをかいま見た気がした。

崖の巣穴で育まれる小さな生命

チョウゲンボウの産卵は3月下旬から4月。

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▲巣穴の奥に生みこまれたチョウゲンボウの卵

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▲カラスは卵や小さい雛を狙う天敵だ。時には力およばず、奪い去られてしまうこともある

やがて、1ヶ月の静かな抱卵期をへて、2つの巣穴からはほとんど同時に雛が誕生し、崖は急ににぎやかになった。

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著者紹介:平野 伸明(ひらの・のぶあき)

映像作家。1959年東京生まれ。幼い頃から自然に親しみ、やがて動物カメラマンを志す。23才で動物雑誌「アニマ」で写真家としてデビュー。その後、アフリカやロシア、東南アジアなど世界各地を巡る。38才の頃、動画の撮影を始め、自然映像制作プロダクション「つばめプロ」を主宰。テレビの自然番組や官公庁の自然関係の展示映像などを手がける。

主な著書に「小鳥のくる水場」「優しき猛禽 チョウゲンボウ」(平凡社)、「野鳥記」「手おけのふくろう」「スズメのくらし」(福音館書店)、「身近な鳥の図鑑」(ポプラ社)他。映像ではNHK「ダーウィンが来た!」「ワイルドライフ」「さわやか自然百景」や、環境省森吉山野生鳥獣センター、群馬県ぐんま昆虫の森、秋田県大潟村博物館など各館展示映像、他多数。
→これまでつばめプロが携わった作品についてはこちらをどうぞ。

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